松浦火力発電所におけるバイオマス燃料の混焼実機試験について
平成15年8月4日
電源開発株式会社
電源開発株式会社(社長:中垣喜彦、以下「J-POWER」)は、地球温暖化防止対策の一環として、石炭火力発電所のCO2排出量削減に有効であるバイオマス資源の混焼技術開発を進めてまいりましたが、この度、松浦火力発電所(長崎県松浦市)において、バイオマス燃料の混焼実機試験を行うことといたしました。

松浦市とJ−POWERとは、松浦市における新エネルギー事業の調査、開発を協力して推進することを目的に「新エネルギー事業等に関する基本協定」(平成14年11月1日付)を締結し、市内不老山総合公園において風力発電の可能性調査を実施中です。バイオマス資源についても新エネルギーとしての活用の可能性について共同で検討を進めており、現在、木質系バイオマスについて資源量調査を実施中であり、今後、発電所周辺地域の間伐材等の実機混焼試験についても検討していきます。

一方、今年度より松浦市が取組みをはじめた公共下水道事業においても、バイオマス資源である下水汚泥が発生しますが、この下水汚泥は全国的にも発生量が多く、有効利用が大きな課題となっております。下水汚泥等を未利用エネルギーとして有効利用する方法の開発が必要と考え、その一環として、当社で技術的検討を進めて来ました乾燥下水汚泥燃料(以下「バイオソリッド燃料」)の混焼実機試験を8月下旬より、以下のとおり行います。
なお、事業用火力発電所におけるバイオソリッド燃料の利用につきましては、国内最初の事例となります。

石炭火力発電所におけるバイオマス燃料の混焼意義について

石炭は経済性、供給安定性に優れたエネルギーセキュリティ上不可欠な資源ですが、CO2排出原単位が比較的大きく、石炭火力発電所におけるCO2排出量削減は地球温暖化防止対策上の課題となっています。

動植物に由来するバイオマス資源は、再生可能な新エネルギーとしてCO2排出量削減に有効なことから、国をはじめ各方面においてその利用並びに普及促進の検討が進められております。多くの石炭火力発電所を保有するJ−POWERとしても、化石燃料利用から生じるCO2排出量削減のためにバイオマス資源を混焼する技術開発に取組んでいます。

バイオソリッド燃料混焼実機試験について

(1)試験実施箇所
松浦火力発電所 1号機(1,000MW:長崎県松浦市志佐町白浜免字瀬崎458-1)
(2)試験工程
  1. 試験期間:平成15年8月下旬〜平成16年8月末目途
  2. 試験概要:石炭消費量に対して平均0.07%(最大混焼率試験時1%)のバイオソリッド燃料を混焼する計画です。(燃料は、バイオソリッド燃料を国内で唯一製造している福岡県御笠川浄化センターより購入)
    試験期間中、総量約1,200トンのバイオソリッド燃料を混焼し、燃焼特性、環境特性及び機器の健全性の把握を行い、混焼による影響のないことを確認いたします。
  3. 設備概要:設備概要図(10.9kb PDF)
(3)バイオソリッド燃料とは
下水処理場から排出される下水汚泥を減圧下で廃食用油と混合し100℃程度に加熱することで、熱量21,000〜25,000kJ/kg (5,000〜6,000kcal/kg)、水分5%程度、顆粒状の石炭に類似した燃料にします。(油温減圧式乾燥法)
この下水汚泥と廃食用油で製造したバイオソリッド燃料は、小型試験用ボイラでの混焼試験により、石炭火力発電所の混焼用燃料として適応可能との評価が得られており、未利用バイオマスエネルギーの実機活用が期待されます。

バイオソリッド燃料の混焼意義について

下水処理により年間に発生する下水汚泥は、現在、全国で年間約7,500万トン(約200万トン・乾燥汚泥ベース)排出され、全産業廃棄物全体の約18%を占めています。ほとんどの地方公共団体において焼却、溶融、コンポスト化、埋立等の方法で処理されていますが、有効利用は全体の約60%にとどまっており、残りは埋立処分されています。下水道の普及に伴い下水汚泥の量は今後益々増加するものと予想され、これらの発生抑制、有効利用が大きな課題となっています。

下水汚泥の燃料化リサイクルシステムの実用化は、石炭火力発電所向け化石代替燃料(バイオマスエネルギー)としてリサイクルすることにより、長期的かつ安定的に下水汚泥の有効利用が可能となり、循環型社会や地球環境に貢献すると考えています。

木質系バイオマスへのJ−POWERの取組みについて

(1) 技術開発の内容
  • 燃料としての物性を把握するために、各種木質系バイオマス(間伐材、木屑廃材等)の性状分析を実施し、石炭混焼燃料としての適応性を評価いたしました。(平成13年度)
  • 小型試験装置により粉砕燃焼試験を実施し、ハンドリング性、粉砕性、燃焼性など、木質系バイオマス燃料の基本的な特性を評価いたしました。(平成14年度)
  • 今年度においては、松浦火力発電所周辺において木質系バイオマスの資源量調査を実施しており、今後、間伐材等の実機混焼試験についても検討していきます。
(2)実機混焼試験までの検討事項
資源量調査の過程においては、燃料としての経済性確保、法律的な取扱い、効率的な収集・加工・運搬のためのシステム整備などの課題を明確にしつつ、解決へ向けた検討を進め、関係者との協議調整を行った上で実機混焼試験を検討することとしています。
添付資料
(参考)松浦火力発電所の概要
  出力 運転開始 年間石炭消費量
1号機 1,000MW 平成2年6月 約225万トン
2号機 1,000MW 平成9年7月 約220万トン
お問い合わせ先
電源開発株式会社 総務部広報室 辻村・西井 TEL:03-3546-2211
電源開発株式会社 松浦火力発電所 小松・高橋 TEL:0956-72-1201
以上
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