屋上の太陽光発電でCO2削減と電力安定供給に寄与
タイ王国 Vol.2
ルーフトップソーラー事業

Global J-POWER ―世界とともに―

GJP1 ROOFTOP SOLAR
タイ王国 Vol.2

工場の屋根を利用した太陽光発電

工場の屋上に太陽光パネルを運ぶ様子。
太陽光パネル設置工事の作業前の安全ミーティング。
中川さんが担当するSPPの一つ、サラブリ県ノンケー工業団地にあるKP1サイト。

J-POWERは、タイ国で1960年代から40件以上のコンサルティング事業を行い、2000年代には、ローカルパートナーとともに現地法人J-POWER Holdings(Thailand)を通じ、発電所の開発・運営・保守に参画、3件のIPP(独立系発電事業者)と、10件のSPP(小規模発電事業者)に投資している。同社が現在取り組んでいるのがルーフトップソーラー事業だ。日本からの出向者で、現地でこの事業の新規開拓を担当する中川雄仁(かつひと)さんにお話を聞いた。

「ルーフトップソーラー事業は、子会社Gulf JP1社を通じてSPPが電力を供給している工業団地内で、工場の屋上などに太陽光パネルを設置し、発電した電力をその工場に供給するものです。顧客は初期投資なしで、通常よりも数十%安い価格で電力を購入でき、CO2削減にも手軽に貢献できます」

顧客は、パネルやインバーター(直流を交流に変換)設備などの設置スペースを提供し、場合によっては屋根の強度を高める必要はあるが、ほとんどリスクがない。現在、1件が稼働し、工事中や計画中を含めると数十件ほどの案件が進行中だという。

中川さんは2018年から、タイ国にあるSPPの保守・管理を担当していた。SPPでは約80%は国営電力会社(EGAT)に売電するが、残りは工業団地内の工場に直接提供している。世界的に再生可能エネルギーを利用しようという機運が高まる中で、こうした顧客への販路を活かす形で、この事業が発案されたという。

これらの工業団地には日系企業の工場も多く稼働しており、これら日系企業に対しては中川さんが技術的な説明を担当している。日本では火力発電所の保守・管理を担当していたという中川さん。顧客と直接交渉するのは初めての経験だった。

「ちょっと緊張しましたが、我々が真摯に説明することで、話をよく理解してくださり、安心して任せていただけたと思います」

中川さんが担当するSPPが電力を供給している工業団地内の企業は50~60社ほどあるため、まだまだ顧客が増える可能性が残されている。

工場の屋上に設置された太陽光パネルで作業する様子。
太陽光発電のインバータールームで。直流を交流に変換し、工場内に配電する。左端が中川さん。
タイ北部への社員旅行でお坊さんへのお布施を行った。

妥協しない検査が信頼を生む

順調そうに見えるルーフトップソーラー事業だが、課題もある。

「タイ国でも太陽光発電がブームのため、経験のある工事作業員が取り合いの状態で、必要な人員の確保が難しくなっています。このため、試運転の際にしっかりチェックして、期間内に修正作業を終わらせることが大切です。質の低下は火事や事故につながるため、不具合点を徹底的にあぶり出し、妥協することなく修正するようにしています」

日本ではやったことがない業務にやりがいも感じているという中川さん。タイ国駐在も6年目になり、家族を呼び寄せて、海外生活も楽しめている。

「海外では自分が担当している業務の幅が広く、様々な業務に携われる機会があります。新しい技術にも取り組んで、タイ国の電力安定供給とCO2削減に貢献していきたいと思っています」

ミーティングの様子。
中川さんの執務スペース。
スウェーデン出張時に見学したシーメンス社の水素発電設備。