小学生親子向け 水力編@奥只見

エコ×エネ体験ツアー 水力編@奥只見小学生親子ツアー 2022年ツアーレポート

後半 | 15:00

奥只見から生中継

休憩のあとはエコ(自然)について学ぶ時間です。奥只見までの道のりを映像で体験。東京から新幹線で1時間半のJR浦佐駅から車で奥只見へ向かいます。水がとてもきれいな魚野川流域には大きな田んぼが広がります。この地域は魚沼産コシヒカリというおいしいお米が取れ、八海山や緑川という日本酒も有名です。おいしいお酒は、おいしいお米ときれいな水があってこそ。お酒の名前にもなっている八海山は標高1,778mで、この地域にある3つの高い山、八海山・中ノ岳・越後駒ケ岳は「越後三山」と呼ばれています。奥只見はこれらの山々を越えた奥にあります。道を進むと信号が縦に並んでいることに気づきます。横並びでは信号に積もった雪が車に落ちて危ないためです。また道路には雪を溶かすための消雪パイプもあります。

家屋や建物の土台は高く、玄関も高い位置にあります。冬には2mもの雪が積もるため、玄関や1階の窓が雪に埋もれないように作られています。雪国ならではの工夫です。
家屋や建物の土台は高く、玄関も高い位置にあります。冬には2mもの雪が積もるため、玄関や1階の窓が雪に埋もれないように作られています。雪国ならではの工夫です。

奥只見へ向かうシルバーラインと呼ばれる道路は、昭和32年、奥只見ダムと発電所の工事に使う材料や機材を運ぶために作られ、完成までに3年かかりました。

シルバーラインは全長22kmで約80%にあたる18kmがトンネルです。またトンネルの中に分かれ道があって銀山平という江戸時代に銀が採掘された場所に出られます。
シルバーラインは全長22kmで約80%にあたる18kmがトンネルです。またトンネルの中に分かれ道があって銀山平という江戸時代に銀が採掘された場所に出られます。
トンネルを抜けると奥只見に到着。ダムと湖が見えてきます。
トンネルを抜けると奥只見に到着。ダムと湖が見えてきます。

ここからは奥只見観光の佐藤さんによる奥只見現地からの生中継。標高約700mで周囲は森に囲まれた地にある奥只見ダムは、コンクリートの重さだけで水を支える重力式コンクリートダムです。長さは480m、高さはビル40階ほどの157m。コンクリートの量は東京ドーム1.3杯分で、その打設には4年の歳月を要しました。ダムの反対側の奥只見湖は日光の中禅寺湖と同じぐらいの大きさで、遊覧船も営業され紅葉のシーズンにはたくさんの観光客が訪れ、都心で桜が咲くころもまだまだスキーが楽しめます。

「ここは自然が豊かです。魚沼産コシヒカリや山菜、きのこなどもおいしく、四季折々の風景が楽しめるので、ぜひ皆さんも一度、遊びに来てください」と広大な奥只見の自然を背景に佐藤さんが呼び掛けました。
「ここは自然が豊かです。魚沼産コシヒカリや山菜、きのこなどもおいしく、四季折々の風景が楽しめるので、ぜひ皆さんも一度、遊びに来てください」と広大な奥只見の自然を背景に佐藤さんが呼び掛けました。
後半 | 15:20

ブナの森は気持ちが良い!
奥只見の自然を知る
「森の体験プログラム」

次に銀山平のブナの森をバーチャル映像で体験しました。まずは奥只見ダムや湖、銀山平の森の位置を地図で確認。奥只見ダムは新潟県と福島県の県境にある只見川をせき止めて作られ、その先の源流は尾瀬沼につながっています。

奥只見ダムの冬の光景。雪解け水や雨水などを蓄えて発電に利用します。
奥只見ダムの冬の光景。雪解け水や雨水などを蓄えて発電に利用します。
奥只見ダム周辺では森と水が豊かな自然環境が維持されています。
奥只見ダム周辺では森と水が豊かな自然環境が維持されています。
実際に訪れるツアーでは、奥只見船着き場から銀山平船着場まで遊覧船で渡っていきます。その遊覧船は尾瀬にも通じています。
実際に訪れるツアーでは、奥只見船着き場から銀山平船着場まで遊覧船で渡っていきます。その遊覧船は尾瀬にも通じています。

森の体験は「おのの」と同じキープ協会で働く「ぱりんこ」が案内しました。森の中に入ると少しひんやりして、葉っぱの新芽もとても柔らかく、木の赤ちゃんもいます。ネズミの穴やキツツキの巣などの生き物たちの住処(すみか)や、お母さんが産んだ卵を葉っぱにくるんで落とすオトシブミという虫も見つかりました。

