ケナガネズミの声(鹿児島県奄美市)
小島 なお
「音のソノリティ」を詠む
垂らす尾のしろさに南の夜が来て樹上を渡る思いのねずみ
歌人 小島 なお
きーい、きーい。ひゅううひゅう。甲高く、喉を絞るような声に、鼻から空気の抜ける仔犬にも似た声が入り交じる。
鹿児島県奄美市住用町(すみようちょう)。世界自然遺産に登録された奄美大島で、夜になると聞こえてくるケナガネズミの声。尻尾を除く体長は20〜30cm。
日本に生息するネズミ類でもっとも大きく、奄美地方の固有種という。樹上暮らしで外敵がいないため、警戒心が少なく、ゆっくりと動く。夏の終わりから秋の初めにかけての繁殖期には、オスの求愛の鳴き声が木々の間に響き渡る。木の洞(うろ)に住み、木の実や昆虫を食べる雑食だとされているが、生息数の推定も難しく、生態の大部分がいまだ解明されていない。
ひときわ目を引くのが白い尾。闇に垂れるその尻尾の仄ほのあかりが神秘的な想像を誘う。
※「音のソノリティ」第902回放映(ケナガネズミの声)を観て詠んでいただいたものです。J-POWERグループは、鹿児島県で川内川第一・第二発電所や南大隅ウィンドファームなどを運営しています。
PROFILE
こじま なお
東京都出身。NHK Eテレ「NHK短歌」選者。2004年、角川短歌賞受賞。2007年、第一歌集『乱反射』により現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞受賞。2020年4月、第三歌集『展開図』刊行。居合道三段。
音のソノリティ 世界でたった一つの音
J-POWER は、首都圏などで放送中のミニ枠テレビ番組「音のソノリティ~世界でたった一つの音~」を提供しています。「ソノリティ」とは、フランス語の音楽用語で「鳴り響き」の意味。日本の自然風景から、その場所でしか聞くことのできない音を紹介しています。
日本テレビ系列 毎週日曜日 20 :54 ~ など /BS日テレ 毎週水曜日 20 : 54 ~ (再放送)