尺八の音色とともに生きていく
辻本 好美

Venus Talk

尺八奏者 辻本 好美

辻本さんが演奏でよく用いるのは、一尺六寸の尺八。プライベートな旅行にも持っていき、森の中でも演奏を楽しんでいる。

日本の伝統的な木管楽器であり、明治時代以降、民謡の伴奏にも用いられる尺八。幼い頃から、父の吹く尺八の音色とともに育ち、現在、尺八奏者として活躍している辻本好美さん。

「尺八は、奏者が吹き込む空気の量を調整して音を出します。また息の使い方やあごの動かし方などによっても、音色は様々です。コツがいりますが、その分、おもしろさも感じます」

現在、一般的に使われている五孔(ごこう)尺八は、5つの孔(あな)の開閉だけで音を奏でるというシンプルな楽器である。しかし、手孔(てあな)の全閉、半開、1/3半開、全開などを組み合わせることで、その音色は驚くほど豊かになる。ビブラート(音の揺れ)を効かせた独特の艶(つや)を持つ音色、よく通るシャープな高音。辻本さんは、国内外でのコンサートや異種楽器とのコラボで、自由自在に尺八の音を響かせ、数多くの観客を魅了してきた。

「尺八のおかげで、たくさんの人と知り合い、いろいろな場所で演奏することができました」

日本古来の楽曲だけでなく、ジャズやポップスなど現代的な音楽にも合う不思議な音色。辻本さんが生みだす魅力的な音に身をゆだねる快感をぜひ味わっていただきたい。

取材・文/ひだい ますみ  写真/竹見 脩吾(上)、米山 三郎(下)

一般的によく使われるのは、一尺六寸または一尺八寸のサイズ。長いほど、太く低い音が出る。

PROFILE

尺八奏者 辻本 好美

つじもと・よしみ
1987年、和歌山県生まれ。尺八奏者の父の影響で16歳から尺八を習い始める。2010年、東京藝術大学音楽学部邦楽科尺八専攻卒業。2016年、ソロプロジェクトBamboo Flute Orchestraとして「SHAKUHACHI」をリリースし、メジャーデビュー。