カーボンニュートラルに貢献するコンクリート素材を究めたい。

POWER PEOPLE

J-POWER茅ヶ崎研究所(神奈川県茅ヶ崎市)

海沿いの護岸や磯場などで見かける消波ブロック。そこに繁茂する海藻類は生育過程でCO2を吸収し、剥がれ落ちても分解されにくいことから、カーボンニュートラル実現へ向けた一つの手段として注目されている。

「海のゆりかごである藻場の創出は、海に囲まれた日本では重要なテーマ。海洋生態系に取り込まれた炭素(ブルーカーボン)は、CO2吸収効率が高く、長期間の貯留が可能ですが、海洋生態系の消失が進行しているため、その保全が重要です」

コンクリート素材の研究や品質管理を担う野崎渉太さんにとって、環境分野での貢献を求められる日々は新鮮さに満ちている。これまでに培った技術に新たな知見を加えて、教科書通りではないコンクリートの可能性に目覚め、興味が深まったそうだ。

「コンクリートの表面は平たんかつ綺麗に仕上げることが常識ですが、ブロックの表面を工夫する(例えば凹凸)ことで、海藻の付着性が向上する可能性があり、常識にとらわれない考え方を持つように努力しています」

コンクリートの代替材としてJ-POWERが開発した「Jブルーコンクリート」は、火力発電所から出る石炭灰、銅の精錬過程で出る銅スラグを配合することでブロック機能(重量)を高めつつ、生産時に大量のCO2を発生するセメント使用量の削減により、素材由来のCO2発生量を約3分の1に減らせる。

「現状は社内利用に留まっていますが、広く社会実装を図り、ブルーカーボンと低炭素素材の両面からカーボンニュートラルの実現に貢献したいです」

取材・文/内田 孝 写真/斎藤 泉

低炭素素材「Jブルーコンクリート」でつくった消波ブロックを海中に沈め、海藻類の繁茂状況を数年間にわたって継続観察している。
消波ブロックの表面にあえて凹みをつけ、海藻が付着・繁茂しやすくするための工夫例。
表面形状を凸型にした場合の海藻繁茂を調べるための素材開発も進められていた。
研究テーマの異なるスタッフ間で密に連携をとりあうのも重要だ。
野崎さんは学生時代から研究に打ち込んできた「コンクリート愛」を熱っぽく語る。

PROFILE

J-POWER技術開発部
茅ヶ崎研究所
土木技術研究室
野崎 渉太