エゾリスの胡桃割り(北海道帯広市)
小島 なお

「音のソノリティ」を詠む

尖る耳ふたひら立てて胡桃割るエゾリスは秋のちいさな焔

歌人 小島 なお

きちきちきちきちきちきち。胡桃の殻を齧る音が早朝の森にひびく。
北海道帯広市の広大な森に生息するエゾリス。成獣になると体長は22~27cmほどになり、毛足の長い豊かな尻尾を持つ。一日の大半を木の上で過ごす樹上性リスであり、寒冷地に棲んでいても冬眠しないのが特徴だ。毎年10月ごろになると、保温性の高い冬毛に換毛しはじめ、冬に向けて栄養豊富な木の実などを多く食べてエネルギーを蓄える。
なかでも胡桃は好物。殻の合わせ目に沿って門歯で溝をつくり、そこに歯を入れ、くさびの原理で器用に割って実を食べるのだそう。顔に迫る大きさの胡桃を両手で抱える様はどこか人間の姿に似ている。
エゾリスの胡桃割りの音は、帯広の森に今秋も実りの季節が訪れたという合図である。

※ 「音のソノリティ」第142回放映(エゾリスの胡桃割り)を観て詠んでいただいたものです。

写真:上村孝幸/アフロ

エゾリスは雑食性で、植物の種子、花、葉のほか、昆虫なども食べる。J-POWERは北海道で水力ダム・発電所、風力発電所、本州と結ぶ送電線など、数多くの電力設備を運営している。

PROFILE

こじま なお

東京都出身。2004年角川短歌賞受賞。2007年第一歌集「乱反射」により現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞受賞。2011年第二歌集「サリンジャーは死んでしまった」刊行。居合道初段。

音のソノリティ 世界でたった一つの音

J-POWERは、首都圏などで放送中のミニ枠テレビ番組「音のソノリティ~世界でたった一つの音~」を提供しています。「ソノリティ」とは、フランス語の音楽用語で「鳴り響き」の意味。日本の自然風景から、その場所でしか聞くことのできない音を紹介しています。

日本テレビ系列 毎週日曜日 20 :54 ~ など /BS日テレ 毎週水曜日 20 : 54 ~ (再放送)