小学生親子向け 水力編@奥只見

エコ×エネ体験ツアー 水力編@奥只見小学生親子ツアー 2022年ツアーレポート

エコ×エネ体験ツアー2022@オンライン水力小学生親子編 「オンラインで森・水・電気の
つながりを学ぼう」
ツアーレポート

日本の電源を開発しているJ-POWERが2007年に始めた「エコ×エネ体験プロジェクト」は、環境とエネルギーの共生を目指して取り組む活動です。2022年のエコ×エネ体験ツアー水力小学生親子編は昨年に続きオンラインで開催され、バーチャル映像によるダム・発電所見学や森の体験、科学実験など盛りだくさんの内容になりました。日本各地から集まった小学生親子が一緒に、森・水・電気のつながりを知りながら楽しいひと時を過ごしたオンラインツアーのようすをレポートします。(このレポートでは午後の回を例に振り返ります)

「エコ×エネ体験ツアー2022@オンライン水力小学生親子編~オンラインで森・水・電気のつながりを学ぼう~」

< ツアー概要 >

  • 日程:2022年8月9日(火)・10日(水)計4回開催
  • [A]2022年8月9日(火)9:30~12:00
  • [B]2022年8月9日(火)14:00~16:30
  • [C]2022年8月10日(水)9:30~12:00
  • [D]2022年8月10日(水)14:00~16:30

参加者数:延べ127組約254名の親子
場所:オンラインにて開催

< スケジュール概要 >

  • はじまりの会
  • お互いを知る時間
  • 水力発電所(御母衣)バーチャル見学
  • 白川郷映像体験「電気のなかった昔の暮らし」
  • 奥只見との中継
  • 森の体験プログラム
  • ドクターと学ぶ「科学の実験教室」~水力発電編~
  • 親子で振り返ろう
  • おわりの会
配布教材
参加者には事前にオリジナルリングノート等の学習キットが配られました。
前半 | 14:00

エコ(自然)とエネ(電気)の
つながりを
楽しく学ぶツアーがはじまります!

山梨県清里のキープ協会で自然を案内している「おのの」が司会を務めます。「エコは自然、エネは電気を指しています。実はこの2つはつながっています。みんな楽しんで積極的に参加してほしいと思います!」と明るく呼びかけてツアーはスタート。
山梨県清里のキープ協会で自然を案内している「おのの」が司会を務めます。「エコは自然、エネは電気を指しています。実はこの2つはつながっています。みんな楽しんで積極的に参加してほしいと思います!」と明るく呼びかけてツアーはスタート。

J-POWERの「しげさん」の挨拶では、エネルギーと環境の両方を大切にする心をもった人たちが増えるようこのプロジェクトに取り組んでいること、さまざまな専門性をもったパートナーと一緒にプロジェクトを運営していること、そしてコンセントの向こう側がどうなっているのかを、みんなで一緒に関心をもって楽しんで学ぶ大切さが伝えられました。

「コンセントの向こう側がどうなっているのかを楽しく学ぼう!」
「コンセントの向こう側がどうなっているのかを楽しく学ぼう!」
前半 | 14:15

リアクション体操でリラックス!

続いて「リアクション体操」です。「いいね!」「OK」、手話を使った「拍手」などのリアクションを表現する方法やカメラと音声のオン・オフを確認しました。オンラインでは積極的なコミュニケーションがとても大切です。

みんなで楽しくハンドサインでリアクション。少し緊張していた子供たちも一気に笑顔に!
みんなで楽しくハンドサインでリアクション。少し緊張していた子供たちも一気に笑顔に!
前半 | 14:30

国内最大級のロックフィルダム
「御母衣ダム」へGO!

J-POWERでは水力・火力・自然エネルギーなど、さまざまな方法で電気を作っています。今回のオンラインツアーでは、岐阜県の御母衣(みぼろ)と新潟県の奥只見(おくただみ)を訪れました。

J-POWERの御母衣発電所は岐阜県、奥只見発電所は新潟県にあります。日本地図でそれぞれの位置を確認しました。
J-POWERの御母衣発電所は岐阜県、奥只見発電所は新潟県にあります。日本地図でそれぞれの位置を確認しました。

御母衣ダムと発電所は佐々木御母衣発電所所長が案内します。御母衣ダムは高さが131m、堤防の長さは405m、体積は795万立方メートルで東京ドームの6杯分以上あります。