枯れ葉や木の赤ちゃんで覆われた森の地面。ブナの森にはいろいろな形の葉っぱがあります。
枯れ葉や木の赤ちゃんで覆われた森の地面。ブナの森にはいろいろな形の葉っぱがあります。
キツツキの巣穴。森には多くの生き物たちが住んでいます。
キツツキの巣穴。森には多くの生き物たちが住んでいます。
枯れ葉や木の赤ちゃんで覆われた森の地面
枯れ葉や木の赤ちゃんで覆われた森の地面

ブナの森を散策したあと、赤、青、黄のブレイクアウトルームに分かれて「葉っぱっぱじゃんけん」が行われました。参加者は事前に用意しておいた5枚の葉っぱで「じゃんけん」に臨みます。各ルームのスタッフが提示する葉っぱに関してのお題に当てはまるものを、掛け声とともに一斉に出しあいました。今回、勝ち負けは自分でジャッジします。

まず「一番大きい葉っぱ」のお題で練習。スタッフよりも大きい葉っぱを出した参加者が勝ちとなります。練習から大いに盛り上がって、本番では「茎の部分が長い葉っぱ」「ギザギザが多い葉っぱ」「葉の表面に穴が多い葉っぱ」といったお題に合わせ、参加者はみな思い思いに葉を選んで出していきました。

自分で用意した葉っぱで勝負する葉っぱっぱじゃんけん!「おのの」は「葉っぱもいろいろな種類があり、同じ種類でも1枚1枚違うので自分の周りの葉っぱをじっくりと観察してみてほしい」と話しました。
自分で用意した葉っぱで勝負する葉っぱっぱじゃんけん!「おのの」は「葉っぱもいろいろな種類があり、同じ種類でも1枚1枚違うので自分の周りの葉っぱをじっくりと観察してみてほしい」と話しました。

ブナの森の奥へと進みます。ブナは白い木肌が特徴で、触るととても冷たく気持ちが良いといいます。葉はスベスベして、真ん中が少しくぼんで雨を受け止めるのにとても良い形。地面の落ち葉をよけるとブナの実が見つかりました。ブナの実はとても栄養があるので、熊やリスなど森の生き物にとっては大事な食糧となっています。

さらに落ち葉をめくって下に何があるかを見ていきます。葉っぱはだんだんと細かくなり、下に行くほど元の形がわからなくなって小さな根っこも出てきました。一番下の土は少し湿っています。土の中にいる小さな生き物たちが落ち葉を食べて細かくして土を作っています。

ブナの森の地面を掘っていくと、フカフカの土が出てきます。こうしてできた森の土から森の生き物は水や栄養をもらっています。森が元気でいるには水も栄養もたっぷりある豊かな土がとても大切です。
ブナの森の地面を掘っていくと、フカフカの土が出てきます。こうしてできた森の土から森の生き物は水や栄養をもらっています。森が元気でいるには水も栄養もたっぷりある豊かな土がとても大切です。

「おのの」は「このブナの森はとても気持ちが良いです。森にいろいろな生き物たちが元気に暮し、森全体が生き生きとして元気だから、人にとっても気持ちが良いのではないでしょうか。この森がずっと先の未来まで元気でいてほしい、そんな未来を作っていけたら良いなと私たちは思っています」と語りました。

ブナの木は寝転ぶのにちょうど良い形で根元が曲がっています。雪の多い地方では、雪の重さで木が曲がってしまい、こうした形の木をよく見かけます。寝転ぶと気持ち良い!
ブナの木は寝転ぶのにちょうど良い形で根元が曲がっています。雪の多い地方では、雪の重さで木が曲がってしまい、こうした形の木をよく見かけます。寝転ぶと気持ち良い!
後半 | 15:40

森と水と電気のつながりを知ろう!
ドクターの「科学の実験教室」

エコとエネが本当につながっているのか、森で保持された水がどのように電気に変わるかを解き明かす「ドクター」の実験の時間です。助手はJ-POWERの「やまゆき」が務めました。まず森の「土」に注目。木がたくさん生えている森の土と植物があまり生えていない学校の運動場のような土を比較していきます。この実験では運動場の土としてキッチンペーパーを重ね合わせたものを代用しました。紙はセルロースという小さな粒の集まりで、運動場の土も粘土の小さな粒の集まりのため性質が似ているためです。

