大学生向け 水力編@奥只見ツアー レポート

エコ×エネ体験ツアー 水力編@奥只見学生ツアー 2019年ツアーレポート

▼ ツアーレポート

エコ×エネ体験ツアーは、暮らしを支える森と水、そしてエネルギーについて、体験を通じて知るためにJ-POWER(電源開発株式会社)が2008年から開催している体験型のエネルギー環境教育プログラムです。森と水とエネルギー、そして地域への想い…。参加者はこの体験ツアーから何を感じ取ったのでしょうか。

<ツアー概要>

  • 日程:令和元年8月30日(金)-9月1日(日)
  • 参加者数:学生33人

<ツアーの狙い>

私たちの生活はエネルギーを使うことで成り立っており、特に電気エネルギーは必需品といえるでしょう。私たちの「暮らし」を支える大切な「電気エネルギー」はいろいろなところとつながっていて、実は「森」とも深い関係があります。このツアーでは、森と水力発電所でのさまざまな体験学習を通じて、次の3つを感じます。

  • 「暮らし」を支える「森」と「エネルギー」を知る
  • 「暮らし」と「森」と「エネルギー」のつながりに気づく
  • エコ×エネ体験プロジェクトを知る

<スケジュール概要>

1日目:
  • 3日間のウォーミングアップ
  • 奥清津発電所の体験プログラム -五感を使って発電所を体験-
  • 奥只見へバスで移動
  • お互いを知る時間・プログラムアドバイザーのお話
2日目:
  • 奥只見ダム見学、遊覧船でダム湖を横断
  • 森の体験プログラム -奥只見の自然を体感-
  • まとめのワークショップ -森と水力発電所のつながりに気づく実験-
  • 2日間の振り返り
  • 環境教育概論
  • エコパークでの取り組み紹介
  • ドクター・アワー
  • 行動化へのつなぎの時間
  • ナイトハイク -明かりのない世界を体験
3日目:
  • 朝の散歩
  • 行動化へのディスカッション
  • 全体の振り返り -エコ×エネ宣言

水力編@奥只見高専・大学生ツアー1日目

1日目AM
10:00

JR越後湯沢駅集合

夏休み終わり間近の8月末。越後湯沢駅に、沖縄から秋田に至るまで全国各地から大学生が続々と集まってきました。「こういうプログラムは地元にはないので、思い切って応募してみました」「エネルギーに興味を持っているのですが、実際にダムを見るのははじめてなので楽しみです」。ほとんどのメンバーが「はじめまして」の状況の中バスに乗り込み、いよいよツアーのスタートです。

ようこそエコ×エネ体験ツアーへ!

バスに揺られながら、運営スタッフメンバーの紹介を兼ねたウォーミング・アップ。
「このツアーにはエコ(環境・自然)とエネ(エネルギー)の両方を大切にしたいという心を持った大学生が全国から集まりました。いろいろな専門分野を持った社会人のメンバーもいます。是非この3日間を通じて、自分なりのお土産を見つけて帰ってください」と、J-POWERのシゲさん(多比良さん)からウェルカムのメッセージ。

どんなツアーになるのだろう…

自然体験活動を提供するキープ(KEEP)協会の「ますやん」こと増田さんのリードで「じゃんけんポンポン!」と頭の体操にもなるウォーミングアップをしているうちに、車内は和やかな雰囲気に。

「当たり前でない体験にチャレンジして、
難しさや発見を楽しんで」と、ますやん

1日目AM
10:50

奥清津ダム到着
3日間のウォーミングアップ

雨の降る中、バスは奥清津ダムに到着。まずは屋内に集合し、3日間のウォーミングアップを行います。

奥清津ダムで迎えてくれる高﨑さん(土木担当)と藤原さん(電気担当)

お互いを知るために用意されたゲームの名は「デートゲーム」。各自が「話題シート」にニックネームやご当地自慢、自分のエネルギーの源やツアーへの期待などを書き込んでペアを組み、1回あたり2分の短いデートを繰り返します。スタッフも加わりお互いのことをより深く掘り下げていくうちに、グループ全体の熱量もさらに高まってきました。

デートゲームをリードする、おののこと小野さん

短時間でお互いを知り合う、中身のぎゅっと詰まった「デート」

地元の食材を使った地域の料理もエコツアーのポイントです。ランチは山菜たっぷりの季節の味覚に舌鼓を打ちました。

ツアー中のご飯も楽しみにしていてくださいね!