御母衣ダムは岐阜県北部を水源とした庄川をせき止めて作られました。ダム湖の面積は8.8平方キロメートル、総貯水量は3億7千立方メートルと東京ドーム約300杯分の水量です。岐阜県は高知県に次ぐ全国2位の森林面積率79%と森の保水力も高く、冬は雪も多いため水力発電所に適した気候条件です。庄川水系にある水力発電所の最大出力合計は、原子力発電所1基分に相当する100万kW超となっています。

御母衣ダム・発電所見学は佐々木所長が解説
御母衣ダム・発電所見学は佐々木所長が解説
御母衣ダムは近くに岩石や粘土が多くあるため、コンクリートよりも経済的なロックフィル式(仕組みについては後述)が採用されました。
御母衣ダムは近くに岩石や粘土が多くあるため、コンクリートよりも経済的なロックフィル式(仕組みについては後述)が採用されました。

発電には、水車を回すために水の落差によって生じる力が必要です。そのため発電する設備は、ダムの地下にあります。

地下発電所に向かうには、インクラインというケーブルカーのような乗り物を利用します。このインクラインは標高差83.5m、全長223mを約2分半で移動できます。
地下発電所に向かうには、インクラインというケーブルカーのような乗り物を利用します。このインクラインは標高差83.5m、全長223mを約2分半で移動できます。

ダムの左岸地下にある発電機室には2台の発電機があります。発電機の中にはローター(電磁石)とステーター(コイル)が入っていて、回転軸で水車とつながれたローターが1分間に225回転という高速回転で回転して電気を作り出しています。

御母衣発電所にある2台の発電機は現在、愛知県春日井市にある中西地域制御所から遠隔制御されています。
御母衣発電所にある2台の発電機は現在、愛知県春日井市にある中西地域制御所から遠隔制御されています。

「MIBOROダムサイトパーク」では、ロックフィルダムや発電設備の仕組みがわかります。なぜこの地にダムが作られたのでしょうか。東海北陸自動車道、ひるがの高原サービスエリアの近くに、「分水嶺(ぶんすいれい)」と呼ばれる太平洋側と日本海側に分かれる水の流れの境界線があります。この南側は長良川、河口付近では木曽川となって太平洋に流れこみ、北側は庄川となって日本海に流れこんでいます。

分水嶺から海までの距離は、長良川約166kmに対して庄川約115kmと50kmほど短くなっています。北側の庄川の流れは急で、落差が必要な水力発電に適していました。
分水嶺から海までの距離は、長良川約166kmに対して庄川約115kmと50kmほど短くなっています。北側の庄川の流れは急で、落差が必要な水力発電に適していました。

御母衣ダムは中心部に遮水壁(しゃすいへき)と呼ばれる粘土で水が漏れるのを防止し、その上に小さな岩、表面部には大きな岩石を用いて遮水壁の粘土が流れ出るのを抑える「ロックフィルダム」という仕組みになっています。最大21万5,000kWの電気が作り出され、おもに関西方面で使用されています。

ロックフィルダムの仕組みがわかる御母衣ダムの断面の模型。
ロックフィルダムの仕組みがわかる御母衣ダムの断面の模型。

御母衣ダムの地域には、かつて荘川村中野地区の合掌造りの集落と穀倉地帯が広がっていました。J-POWER(当時の電源開発)の高碕初代総裁は、ダムの建設で水没する樹齢400年の桜の木を見て移植を指示しました。

荘川桜荘川桜荘川桜
移植された2本の桜は「荘川桜」として親しまれ、J-POWERの理念である「地域との共生」のシンボルとなっています。現在は、地元の小中学生とともに桜の養生などの活動も行われています。

続いて「ドクター」が「電気ができる仕組み」を、しゃかしゃかライトを用いて実験しました。

ライトの中にあるコイルの中を磁石が動くことで電気は発生します。ドクターはしゃかしゃかと横に降って磁石を動かし、実際にライトを光らせました。
ライトの中にあるコイルの中を磁石が動くことで電気は発生します。ドクターはしゃかしゃかと横に降って磁石を動かし、実際にライトを光らせました。
横に振るよりもコイルの中の磁石をぐるぐると回した方が効率的に動かし発電できます。実際の発電機も同じ仕組みのため、ドクターは手回しの発電機を用いて実践しました。こうした簡単な原理が今の私たちの生活を支えています。
横に振るよりもコイルの中の磁石をぐるぐると回した方が効率的に動かし発電できます。実際の発電機も同じ仕組みのため、ドクターは手回しの発電機を用いて実践しました。こうした簡単な原理が今の私たちの生活を支えています。