エコロジー(自然)とエネルギー(電気)がつながっていることを実験で解き明かしていきます。
エコロジー(自然)とエネルギー(電気)がつながっていることを実験で解き明かしていきます。
キッチンペーパーを運動場の土に見立てて森の土と比較します。
キッチンペーパーを運動場の土に見立てて森の土と比較します。
運動場の土を森に入れると、どのように変わるのでしょうか?
運動場の土を森に入れると、どのように変わるのでしょうか?
森に見立てた箱に運動場の土(キッチンペーパー)や落ち葉、水、ミミズやクモ、ムカデ、微生物、きのこなどの小さな生き物たちを入れていきます。それらの生き物たちは森の土の中で24時間、毎日ガサゴソと活動します。
森に見立てた箱に運動場の土(キッチンペーパー)や落ち葉、水、ミミズやクモ、ムカデ、微生物、きのこなどの小さな生き物たちを入れていきます。それらの生き物たちは森の土の中で24時間、毎日ガサゴソと活動します。
時間がたつと運動場の土は生き物たちの活動によって丸っこい形の土に変わりました!
時間がたつと運動場の土は生き物たちの活動によって丸っこい形の土に変わりました!
森の土と運動場の土をペットボトルに同じだけ入れて、それぞれに同量の雨を降らせます。運動場の土は水はけが悪く、森の土は水をよく吸収します。水のしみこみ方のスピードは全然違うことがわかりました。
森の土と運動場の土をペットボトルに同じだけ入れて、それぞれに同量の雨を降らせます。運動場の土は水はけが悪く、森の土は水をよく吸収します。水のしみこみ方のスピードは全然違うことがわかりました。
どちらの土が植物は育ちやすいかを見るために、それぞれの土にストローで息を吹いてみます。すると、森の土では空気が通り、運動場の土は空気が通らず水があまり吸収されないことがわかりました。
どちらの土が植物は育ちやすいかを見るために、それぞれの土にストローで息を吹いてみます。すると、森の土では空気が通り、運動場の土は空気が通らず水があまり吸収されないことがわかりました。

過剰な水は植物を腐らせる場合があります。植物の根も酸素が必要で、空気の通りが良い森の土の方が、植物が育つ条件として望ましいことがわかりました。また「森の土は水を吸収する量が多く、下に流れ出る量も少ない。それは雨がしばらく降らなくても森が青々としている理由です」とドクターは説明しました。

森の土の入ったペットボトルを山や森に見立てて、複数個合体。そこに雨を降らせると、雨は地面にしみこみ、地下へとゆっくり流れていきます。この地下水が飲み水や農業用水、そして水力発電に利用されます。森の機能を保つことが、いかに人間の生活に有用なのかがわかりました。
森の土の入ったペットボトルを山や森に見立てて、複数個合体。そこに雨を降らせると、雨は地面にしみこみ、地下へとゆっくり流れていきます。この地下水が飲み水や農業用水、そして水力発電に利用されます。森の機能を保つことが、いかに人間の生活に有用なのかがわかりました。

さらに水力発電の実験を行います。ペットボトルを“水を溜めるためのダム”に、コイルと磁石、回転する水車の入った装置を“発電機”に見立てました。水を流して発電を開始すると、水車のプロペラとともに磁石が回って電気が起きます。この水力発電の欠点は、水がないと電気を起こせないことです。そのため必要な時にだけ電気を起こし、必要がなくなったらすぐに止めることを徹底する必要があり、同時に水が常にある状態に管理することが大切です。

地下水が流れてダムへ、そのダムの多くの水は地下にある発電所の発電機を回します。
地下水が流れてダムへ、そのダムの多くの水は地下にある発電所の発電機を回します。
高いところから多くの水が落下し、水車を回すことで電気が発生してライトが点灯。
高いところから多くの水が落下し、水車を回すことで電気が発生してライトが点灯。
万が一、雨が降らなければ水力発電には大問題。そんなときには雲を呼んで雨を神様にお願いする場合も。エコ×エネ名物の「雨乞いダンス」を参加者全員で踊りました!
万が一、雨が降らなければ水力発電には大問題。そんなときには雲を呼んで雨を神様にお願いする場合も。エコ×エネ名物の「雨乞いダンス」を参加者全員で踊りました!

