短編小説「うさぎとおじさん」
藤岡 陽子

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※コロナ禍で取材ができないため、今回は藤岡陽子さんによる短編小説を掲載します(2015年7月発行の本誌42号の写真を再利用しています)。

広島県竹原市にある大久野島は、野うさぎが棲息する“うさぎの島”として知られる。

作家 藤岡 陽子/ 写真家 かくた みほ

大久野島行きのフェリーの客席は、日曜だからかほぼ満席の状態だった。客のほとんどが女性で、どこかしら華やいだ雰囲気が漂うので、おそらく観光客なのだろう。

雄二は客席の隅っこに、身を潜めて座っていた。

だが、誰かが自分を見ているような気がして落ち着かず、席を立ってデッキに出る。サングラスをかけ、キャップ帽を被り、マスクをしているものの、一メートル八十五センチの長身はどうやっても目立ってしまう。

おれはここで、なにをしているんだ。

七月の海を跳ねる光を見つめ、その眩さに目を細める。

ペナントレースの真っ只中にいる南郷ロイヤルズの監督が、いまこんな場所にいることを関係者に知られたら、謝罪だけではすまされないはずだ。無責任、自暴自棄、雲隠れ……。スポーツ新聞のトップ見出しになりそうな文言が、頭の中に次々と浮かんでくる。

それにしても、どうしてこんな所へ来てしまったのか。 

今朝、広島市内のホテルで目を覚まし、いつものように部屋でホットコーヒーを淹れて栄養ドリンクを飲んだ。それからレストランに朝食を食べに行くつもりが、足が勝手にホテルのエントランスへと向かっていた。

正面玄関の前に停まっていたタクシーの運転手に向かって、

「忠海港まで行ってくれ」

と考えもなく告げたのは、昔馴染みの場所だったからだろう。ホテルから忠海港まで車で一時間はかかるというのに、気がつけば後部座席に腰を下ろしていた。

広島で暮らしていた頃、雄二は忠海港からフェリーで行ける大久野島が好きだった。

広島県竹原市にある大久野島は、瀬戸内海に浮かぶ周囲四キロの小さな島で、島内に五百羽以上のうさぎが生息することから「うさぎ島」とも呼ばれている。

いまから三十年ほど前、雄二がまだ広島東洋カープの選手だった頃は、幼かった二人の娘を連れてたびたび島を訪れた。

娘たちは野飼いになっているうさぎと触れ合うのを楽しみ、雄二や妻もまた、心地よい海風に癒されたものだ。

だが三十代半ばの時に広島カープから南郷ロイヤルズにトレードに出されてからは広島を離れ、それ以降一度も島を訪れることはなくなった。

潮風に混じって人の声が流れてきたので、帽子を目深に被り直す。

「あのー、すみません」

二十代くらいの女性二人組に声をかけられ、ドキリ、と心臓が跳ねる。もしや気づかれたかと、サングラスに隠された両目が泳いだ。サインを求められるのか。それとも「一緒に写真を」と懇願されるか……。とにかく騒がないでくれ。インスタだかツイッターだか知らないが、いまこの場所にいることをSNSで拡散され炎上したら、おれの人生は台無しになってしまう。

「写真を撮ってもらっていいですか」

ほらきた、と心の中で舌打ちする。船の上で写真を撮ったら、動かぬ証拠になるではないか。

「このボタンを、押してください」

「……え?」

「私たち、あそこに立ちますんで」

二人組のうちの一人はすでに船先に立ち、両手を横に伸ばしていた。もう一人も雄二にスマートフォンを手渡すと、船先へと走っていく。二人はハリウッド映画の有名なワンシーンと同じポーズをつくり、「お願いしまーす」と叫んできた。

「はい、チーズ」

何枚か写真を撮ってからスマートフォンを返すと、二人組がにこやかに礼を告げて去っていく。

おや、と思わず視線を止めたのは、デッキの手すりにもたれて海を眺めている男性がいたからだった。女性客ばかりの中、洒落たパナマ帽を被ったその男は妙に目を引いた。

年は雄二と同じ、五十代半ばくらいだろうか。

忠海港を出発しておよそ十五分後、フェリーが大久野島に到着した。船はこのまま大三島にも寄港するのだが、数人の客以外は大久野島で下船し、桟橋は混雑を極めている。

雄二は人混みを避け、島の中央にある展望台の方へと歩いていった。展望台に続く山頂道路は、娘と妻が好きだった散歩コースでもある。自分は懐かしい記憶に癒されたくてここまで来たのかと、二十年前とそう変わらない景色を見ながら、大きく息を吸い込む。