ここでツアー前に親子で調べた「自宅にあるコンセントの数」を発表しました。

およそ20から90個前後の数字が並びました。コンセントは必ずどこかの発電所とつながっています。
およそ20から90個前後の数字が並びました。コンセントは必ずどこかの発電所とつながっています。

「おのの」は、電気の速さが1秒間で地球を7回半まわる光の速さと一緒であること、今使っている電気は、今この瞬間に発電している電気であること、電気は今、本当に身近なものになっていることを伝えました。では電気がなかった時代の人々はどうしていたのでしょうか。

前半 | 14:45

白川郷映像体験
「電気のなかった昔の暮らし」

御母衣発電所の下流にある「白川郷」では、今も昔ながらの暮らしや文化が残っています。

トヨタ白川郷自然学校の「ある」さんからは、電気がなかった時代の暮らしについて解説がありました。
トヨタ白川郷自然学校の「ある」さんからは、電気がなかった時代の暮らしについて解説がありました。
岐阜県の山の中にある世界遺産、白川郷合掌集落。この地域は四方を山に閉ざされ、冬には雪が3m近く積もるために、他の地域との流通が難しい場所でした。合掌家屋をはじめとした昔の人の暮らしが色濃く残っています。
岐阜県の山の中にある世界遺産、白川郷合掌集落。この地域は四方を山に閉ざされ、冬には雪が3m近く積もるために、他の地域との流通が難しい場所でした。合掌家屋をはじめとした昔の人の暮らしが色濃く残っています。

合掌家屋にある囲炉裏(いろり)は、電気がない時代に寒い冬をしのぐため、薪(まき)を使って火を起こして温まり、家族で集まり話をする場所でした。薪は森から切り出した木を割って2年ほど乾燥させたもの。こうした薪には、そこそこの火力で長くゆっくり燃える種類の木が適しています。ここで「ある」は、針葉樹のスギと広葉樹のミズナラの薪を用意し、囲炉裏の薪に適している木はどちらかを実験しました。

ポイントは重さです。密度が低く軽い木は激しく燃えますが、すぐに燃え尽きます。逆に密度が高く重い木は、そこそこの火力で長く燃えます。「ある」がスギとミズナラの重さを比べると、ミズナラの木の方が重いことがわかりました。
ポイントは重さです。密度が低く軽い木は激しく燃えますが、すぐに燃え尽きます。逆に密度が高く重い木は、そこそこの火力で長く燃えます。「ある」がスギとミズナラの重さを比べると、ミズナラの木の方が重いことがわかりました。

ミズナラは繊維がぎっしりと詰まって重く、そこそこの火力でもゆっくり燃えるので火加減も調節しやすく、囲炉裏の薪に適しています。切り株から芽が伸びて大きくなる「ひこばえ」という伸び方をするので種から芽吹くよりも早いサイクルで成長します。そのため電気の無い時代の、まさに持続可能なエネルギー源でした。また昔は夜の明かりに「ろうそく」を使用していましたが、現在、目にするものとは異なり、植物の髄で作った芯とハゼなどの木の実を絞った“ろう”で作られた「和ろうそく」でした。

和ろうそくは芯が太く、風に強くて明るいという特徴がありますが、寒さが厳しい白川村ではハゼが生えないためウルシだけを使っていました。ウルシの実はとても小さく、たくさん集めても少量のろうしか取れないため、和ろうそくは高級品でした。
和ろうそくは芯が太く、風に強くて明るいという特徴がありますが、寒さが厳しい白川村ではハゼが生えないためウルシだけを使っていました。ウルシの実はとても小さく、たくさん集めても少量のろうしか取れないため、和ろうそくは高級品でした。

「おのの」は「昔はエネルギーを作る人と使う人は一緒でしたが今は別々です。電気をたくさん使う今は発電所で作ってくれるので、使いたいときにすぐに電気を使うことができる。そのため電気は当たり前のようにあるものと思ってしまいがちです。昔の人は自分が必要な分だけ森からもらって大事に使っていました。今の私たちも自分が使うときに、作る人たちがいることを忘れずに、大事に使えたらと思います」と話しました。

エネルギーを知る御母衣ダムと昔の暮らしの体験のあとは、エコロジーを知るために奥只見へ向かい、森の体験やドクターによる「電気ができる仕組み」の実験へ!