水力発電のしくみ byドクター

午後からのダム見学の前にまず、ドクターこと高倉さんから、水力発電のしくみについてユニークな解説がありました。水力発電に必要なのは「水」「ダム」「発電機」そして「司令塔」。雨が降り、水が貯まって、発電が必要なタイミングに司令塔から「発電開始!」の司令がでるまでの発電の流れを、人を配置して再現します。

こんな風に実験するなんて、小学生以来かも?!

起動・停止がとても速いことが水力発電の特徴です。発電のためには大量の貯水が必要なので即座に繰り返し使うことはできませんし、必要な時に雨が降ってくれるとは限りません。水力発電を稼働するためには、ダム水の管理がとても重要なのです。

1日目PM
12:20

ダム見学にGO!

そしていよいよ、奥清津ダム(二居調整池)・発電所施設の見学です。

奥清津ダムのマスコットキャラクターOKKY(オッキー)がお出迎え

見学したのは、第二発電所。第一が100万kW、第二が60万kW。総出力は160万kWという日本最大級の揚水発電所です。
一般式の水力発電はダムの水を落として発電するのに対し、揚水式は発電で使った水を下方につくったもうひとつのダムに貯めて、夜間に上のダムまでくみあげて再利用するのが特徴です。

人の大きさと比べて見てください!一つひとつの設備が大きい!!

施設に足を踏み入れてみると、設備の大きさにびっくりします。この日は稼働していませんでしたが、発電装置は、発電時にはものすごい音量になるのだそう。

これを一瞬にして動かすなんて、水力ってすごい!

発電に必要な水は発電機1台あたり毎秒77㎥。25mプールを3.2秒でいっぱいにできるほどの水量です。停止状態から発電までの時間は約5分。最大30万キロワットの出力までもそこから3分弱しかかかりません。ものすごいパワーが、本当にあっという間に発動するのですね。

発電機の真ん中には磁石が、外側にはコイルが設置されています。発電された電気は、送電用ケーブルを通って東京方面に送電されます。

配電盤室の設備は、現在はリモートコントロールで遠方から制御しています。ちなみに、東日本の水力発電所は、埼玉県川越市から制御しています。昔はこの部屋に電話と机を置いて24時間体制で運転操作をしていたそうです。電力消費のピークといえば夏の甲子園高校野球(甲子園)の決勝戦だと言われてきましたが、最近は人々の生活も変わり、また太陽光発電の導入の影響もあり、その状況は変わってきているのだそうです。

展示室で、情報を整理!

展示スペースでは、これまで見てきたダムの全貌を模型を見て確認したり、J-POWERのスタッフに追加の解説を求めたりして、これまで学んできたことを整理する姿が目につきました。

発電の種類、ダムの形式など情報が盛りだくさん

参加者の声

  • ここでつくった電気は首都圏に送られて、およそ50-60万軒の電気を支えているんだ
  • 揚水発電で使う水を下池からくみあげるのにかかる電力の量は、発電してできる量より多いんだって。安定供給のためにはそれも必要ってことなのかな…

電気の豆知識 byキャップ

発電設備の見学の後は、J-POWERのキャップこと藤木さんから電気の豆知識の紹介がありました。
「電気のスピードは光と同じ、秒速30万km。そして、電気の特徴として「貯めておけない」ということがあります。ということは、今使っている電気は、実は今発電されているということです。また、発電所からコンセントまでの間の、送電線や変電所、配電線等の設備に故障がないということでもあります。つまり電力インフラの管理とは、電気の通る設備全体に故障がないかということも含めて、安全や安心を捉えていくことなんです」

電気の豆知識を紙芝居プレゼンテーション(KP法)で紹介

「電気を考える上で、経済性、安定性、環境保全、そして安全性の4つの視点を持つことが大事です。昔は日本にも中東から安い石油が輸入されるようになり、それがどんどん使われるようになった結果、大気汚染が進んでしまうといったことが起こりました。現在は、脱炭素を目指して、地球の環境も考えて使うことが大事だと認識されていますね。電気の特徴として重要なのは「貯めておけない」ということ。今使っている電気は、実は今発電されているということでした。今は自然エネルギーの導入が進んでいますが、同時に安定供給の視点からもエネルギーを考えていくことが大切です」

