株主・投資家の皆様

経営方針

トップメッセージ

ご挨拶

“BLUE MISSION 2050”で描いたカーボンニュートラルと水素社会の実現への道筋を作ります

菅野等

当社のミッション

複雑化するエネルギー産業において総合的な技術力で現実解を見出します

2023年6月より、J-POWERの社長に就任した菅野です。2021年2月に公表したJ-POWER “BLUE MISSION 2050” を実行することで、日本と世界のカーボンニュートラル社会の実現に貢献するとともに、エネルギーを誰もがアクセスし易い形で、かつなるべく安価に安定供給を行っていくことが当社の使命だと考えています。

近年、この使命の重要性は再認識されるとともに、エネルギー産業の複雑化によりその難しさが増しています。気候変動対応への要請が一層高まり、人々のCO2フリーのエネルギーを求めるニーズは高まっています。しかし、風力や太陽光のような再生可能エネルギーを大量に導入するには、電力システムや送変電ネットワークも変わっていく必要があり、各国の国情に見合った変化の道筋を歩む必要があります。さらに、再生可能エネルギーはそれぞれの地域の自然エネルギーを利用する電源であり、その地域に応じた開発が必要です。一方、火力エネルギーは、グローバルな地政学リスクによる供給不安や資源価格の変動にさらされていますが、気候変動対応のためCO2フリー電源への転換を進めなければなりません。グローバルな要請と各国の実情、再生可能エネルギーと火力エネルギー、それぞれをバランスさせるシステムや技術は開発途上であり、我々もブレイクスルーに取り組みます。

今、世界、そして日本のエネルギー産業は大きな変革期にあると捉えています。コロナ禍が収束した2023年は、人々の生活が正常化に向かうため、経済活動が拡大しエネルギー需要が増加すると思われます。エネルギーの安定供給と気候変動対応の両立がこれまで以上に求められ、新たな挑戦の始まりの年です。複雑な事業環境により先行きが不透明な中でも、ステークホルダーの声を聞き、地域と共に生き、人を育て、持続可能なエネルギーを供給することで変わらぬ使命を全うします。

代表取締役社長 社長執行役員
菅野等

当社の強み

2020年から2022年にかけて当社は、風力、地熱、太陽光などの再生可能エネルギーや火力電源を国内外で約300万kW開発しました。会社の事業基盤がワンステップ上がったと感じています。これほどの多種多様な電源を短期間で大規模に開発したことはかつてありません。当社は今日まで多様な電源をグローバルに建設、運転し、また日本の各地域を結ぶ送変電設備を建設してきました。時代が求める電源の開発を続けてきた結果、一朝一夕では手に入らない総合的な技術の蓄積があります。

総合的な技術とは、工学的なエンジニアリング技術だけでなく、電気を安定的に販売する技術や発電所を作るにあたり地域社会との向き合い方なども含みます。例えば、再生可能エネルギーは地域の自然エネルギーを利用する電源であり、地域共生が重要です。発電所を作ればその後数十年にわたり地域と共にあるため、我々が作る発電所がそれぞれの地域社会でどう受け止められているのか感受性を高くしておかないと、開発は進められないと思います。

菅野等

このように、電源を開発しその後長期にわたり安定して皆様に電気を届け続ける総合的な技術力が当社の大きな強みであり、当社電源のカーボンニュートラルへの移行を 加速し、今後の当社の成長のカギとなると考えています。

日本政府の決定したエネルギー基本計画では、2030年における電源構成のうち再生可能エネルギーの比率は36~38%、さらにそのうち約10%が水力発電となっていますが、当社を含め、日本全体で水力発電所の老朽化が進んでいる状況です。老朽化した水力発電所を確実に再生させるとともに、新たな開発を加速することが求められています。

当社が2022年に公表したNEXUS佐久間プロジェクトは、当社ビジネスの始まりの場所である佐久間発電所を新しく再生し、アップサイクルするとともに、より付加価値を生み出すことを目指しています。

一方で、再生可能エネルギーの開発は時間がかかります。地域社会としっかりと対話し、地域に合った開発を進めなければなりません。さらに、日本は国土的な限界があり、再生可能エネルギーの開発は適地の不足から段々と難しくなっています。大規模な再生可能エネルギーとして洋上風力の開発が期待されていますが、電気の販売についても固定料金のFITから市場価格に連動したFIPに切り替わります。再生可能エネルギーを開発し、その後も安定して発電、販売して投資回収するためには、事業者の総合力が問われます。

