プレスリリース

2022年

プレスリリース

深海域でのCO2ハイドレートの生成を確認しました

2022年12月15日
電源開発株式会社
国立研究開発法人海洋研究開発機構

電源開発株式会社(代表取締役社長 社長執行役員:渡部肇史、以下「Jパワー」)と国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長:大和裕幸、以下「JAMSTEC」)は、両者の共同研究で実施した深海域における現場海域実験で、油圧シリンダーポンプから放出した液体の二酸化炭素(CO2)がハイドレート※1化する現象を確認しました。

本共同研究は、深海域におけるCO2の挙動を把握することを目的として、JAMSTECが保有していた深海調査研究船「かいれい」で無人探査機「かいこう」を用いた現場海域実験を行ったものです。相模湾沖の水深500m以深の深海環境において、高純度の液体CO2が低温・高圧環境下で瞬時にハイドレート化し葡萄状の構造を形成することを確認しました。また、その様子を日本で初めて高解像度カメラで撮影することに成功しました。

深海域で放出した液体CO2がハイドレート化する様子

深海域で放出した液体CO2がハイドレート化する様子



海域実験の実施箇所

海域実験の実施箇所



Jパワーは、エネルギー供給におけるカーボンニュートラル化を目指し、国内CCS※2の事業化調査に取組んでいます(2022年5月10日お知らせ済み)。さらに、CO2貯留ポテンシャルの拡大に向け、2017年から「海底下地盤中でのCO2ハイドレート貯留」の技術開発も進めています。今回の海域実験の成果は、海底下地盤中に圧入した液体CO2は低温・高圧環境下でCO2ハイドレートを生成し、土粒子間の間隙がCO2ハイドレートで埋まるとCO2の漏洩を防止する遮蔽性能を発揮できることを示唆するものとして期待されます。今後はCO2ハイドレート貯留の実用化に向け、鋭意研究を進めていきます。
JAMSTECは、1989年に有人潜水調査船「しんかい2000」潜航により、天然の深海底からの液体CO2湧出を発見し、ハイドレート化の様子を観察しました※3。また2000年代には、有人潜水調査船「しんかい6500」潜航によって液体CO2を含有する海底堆積物中の生態系を調査する※4など、海底下CCSの実施に先立って十分な環境影響評価を行うための取組を進めています。最近は、深海に存在する液体CO2が生体有機物創成の鍵であるとの仮説の下で、深海底における「生命の起源」に関する研究を進めています※5

  1. ハイドレート: 水(H2O)を含む2つ以上の分子が結合している固体化合物。CO2ハイドレートは結晶性の化合物で、水分子とCO2分子の数の割合が約6:1となるように規則正しく立体的に配置された構造になる。
  2. CCS: Carbon dioxide Capture and Storage(CO2の回収・貯留)
  3. Sakai et al. (1990), "Venting of Carbon Dioxide-Rich Fluid and Hydrate Formation in Mid-Okinawa Trough Backarc Basin" Science 248, 1093-1096.
  4. 海洋研究開発機構"沖縄トラフ深海底下において液体二酸化炭素プールを発見 二酸化炭素やメタン等を栄養源とする極限環境微生物が生息"プレスリリース(2006年8月28日付) / Inagaki et al. (2006) "Microbial community in a sediment-hosted CO2 lake of the southern Okinawa Trough hydrothermal system" PNAS, 103, 14164-14169.
  5. 海洋研究開発機構"生命の起源を解く重要なヒントとなる「海底熱水-液体/超臨界CO2仮説」の提唱"プレスリリース(2022年11月16日付)

以上

添付書類

本文(PDF:460KB)

【参考資料】 別紙:海底下地盤中でのCO2ハイドレート貯留研究の取組み(PDF:312KB)

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