ダム全体を見渡してみよう

続いて建物の外にでて、ダムの上から、設備全体を見学しました。
奥清津のダムは「ロックフィルダム」といって、中心部を粘土、その上に土や岩石を盛り立ててつくられているのが特徴です。

ダムの上から下池を見渡す。
山の上にはカッサ調整池という上池があります

これが奥清津ダムのダムカード。
ダム好きにはたまらないコレクションアイテムです

1日目PM
3:00

バスで、奥只見まで移動

奥清津ダムの見学を終えたら、奥只見へバスで移動です。ここで、まーりーの伝説の奥只見クイズ!「発電所をつくるためにつくられた道路シルバーラインの全長22キロメートルのうち、トンネルの長さはどれくらい? 」「奥只見ダムがあるのはどの県? 」などなど。クイズに答えているうちにこれから訪れる土地の予備知識が得られるのはとてもお得な感じですね。

J-POWERのつくるのは「電気・元気・勇気!」

緑の学園に到着!

宿泊地の緑の学園に到着。ズバリ、「日本で一番ダムに近い宿」です

夕飯は、この土地自慢の魚沼産コシヒカリ。
ご存知でしたか?新潟は枝豆の消費量が日本一なのだそうです

1日目PM
6:45

奥只見ダムの歴史に触れる

夕飯の後は、奥只見ダムの歴史を紹介するビデオを鑑賞しました。戦後復興を支える電力供給のために、豪雪地帯につくられた奥只見ダム。当時の最先端技術を使って急ピッチで工事が進められ、昭和35年(1960年)に運転を開始しました。当時は環境への配慮よりも早期のダム完成が重視されていたのです。15年前、首都圏への電力供給のために増設工事を行う際に環境アセスメントをしたところ、イヌワシの営巣が確認され工事方法が見直されることになりました。発電施設をつくるにあたっては環境への配慮が重要なテーマとなっています。

自己紹介タイム。ドクター率いるメンバーで
「でんでん虫は宇宙につながっている」?!

「エコ×エネ」への熱い想い

エネとエコのバランスの取れた社会に向けて―――。キャップからJ-POWERのCSR事業であるエコ×エネプロジェクトへの想いが語られました。

「CSRは企業の社会的責任という意味。企業はいろいろな人とのつながりを意識して事業活動をしていかなくてはなりません。経済だけではなく、社会も環境も、つながりやバランスを考えながら事業を行なっていく。それがJ-POWERのCSRの考え方です。エコ×エネ体験プロジェクトは、この「×」が大事。つながり、調和・バランス、そして交流・化学反応といった意味が込められているのです」

「電気事業の自由化や福島第一発電所の事故、途上国の内戦などさまざまな問題を抱えた今は、まさに変革の時代。国連では2030年に向けてSDGsを掲げています。そして、変化はチャンス。いままでになかったいろいろなものが生まれようとしている中、少しでもチャンスの芽を見つけていけたらと思います」

大変革が必要な時代。ライフスタイルを見つめ直そう

これを受けて、プログラムアドバイザーのもこさん(地球環境パートナーシップ会議の星野さん)からは、SDGsの達成に向けたメッセージがありました。

「SDGsの各目標はつながりあっていますから、それぞれの取り組み自体もつながっていく必要があります。大切なのは変革(Transformation)。変化(Change)ではなく、大変革をしないと人も自然も守っていけないんです。そのために必要なのは、市民一人ひとりが自分のライフスタイルを見つめ直し、生活のなかからできることを見つけて取り組んでいくこと。例えば、音楽が好きならフェスをエコにするとか、好きなことと掛け合わせてできることを見つけていくといいなと思います」

一日目のプログラムを終えて、森の体験プログラムに向けて翌日の天気を祈って眠りにつきました。

交流会では、夜遅くまで話が弾みました

学生のコメント

■「学生になってからこうやってみんなでダム見学をするって珍しいよね」

■「地方の大学に行っているから、他の大学との交流がほとんどなくて、こういうのがすごく刺激になる」

■「普段大学では、同じようなことに興味を持った仲間と話すことがあまりないからこういうのがすごく新鮮だなって思う…」

水力編@奥只見ツアー1日目 PHOTO GALLERY

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