昔の記憶をたどりながら山頂道路を歩いていると、足元にうさぎが数羽寄ってきた。島のうさぎは人に慣れているので、餌をもらえると思って近づいてきたのだろう。

「悪いが餌は持ってないんだ。腹減ってるのか?」

首をめぐらせ、人がいないのを確かめてから、雄二はその場にしゃがみこんだ。モフモフした毛を手のひらで撫でていると、幼子に話しかけるような高い声になってしまう。

瞬く間に五羽、六羽、七羽……と、雄二を取り巻くうさぎの数が増えていく。

こんな取り巻きなら可愛いもんだ。人差し指でうさぎの眉間を撫でつつ、昨晩の囲み取材を思い出す。負け試合の後、

「今日で十八連敗ですが、いまの心境は? 一九九八年のロッテが打ち立てたプロワースト記録と並びましたが?」

と無礼な質問を投げかけてくる記者たちの顔に、(こいつが解任されるのはいつか。他社より早く情報をつかんですっぱ抜いてやる)というギラつく野心が色濃く浮かんでいた。

「これはまた、大人気ですね」

頭上から落ちてきた声に視線を上げると、船のデッキにいたパナマ帽の男が両手を腰にあてて立っていた。午前十時を過ぎて気温が上がってきたせいか、額やもみあげに汗の粒が浮かんでいる。

「大人気というか……。寄ってはきたものの、餌を持ってなくて」

道端に座りこみ、何羽ものうさぎをはべらすオッサン。

いまの自分を客観視してしまい、マスクに覆われた頬が火照る。

「餌、よかったらどうぞ。家から野菜を持って来たんで」

男が背負っていたリュックを下ろし、透明の容器を取り出した。平たい容器に、細く切りそろえた人参が詰められている。

「どうぞ。ガバっと取ってください」

「あ、どうも。餌を持参されるなんて準備がいいですね。ここへはよく来られるんですか」

こんな所でのんきに世間話をしている状況でないことは、わかっている。だが五十がらみのオッサン二人がうさぎと戯れているのだ。なにか話さないと間がもたない。

「たまにです。休みの日に気が向いたらふらりと来るくらいで。あなたは? この辺りにはよくみえるのですか」

「いえいえ全然。今日はたまたまで」

「そうですか。よかったら、竹原の観光もしていかれるといいですよ。ああそうだ、町並み保存地区はもう行かれましたか?」

海岸線から車で十五分ほど走った場所にある「町並み保存地区」は、安芸の小京都と称される観光地なのだと男が教えてくれる。

江戸時代後期の竹原は製塩業で栄え、保存地区には事業で富を成した町人たちの屋敷が建ち並んでいるのだ、と。

「メインストリートの本町を歩くと、西方寺という寺があるんです。本堂横の高台にある普明閣は、京都の清水寺を模して造られたと言われていて、その緋色は目を見張るほどに美しいですよ」

ニッカウヰスキーの創始者、「マッサン」こと竹鶴政孝の生家である竹鶴酒造も、ぜひ訪ねてほしい。竹鶴酒造の酒蔵で生酛(きもと)造りされた「生酛純米」は、日本酒好きならたまらない超一級品ですよ、と男が竹原の見所を口早に紹介し始めた。

「詳しいですね。おたくは、地元の方ですか?」

いつのまにか、オッサンたちの周りに十羽を超えるうさぎが集まってきていた。茶色いのや、青みがかった灰色のや、白いのが、餌をくれくれとつぶらな瞳で見つめてくる。

「いえ、私は仕事で竹原に単身赴任しているんですよ。ですがもう長いので、この辺りのことならたいてい知っています」

自分は竹原火力発電所で働いているのだと、男が言った。二十代の頃に三年間この土地で暮らし、いまは二度目の赴任となり、今年で四年目に入ったところだという。

「私の妻は広島出身なんですよ。若い頃にこっちで知り合いましてね。妻が筋金入りのカープファンなもんですから、昔は二人で出かけるのも、もっぱら野球場でした。あの頃は前田、大野、達川なんかが活躍していて……監督は山本浩二だったかな」

