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平成11年度供給計画の概要 まえがき
わが国の電力需要は、業務用を中心に民生用需要は堅調な増加を示していますが、長びく不況を背景とした産業用需要の落ち込みにより、全体としては低迷しています。しかし、長期的には空調設備の普及増・情報化の進展などのアメニティ指向の高まりにより、利便性の高い電力へのシフト傾向が続くものと予想され、電力需要は安定した伸びが見込まれています。
一方、電力供給面においては、電力小売の部分自由化、火力電源の長期入札制度の導入など諸情勢の変化に対応しつつ、エネルギーセキュリティの確保や地球環境問題への取り組みなど長期的な視点に立った、より一層のコスト低減による経済的かつ効率的な設備形成が求められています。
当社は、自由化をはじめとした電力事業を巡る環境の大きな変化の中、現在民営化の実現に向け財務体質と企業競争力の強化という経営課題への取り組みを続けていますが、開発事業の推進は引き続き当社事業の柱であり、今後ともわが国の電力供給の一翼を担う電気事業者の一員として、徹底したコストダウンを実現しつつ、火力、原子力、揚水、広域流通設備等の新規設備の開発に取り組んで行きます。
また、民営化を見据え、廃棄物発電、風力発電等新エネルギー分野への取り組みも強化して行きます。
1.電源開発計画
(1)原子力
原子力は、準国産エネルギーであり、CO2等環境負荷が少なく環境保全面に優れていることから、ベース供給力の主力として開発を推進する必要があります。
特に、フルMOX−ABWRは、軽水炉によるMOX燃料利用計画の柔軟性を拡げるという政策的な位置づけを持つものであり、極めて重要なプロジェクトと考えています。
現在、青森県大間地点において、フルMOX−ABWRの大間原子力を本年7月着手(19年7月運開)に向け強力に推進しております。
(2)火力
石炭火力は、石炭が世界中広範囲かつ豊富に賦存する資源であり、供給面で極めて安定性が高いこと、化石燃料の中でも経済性に優れていることから、原子力に次ぐ重要なベース電源として開発を推進してゆきます。
工事中の橘湾火力(1号機12年7月、2号機13年1月運開)、磯子火力新1号機(14年4月運開)は、運開に向け着実に工事を行っています。
着工準備中の磯子火力新2号機(18年7月運開)、常陸那珂火力1号機(17年12月運開)は、着工、運開を目指し着実な推進を図ります。
なお、これら新鋭石炭火力には超々臨界圧発電技術を取り入れ、発電効率の向上を図ることによりCO2排出量を削減します。
さらに、石炭ガス化複合発電などの新発電技術の開発を推進するとともに、排出CO2の回収・固定化技術の実用化を目指し基礎的研究にも取り組んでいます。
(3)水力
一般水力は、CO2排出のない再生可能な純国産エネルギーであり、また、水資源の有効利用の観点からも新工法・新技術の採用による経済性の向上に努めつつ、その開発を推進します。
揚水は、信頼性のあるピーク供給力として、また、原子力・大容量火力の効率的運用および電力系統の安定化を図るため今後とも適正な開発が必要であるものと思われ、計画地点の開発に努めます。
工事中の奥只見・大鳥増設(14年6月運開)などを着実に推進します。
着工準備中の湯之谷揚水(初号機21年6月運開)などを推進します。
(4)地熱
地熱発電は、再生可能な純国産エネルギーであり、また、CO2など環境負荷が少ないという利点もあることから積極的に取り組んでおり、小国地熱(13年4月運開)の建設に向けて取り組みを続けております。
(5)新エネルギー
新エネルギーは、我が国のエネルギーセキュリティの確保ならびにCO2排出抑制等環境問題への対応として積極的に取り組んでゆく課題と考えています。
特に廃棄物処理とダイオキシン対策の観点から導入促進が期待されるRDF発電については、若松総合事業所において実施中の新型RDF利用発電技術開発試験の成果を踏まえ、福岡県にて地元自治体と共同でRDF発電事業に着手しており、これを皮切りに今後当社の新事業の柱として積極的に推進します。
また、風力発電についても今後プロジェクトの実現を目指し取り組んでいきます。
工事中、着工準備中及び着手予定の電源開発計画は第1表のとおりです。また、運開年度別の電源開発計画は第2表のとおりです。
以上により、当社設備の電源構成は第3表のとおりとなります。
区分 |
種別 |
発電所名 |
所在地 |
最大出力
(万kW) |
着手年月 |
着工年月 |
運開年月 |
工 事 中 |
水力 |
奥只見
(増設)
大 鳥
(増設)