J-POWER “BLUE MISSION 2050” を公表してから2年が経過し、コアとなっている3つの取り組みをステークホルダーに説明して概ね理解は得られたと思います。これからは判断し実行する段階です。卸電気事業を主体とする当社の意思決定は確実性を重視し、その見極めに時間がかかるため遅いと感じる部分もあります。2030年に向けて、技術開発、電源開発、電力システム改革などが急速に進むと考えています。私は、即断即決を好みますが、拙速に物事を決めるつもりはありません。物事の流れが加速する中で、決めなければならない時かどうかを見極めたいと考えています。

新島牧ウインドファーム
新島牧ウインドファーム
鬼首地熱発電所
鬼首地熱発電所
新桂沢発電所
新桂沢発電所
にかほ第二風力発電所
にかほ第二風力発電所
トライトン・ノール洋上風力発電所(英国)
トライトン・ノール洋上風力発電所(英国)
ジャクソン火力発電所(米国)
ジャクソン火力発電所(米国)
バタン発電所(インドネシア国)
バタン発電所(インドネシア国)
写真提供:PT ビマセナ パワー インドネシア
竹原火力発電所新1号機
竹原火力発電所新1号機

新社長としてのミッション

当社と初めて面談する投資家の方からは、火力電源の脱炭素化、CO2フリー電源である再生可能エネルギーの開発状況と大間原子力開発見通し、電力ネットワークについてよく質問されます。これはJ-POWER “BLUE MISSION 2050”の3つのアプローチであり、当社の成長機会と課題でもあるため投資家の関心が高いのだと思います。

また、東京証券取引所からは資本コストや株価を意識した対応をとることが求められています。当社のPBRも1倍割れが継続しており、経営としても大きな課題と認識しています。PBR改善に向けてはROEとPERの両面で取り組みたいと考えています。ROEは稼ぐ力、PERは事業の成長性や持続性を示しているといわれます。

菅野等

PERの改善のためには当社がこれからの事業機会を活かして成長する姿を示すことが必要だと考えています。2022年度は石炭価格の上昇と火力発電所の計画外停止の減少により利益が拡大した結果、過去最高の利益となりました。そしてROEも上昇しましたが、株価は業績ほど上昇しませんでした。これは資本市場が化石燃料に頼った利益の成長性や持続性に疑問を抱いているためだと捉えています。J-POWER “BLUE MISSION 2050” では、経年化火力電源の休廃止、そして水素発電へのアップサイクルとCCSの社会実装を描き2050年までに火力電源のゼロエミッション化を実現することを示しましたが、資本市場はその実現のために当社がどのような資金調達や投資計画をするのか、具体的な戦略が不足していると考えているのでしょう。CO2フリー電源である大間原子力発電所建設計画は、適合性審査が長期化していることから、資本市場は投資回収の不確実性を見ているのだと思います。これまで既に何度か投資家の方から、社長として何を最優先に取り組むか問われました。私は、成長分野である再生可能エネルギーを早期にできるだけ多く開発し、それを需要地に届けるネットワークの強化に取り組むことで当社の成長する姿を示すこと。そして、火力電源の脱炭素化に早期に道筋をつけて当社電源の低炭素化を図ること、大間の適合性審査に全力に臨み運転開始までの道筋をつくることによって当社の事業継続性を見せることと答えています。これが私の社長としてのミッションであり、同時にPERの改善にも繋がるのではないかと考えています。

なお、中長期で取り組んでいた国内外の大型プロジェクトは2022年度までに全て運転を開始しており、今後は前述のようなPER向上を目的とした事業ポートフォリオのトランジションを目指すプロジェクトが中心となります。これらの投資と並行してROE向上を果たすためには、既存の発電所の安定運転継続や市況変動対応、DXの活用等による効率化に加えて、資産の売却や入替えによる資本効率改善が必要となります。これらの進捗をトータルに管理する指標としてROICの導入を検討しています。

2022年度期末決算で中期経営計画の目標である経常利益900億円、自己資本比率30%は前倒しで達成しました。今の中期経営計画は2023年度で終了し、来年度に向けて新しい計画をつくる時に来ています。新中計では、2030年に向けての資産構成とそのために必要な投資規模の見通しを立てるとともに、資金調達面ではデットとエクイティのバランスも考慮する必要があります。また、当社資産や部門別の取り組みが将来も確実に利益を生み出すという具体性を示しながら、資本市場に理解いただけるよう対話を重ねていきたいと考えています。

J-POWER“ BLUE MISSION 2050”