男は広島カープのスター選手の名前を、何人か挙げた。雄二と同世代の馴染みのある名前ばかりだ。

「ですが私は、並みいるスター選手の中でも、勝俣雄二のファンでした。ホームランバッターというのではないんですけど、あの選手が出てくると、なにかやってくれるんじゃないかというワクワク感がありました」

「……右投げ左打ちの、外野手」

「そうです。高校までは捕手だったのに、プロに入ってから外野手に転向した」

「捕手でレギュラーが取れなかっただけでしょう」

「いや、器用な選手でしたよ。ああ、器用だなんて言ったら失礼だな。おそらく血の滲むような努力で、外野の守備を練習したんだと思います。あの選手は、とにかくものすごい努力家だった。私なんてただのファンですがね、でも見てるとわかるんです。勝俣雄二はうさぎでしたよ。生まれ持った才能を磨きつつも、その時々に求められるものに合わせて、自分のスタイルを変える。あの選手は、亀に負けない努力をするうさぎでした」

勝俣が広島カープから南郷ロイヤルズにトレードされた時のショックは、いまもはっきりと憶えている。あんないい選手を手放すなんてと監督や球団に腹を立て、広島カープのファンをやめようとすら思ったと、男が口元に笑みを浮かべて空を見上げた。

「ですが勝俣は、監督としてはポンコツですな。今シーズンに入ってから、南郷ロイヤルズは十八連敗でしょうが」

雄二は、口調が強くなるのを押さえられなかった。いまの自分は足がもつれて走れない、惨めなうさぎだ。

「今年の南郷ロイヤルズの戦力では、しかたないところもありますよ。先発ローテーションに入っていた外国人がアメリカに戻り、四番を打っていた主軸もメジャーに移籍。その補充がないままに新シーズンを迎えたんです。これで勝てというほうが、どうかしていますよ。でも勝俣監督ならなんとか作戦を練って、最後まで諦めることはしないと私は信じていますよ」

男がやけに自信に満ちた言い方をするので、雄二は無性に腹が立ってきた。なにも知らないくせに、と。あんたは監督をやったことなどないだろう、と。いくら作戦を練っても、勝てる選手がいないんじゃ、どうしようもない。

「さきほど、火力発電所にお勤めだと仰ってましたね?」

やたらに前向きなことを口にするこの男に、なにか嫌味のひとつでも言ってやりたくなった。こっちは毎日のようにストレスにさらされているのだ。球団のお偉方もそうだが、SNSでは会ったこともない人間から散々非難を浴びている。

「ええ、竹原火力発電所です」

「おたくも大変じゃないですか」 

「と、いいますと?」

「火力発電所は、二酸化炭素の排出問題で大変なんでしょう?」

何をされたわけでもないのに、男の気にさわりそうなことをわざと口にした。ただの八つ当たりだ。そんなことはわかっている。

「それはまあ……。昨今は事情が変わってきましたから」

「世間なんて勝手なもんです。風向きが変わったとたん束になって批判してくるんです。おたくも、日々ストレスが溜まりますな」

「ストレスというか……。もちろん緊張感はあります。ですが、むしろ挑戦の気持ちのほうが強いですよ」

竹原火力発電所の1号機が運転を開始したのは1967年で、いまから五十五年前になるのだと男が話す。

2号機は1974年。3号機は1983年に運転を開始し、その年月だけで見れば、初動からずいぶん時が経ったように思われるだろう。実際に、竹原火力発電所は高度経済成長期の日本を支えてきた。だがエネルギーの新時代を迎え、2020年には1号機と2号機を新1号機へと更新した。この新設備は発電効率をアップさせ、さらに環境性能を大幅に向上させている。