「水力発電では、まず森を考える必要があります。その森が成立するには土の中の生き物や落ち葉などの働きが必要です。特に生き物の働きのおかげでフカフカの土に変わり、雨水は森で一度受け止めて地下へとゆっくり流れる。こうした森の働きは『森のダム』、水力発電のために人が作ったダムは『人工のダム』といえます」と、ドクターは自然と人間の力を合わせたものが水力発電だと解説しました。

水力発電は「森のダム」と「人工のダム」で成り立っています。
水力発電は「森のダム」と「人工のダム」で成り立っています。
後半 | 16:00

親子で振り返ろう~おわりの会

親子でツアーを振り返る時間です。リングノートに感じたことや気づいたこと、発見したこと、驚いたことなどを書いていきました。そして再び赤、青、黄のグループに分かれて発表。各グループで子供たちは自分の感想を仲間と共有しました。エコとエネのつながりへの驚き、自然と電気を大切にしたいという感想や、ダムには森が必要なので街にはダムがないといった気づきもありました。

親子で今日の体験を振り返ります。
親子で今日の体験を振り返ります。
感想や気づいたことをグループで発表しました。
感想や気づいたことをグループで発表しました。

おわりの会で「しげさん」は「エコとエネ、森と水と電気の不思議なつながりについて、いろいろな気づきがあったと思います。今日は水力発電でしたが、発電の仕組みもいろいろあります。エネルギーや環境、自然がなければ我々の暮らしは成り立ちません。皆さんも関心をもっていろいろと調べ、自分でできることをやっていただければうれしいです。今日から皆さんもエコ×エネの仲間です。またどこかでお会いできることを楽しみにしています」と呼びかけました。最後は画面越しでの記念撮影。楽しい2時間半のツアーは幕を閉じました。

今度は実際にダムや自然に行ってみよう!
今度は実際にダムや自然に行ってみよう!

参加者インタビュー

  • 「初めてで難しい部分もありましたが、理解できるところもたくさんあって安心しました。一番印象に残っているのはドクターの実験で、実際にやってみたいと思いました。夏休みの宿題にも使えると思います。今度はリアルのツアーに参加して、実際にダムを見学したいです(コンさん)」。
  • 「姉も以前、エコ×エネ体験オンラインツアーに参加させてもらい、脇で見ていた本人がやってみたいとなりました。小さいころに宮ヶ瀬ダムで発電のサンプルを見た記憶があります。これからも家族で出掛ける機会があれば、いろいろなものを見せてあげたいですね(コンさんパパ)」。
  • 「奥只見ダムがとても大きくて、どうやって作られているんだろう…ともっと知りたくなりました。電気を使いすぎないようにこれからも注意したいです。将来は、科学者になりたいと思っています。電気をもっと楽な方法で作れるように、いろいろなものを発明して自然や森林を守っていきたいです(あいあいさん)」。
  • 「今回、私も横で拝見させていただいて、水力発電と森がこうしてつながっているのかとしっかり理解できました。本当にこれからも自然を壊してはいけないなと実感しました(あいあいさんママ)」。
  • 「ダムが好きなので参加しました。ロックフィル式のダムに行ったことがなかったので、御母衣ダムはすごいと思いました。電気と自然はつながっていて、電気を使いすぎれば自然に負担がかかるので、これからは節電を心がけようと思いました。将来は自分でダムを設計する技術者になりたいです(みちるさん)」。
  • 「コロナの中、オンラインツアーを開催していただき、ありがたい気持ちです。オンラインでもこれだけ盛り沢山でしたので、リアルならばどれだけすごい体験になるのかと感じました。大変な状況を乗り越えて、またリアルのツアーが復活すると良いですね(みちるさんパパ)」。
  • 「母がリセマムを見て応募しました。光と電気の速さが同じだということ、地下に発電所があることが面白かったです。使っていない部屋の電気は全部消すようにしていますが、節電はやはりとても大事だと思います。将来の夢は作家です。自然や動物を物語にできると良いと思います(ふーさん)」。
  • 「本当に飽きさせない仕組みや実験が工夫されていて、現地でいろいろと体験したいという気持ちが高まりました。かこさとしさんの『ダムのおじさんたち』という絵本がありますが、そのダムを作る過程の大変さを今度は聞いてみたいと感じました(ふーさんママ)」。

インタビューに答えてくれた、あいあいさん親子、コンさん親子、みちるさん親子、ふーさん親子。スタッフ一同「子供たちからパワーをもらいました!」

楽しかった「エコ×エネ体験ツアー2022@オンライン水力小学生親子編」も無事に終了しました。子どもたちからは電気や自然を大切にしようという声が数多くあり、また質問もたくさん出てきたことにスタッフは驚きと感動でいっぱいでした。来年の「エコ×エネ体験ツアー」もとても楽しみです!