サステナビリティ

人財育成

当社の特徴は、少人数でありながら携わる電源や送変電設備は多種多様かつグローバルであることです。そのため今世界のエネルギー産業が直面している課題の多くに当社も直面しています。エネルギー産業は、気候変動対応のようにグローバルな要請と国ごとに実情が異なる電力システム改革や電源開発というローカルな問題をバランスさせる必要があります。ますます複雑化する事業環境の中でエネルギーの安定供給は容易なものではなく、この状況は長く続くことも考えられます。そのような中で電力事業者が果たさなければならない安定供給の責務は厳しいものでもありますが、やりがいを持ってやりたいと思っています。このような観点から、人財育成においては幅広い課題に向き合うための複数の専門知識や幅広い視点、変化する環境の中でプロジェクト・人財をマネジメントする力を養っていきます。そして何より、新しい課題を見つけそれを変革するために自らチャレンジすることが大切だと考えています。こうした力を備えた人財像を「プロフェッショナル人財」と位置付け、そのような人財が互いに交流することで高め合える職場づくりを進めていきます。

自分自身の経験を後から振り返ると、自らの責任で判断してこそ成功も失敗も含めて自分のものになり、成長の糧になったと感じています。従業員の成長のためには人財育成と人財配置の両面が大切です。年齢や性別、国籍、経歴などを問わず仕事の権限と責任を任せる登用を行い、 研修で学んだことを活かす実務の場を提供していきます。特に今、当社では管理職社員の高齢化が進んでいますが、若手の早期登用により新陳代謝を図ります。こうした従業員一人ひとりの成長を、カーボンニュートラルに向けて変革する当社の成長の原動力に変え、企業価値の向上を目指していきます。

地域との共生

発電事業は大規模な設備を建設し、長期にわたって運営します。そのため、それぞれの地域社会・環境に適した開発を進め、運転を継続しなければなりません。また、事業活動を行うには、地域の理解を得て信頼関係を築くことが基盤となります。当社は発電事業者であると同時に地域の一員として、何が貢献できるか考える使命があります。我々が行っていることが地域社会からどう受け止められているかを理解するために、感受性を高くしておかねばなりません。

前述のNEXUS佐久間計画はその一つであり、水力発電と地域・流域、人との調和を目指しながら、新しい価値の共創に取り組んでいきます。

プロフェッショナル人財

ガバナンス

2022年の株主総会で監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行しました。この変更による最も大きな変化は、取締役会メンバーでの議論が活発化したことです。新たに選任された取締役監査等委員が踏み込んだ発言をすることで議論がとても活発になっています。取締役会で議論することはもちろんですが、取締役会以外の場でも重要な経営課題である気候変動対応、当社の強みを活かした今後の注力分野、会社の将来像など長期戦略について議論する場を設けています。もう一つ議論を充実させる仕組みとして、最新情報の提供を心掛けています。取締役会として多様で専門的なスキルを有していますが、そこに気候変動対応や電力システム改革などに関する最新情報の提供を行っています。従前から取締役会ではさまざまな議論が行われてきましたが、周辺環境の急激な変化の中で、さらに経営課題に関する議論を深めるべきという思いがあり、機関設計の変更、議論の場の拡大、そして最新情報の提供をすることで当社の直面する課題に対する戦略議論が活発化し、充実してきました。

当社は、豊富な経験を有し多様性に富んだ社外取締役と、執行役員を兼ね専門技術や事業推進に長けた社内取締役が取締役会等の場において議論することで、エネルギーの安定供給と気候変動対応の両立を前提に、事業環境の変化に柔軟に対応しています。「活発な議論をするうえで取締役会の人数は適正か」との質問を受けますが、発電事業、特に大規模プロジェクト開発に関する議論をする場合、さまざまな技術面からの評価が欠かせません。多様で技術的な専門性を取締役会として内包していることは、課題解決の方向性を見出す、また大規模プロジェクト開発の良し悪しの目利きをするうえで必要不可欠です。取締役会で技術的な議論ができることは当社の取締役会の強みであると捉えています。

今後、当社がカーボンニュートラルに向けて電源をトランジションさせていくために2030年までに多くのプロジェクト開発に取り組まねばなりません。その判断にあたり、エネルギー制度、収益性、気候変動対応など多様な視点で評価して、リスクテイクが妥当かどうか取締役会として判断することになります。2021年2月にJ-POWER “BLUE MISSION 2050” を発表しました。その後、さまざまなステークホルダーと対話を重ね、「CO2フリー電源である再生可能エネルギーと大間原子力の開発、石炭火力の脱炭素化、電力ネットワークの強化」という3つのアプローチについては理解を得たと捉えています。しかし、これらに適う投資すべてを実行することはできません。今後は、この3つのアプローチを戦略的にどう実行していくのかについて取締役会として共通認識をつくり、ステークホルダーの方々に示して、対話を進める必要があると考えています。

ガバナンス

Page Top
CLOSE