徳 山 |
福島県
福島県
岐阜県 |
20
8.7
40 |
7−7
7−7
57−12 |
8−2
7−12
9−2 |
14−6
14−6
20年度 |
火力 |
橘湾火力1・2T
磯子火力新1T |
徳島県
神奈川県 |
105×2
60 |
5−12
8−7 |
8−11(1T)
9−3(2T)
10−4 |
12−7(1T)
13−1(2T)
14−4 |
着 工 準 備 中 |
水力 |
胆沢第一
湯之谷揚水
佐梨川 |
岩手県
新潟県
新潟県 |
1.77
180
0.44 |
3−7
9−7
9−7 |
14−4
13−3
13−3 |
17−4
21−6(1台)
22年度以降(3台)
21−6 |
火力 |
常陸那珂
火力1T
磯子火力
新2T
小国地熱 |
茨城県
神奈川県
熊本県 |
100
60
2 |
63−11
8−7
9−7 |
12−7
15−2
11−10 |
17−12
18−7
13−4 |
着 手 予 定 |
11
・
12
年
度 |
水力 |
新桂沢
相良 |
北海道
熊本県 |
1.68
1.65 |
12−3
13−3 |
18−5
14−4 |
21年度以降
21−3 |
原子力 |
大間原子力 |
青森県 |
138.3 |
11−7 |
14−3 |
19−7 |
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2.送変電設備計画
広域基幹系統については、電源の広域開発や融通の拡大および今後の電力需給の地域間アンバランスへの対応という観点から、長期的かつ計画的に推進する必要があります。
工事中の本四連系線2回線化(12年2月運開)、阿南紀北直流幹線、阿南・紀北変換所(12年7月運開)を運開に向け着実に推進します。
一方、既設送電線については、系統の拡充・整備の一環として、只見幹線の建替(11年4月運開)を着実に推進します。
なお、50Hz−60Hz間を連系する佐久間東幹線(山線)については、将来の連系機能強化も考慮し、都市化の進行など対策を要する地域の建替を進めています。
送変電設備計画は第4、5表のとおりです。
区分 |
送電線路名 |
区間 |
電圧(kV) |
こう長(km) |
着手年月 |
着工年月 |
運開年月 |
工 事 中 |
只見幹線3期
〔建 替〕 |
東群馬(変)
〜新新田(変) |
275
500 |
1.4
30.6 |
9−9 |
8−6 |
11−4 |
本四連系線2期 |
讃岐(変)
〜東岡山(変) |
500 |
架空線 104.9
ケーブル 22.1 |
4−3 |
4−4 |
12−2 |
阿南紀北直流幹線 |
阿南変換所
〜紀北変換所 |
(±500)
±250 |
架空線 50.9
ケーブル 50.7 |
7−8 |
7−11 |
12−7 |
橘湾火力線 |
橘湾火力
〜阿南変換所 |
500 |
5.1 |
9−2 |
9−5 |
11−7 |
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(注)電圧欄の( )は設計電圧を示す。
区分 |
変電所名 |
増加出力(MW) |
着手年月 |
着工年月 |
運開年月 |
工 事 中 |
紀北変換所 |
1,400 |
7−8 |
7−11 |
12−7 |
阿南変換所 |
1,400 |
7−8 |
7−11 |
12−7 |
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3.設備工事費・資金調達計画
上記計画に基づく設備工事費は、2,240億円(対前年計画比98億円減、4.2%減)となり、内訳は発電設備1,607億円、送変電設備180億円、その他453億円となります。
所要資金については、自己資金に加え、財政投融資(政府保証債)1,400億円、政府保証外債380億円、民間借入金等460億円を調達することとしています。
設備工事費・資金調達計画は第6表のとおりです。
第6表 設備工事費・資金調達計画(単位:億円)
項 目 |
平成11年度 |
設備工事費 |
2,240 |
発電設備 |
1,607 |
送・変電設備 |
180 |
その他 |
453 |
資金調達 |
2,240 |
財政投融資(政府保証債) |
1,400 |
その他 |
840 |
政府保証外債 |
380 |
民間借入金等 |
460 |
内部留保等 |
1,098 |
債務償還 |
▲1,098 |
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