「2020年といえば、つい最近じゃないですか」 

「そうなんです。外から見てるぶんにはわからないかもしれませんが、われわれも同じ場所には留まってないんですよ」

時代の変化を受容し、適応し、その時々に求められるものを提供していくことが自分たちの使命だと思っている。

言いながら男がゆっくりと立ち上がり、固まっていた膝を伸ばした。大量にあった人参はすべてうさぎたちの胃袋におさまり、一羽、また一羽とオッサンたちから離れていく。

「実は私、発電所と同い年なんです。あと五年で定年を迎え、その後少しは働くとしても、会社員生活も先が見えてきました」

男は、満腹になって走り去っていくうさぎたちの後ろ姿を満足そうに眺め、突然自分のことを語り出した。うさぎは山道を下りていくのもいれば、草むらの中に向かっていくものもいる。

「会社員というのもなにかと大変ですな。上の人間からの評価も気になるでしょうし」

「まあ、そうですね。私も正直なところ、以前は上司の評価を気にして働いていましたよ。できることなら高評価を得たい、と」

「いまは評価を気にしていないと?」

「いまは上の人間ではなくて、日々一緒に働いている年下の者たちに認められたいというか……。あの人は、最後まで手を抜かずにきちんと仕事をした。そんなふうに思われたいと願っています」

──あの人は、最後まで手を抜かずにきちんと仕事をした。

心の中で男の言葉を繰り返せば、まるでフラッシュを焚いたかのようにまざまざと、雄二の脳裏に南郷ロイヤルズの選手たちの顔が浮かんだ。

十八連敗に息が詰まりそうなのは、自分だけではない。

最下位に喘ぎ苦しんでいるのは、選手たちも同じ。

応援してくれるファンはもちろん、南郷ロイヤルズに関わるすべての者が、光の見えないトンネルの中でもがいている。

最後の一羽がどこかへ歩き去っていくのを見届けると、雄二は腕時計で時間を確認した。気がつけば十一時を回っていて、試合前の練習はすでに始まっている。

「あの、次の忠海港行きのフェリーが何時か、ご存知ですか」

「いまからだと、十一時四十分のに乗れますよ。それに乗れば十二時前に忠海港に到着するから、ぎりぎり間に合うでしょう」

「ありがとうございます。じゃあ、私はここで失礼します」

フェリーが忠海港に着き、下船すると同時に若い男が雄二の元に駆け寄ってきた。白のカッターシャツに黒いズボンを合わせた、この男のことはよくよく知っている。スポーツ日報の南郷ロイヤルズ番記者、甲斐翔平だ。

「勝俣監督、こんなところで何やっているんですかっ」

甲斐が周囲を気にしながら肩を寄せ、低い声で話しかけてくる。

どうしてここがわかったのかと驚きながら、他の記者もいるのかと首をめぐらせたが、甲斐だけのようだ。

「おまえこそ、なんでここにいる」

誰かに気づかれないうちにと、雄二は辺りを見回しタクシーを探した。うさぎに見慣れていたので、甲斐の髭面がうっとうしい。

「試合前の練習に顔を出されてなかったんで、探していたんです。コーチたちの様子もなんか変だったし、なにか重大なことでも起こったんじゃないかって。他社の記者は、いまもホテルで張り込んでますよ。もしかしたら勝俣監督が……」

「球界ワースト記録の十九連敗を前に、どこかへ逃亡したんじゃないかと思ってか?」

軽く睨むと、甲斐がばつの悪そうな表情で肩をすくめた。

「監督が試合を投げ出すわけがないだろうが」

「ですよね。でも、どうしてこんな所へ? ここってうさぎ島って言われてる所ですよね、女子や子どもに人気の」

「……急用ができたんだ。それよりおまえ、どうしておれがここにいるとわかったんだ?」

「ホテル前で客待ちしていたタクシーの運転手に聞き込みをしたら、今朝、勝俣監督を乗せたって人がいて。それでその運転手に頼んでここまで連れてきてもらったんです」

甲斐が指差す方向を見ると、見覚えのある黄色いタクシーが停まっていた。雄二は早足でまっすぐタクシーに向かっていく。

「おれはあの車で球場に戻る。おまえも乗ってくか」

「いいんですか」

「どうせ同じ方向だ。それより、『勝俣、試合前逃亡』のスクープが抜けなくて、残念だったな」

「いや、いいです。明日は『南郷ロイヤルズ、連敗十八でストップ! 復活の狼煙(のろし)!』をどーんと一面でやりますから」

雄二たちが近づくと、タクシー運転手が後部座席のドアを開けた。運転手は一瞬だけ驚いた顔をしたが、「マツダスタジアムまで行ってくれ」と告げると、速やかに車を発進させた。

