平成11年杉山社長年頭挨拶(要旨)
−真の競争相手は「時代の流れ」−
平成11年1月4日
電源開発株式会社
皆さん、新年明けましておめでとうございます。保守運転・建設の各現場、及び海外拠点などで年末年始に関わらず業務に従事された皆さんに、まずお礼申し上げます。

昨年を振り返ると、日本経済は2年続きのマイナス成長であり、会社再編や銀行の一時国有化など、大競争時代の優勝劣敗が顕著化した厳しい1年でした。電力需要も景気を反映して鈍化し、当社の発電所運用にも影響を与えるなど、電気事業を取り巻く環境は必ずしも明るいものではありませんでした。

そのような中、当社にとっては明るいニュースもありました。一つは大間原子力発電所計画が漁業補償の解決、環境影響評価書の説明会、一次公開ヒアリングと進展したことであり、もう一つは平成10年度の中間決算において、民営化に向けての課題である財務面での体質強化についてまずまずのスタートを切ることができたことです。しかし、楽観視は禁物です。大間は、7月電調審上程に向けて地元のご理解を得ることが必須であり、さらに徹底的なコストダウンに努めなければなりません。大間以外の建設プロジェクトについても、運間時期の繰り延べやコストダウンの要請にどう応えていくか考えなければなりません。

電気事業を取り巻く環境は、予想以上に大きく変化しています。一昨年来電気事業審議会で議論されてきた電力自由化については、大口小売自由化を柱とする方向が出され、西暦2000年から実施されることになりました。これは、新規電源入札制度の導入、すなわち発電部門の部分自由化と根本的に異なる電気事業体制の見直しであり、戦後一貫して維持されてきた、電力会社の供給義務の一部解除と総括原価主義による収入構造の変更を伴うものです。小売自由化は部分的ではありますが、電力供給のあり方についての基本的思想は大きく転換されました。電気事業においても規制が緩和され、世の中の大きな流れと同じく自主保全、経営責任が重視され、競争の中で勝ち残ったものが経営維持し得る時代に入ったことをしっかりと認識する必要があります。

現在、私たちは、民営化に向けて財務体質を始めとして企業体質の強化に取り組んでいますが、電気事業の自由化という厳しい環境の中において、安定的事業運営と収入基盤を確保しうる強固な経営体質に繋がるよう、さらに取り組みを加速する必要があります。企業体質の強化は、民営化達成のためだけの取り組みに留まるものではありません。民営化は通過点であり、会社が将来に向かって発展・成長していくための手段に過ぎず、当社が競争環境の中で生き残っていける会社かどうか、市場から信頼と評価を獲得できるのか、これからその真価が問われるのです。

当社が、特殊法人として得た評価ではなく民間会社としての評価を市場から得るためには、当社が何をアピールし、またそれをどう説明していくかを考えなければなりません。しかし、それは、他社との指標比較にすべて委ねるということではありません。財務体質、供給力規模といった数値的なものに加えて、環境変化に柔軟かつスピーディに対処する姿勢、常に前向きに成長を求める姿勢を堅持する。発電事業を基軸に据え、会社の経営基盤を確保しつつ、常に新しい事業に果敢に挑戦していく。民営化に向けた諸般の取り組みと並行して、そのような民間会社としての「新しい電発らしさ」を確立し、社会に対して積極的に表明していきたい。そのためには、電発のアイデンティティーを社員全員でもう一度確認し共有することが重要です。

昨年、社員全員が拠って立つところのものとして、「企業理念」等を策定し、各役員が各事業所で皆さんと話し合いを行いました。企業理念に掲げた「日本と世界の持続可能な発展に貢献する」企業たる電発とはいかなるものなのか、経営と社員、職場の社員相互のコミュニケーションをさらに深めて、その答えを見い出していきたい。そうすることによって当社の新しいアイデンティティーを全員で共有し、市場に向けて「電発とは何者であるか」を明確にアピールしていきたいと考えます。

私たちを取り巻く環境は変わりました。真の競争相手は、同業他社でなく「時代の流れ」です。皆さんも、時代についていくだけでなく、時代を先取りすることについて是非とも考えていただきたいと思います。

最後に、建設保守運営、海外そして本店の各職場において、健康に留意され、今年1年が無事な年であるよう、また社員の皆さんとご家族の健康とご多幸をお祈りして、年頭の挨拶とさせていただきます。
以上
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