雄二はさっきからずっと、車の窓の外に目を向けていた。朝の柔らかなものとは違う針のように尖った光が、海面に差し込んでいるのが見える。うさぎ島がどんどん小さくなっていくのを、窓越しに見つめながら、ふと疑問に思った。

──いまからだと、十一時四十分のに乗れますよ。それに乗れば十二時前に忠海港に到着するから、ぎりぎり間に合うでしょう。

パナマ帽の男が、雄二に向かって口にした言葉が、いまになってやけに引っ掛かる。

──ぎりぎり間に合うでしょう。 

もしや男は、雄二が何に間に合いたいのか、知っていたのではないか。

いや、知っていたのだ。男は雄二が十四時からのデイゲームに間に合わなくてはいけないことを、わかっていた。初めから勝俣雄二だと気づいていて、人参が詰まった容器を手に話しかけてきたに違いない。

おれを励ますために……。

鳩尾の辺りから、愉快な気持ちが涌いてきて、思わず「ハハッ」と笑い声が口から漏れた。助手席に座っていた甲斐が、「監督、どうしたんすか?」と驚愕の表情で後部座席を振り返る。

そういえば敗戦が続いてからというもの、記者にはもちろん、選手にも笑顔を見せることをしなくなった。眉間に深くしわを刻み、腕を組み、いつも怒ったような顔をしていた。

今日は選手たちに、笑顔で話しかけてみるか。

青い海を眺めながらそんなことを考えていると、熱い興奮がじくり、久々に血管を巡ってくる。

よし、今日こそ連敗を止めてやる。 

決して諦めない、うさぎの走りを見せてやろう。

タクシーは、国道185号線を西に向かって走っていく。

国道の左前方に、海を背にした竹原火力発電所が見えてくると、

「運転手さん、発電所の前を通る時はスピードを緩めてくれ」

雄二は窓を全開にして、海側から吹いてくる風を浴びた。

※この作品は、フィクションです。登場する人物や団体は、実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

周囲約4kmの小島に500羽以上のうさぎがいる。
西方寺の観音堂である普明閣は、舞台にもなっている。
竹鶴酒造は、日本のウイスキーの父と呼ばれる竹鶴政孝の生家。
忠海港に到着するフェリー(標高266mの黒滝山から)。
新1号機は、世界最高水準の環境性能を誇る。
竹原火力発電所の運転センタービル。
制御室では、24時間体制で設備を監視している。
排ガスから硫黄酸化物を取り除く乾式排煙脱硫装置。
竹原火力発電所の揚炭桟橋。石炭船が着岸し、石炭を陸揚げする。
揚炭桟橋からベルトコンベアで運ばれた石炭が貯蔵された貯炭場。
ボイラへ送る水を余分な蒸気で加熱。熱の有効利用が進められている。
新1号機の発電機とタービン。高温・高圧の蒸気を使用し、発電効率が向上。
新1号機の制御機器室。

所在地:広島県竹原市忠海長浜
発電所出力:合計 1,300,000kW
運転開始: 1983年3月(3号機)
2020年6月(新1号機)

Focus on SCENE ミニ登山で楽しむ瀬戸内の多島美

黒滝山は標高266m。古来、潮待ちの港として知られた忠海町(広島県竹原市)のシンボル的存在で、駐車場のある中腹から山頂までは約30分で登れる小さな山だ。山頂からの眺めはまさに絶景で、“うさぎの島”として有名な大久野島や芸予諸島、遠く四国連山までを一望することができる。登山道には多くの観音石仏が設置され、お手軽な西国三十三所霊場巡りも。

文/豊岡 昭彦

写真 / かくた みほ

PROFILE

藤岡 陽子 ふじおか ようこ

報知新聞社にスポーツ記者として勤務した後、タンザニアに留学。帰国後、看護師資格を取得。2009年、『いつまでも白い羽根』で作家に。最新刊は『空にピース』(幻冬舎)。その他の著書に『満天のゴール』、『おしょりん』など。京都在住。2021年、『メイド・イン京都』(朝日新聞出版)で第9回京都本大賞を受賞。