遠州三山風鈴まつり(静岡県袋井市)
小島 なお

「音のソノリティ」を詠む

手をあわせ願うあなたは髪そよぐ夏の一個の風鈴となり

歌人 小島 なお

きろん、きろん、かろん。しゃらしゃら。風が吹くと風鈴が涼しく響き渡り、短冊が裏表と翻る。

毎年夏になると、静岡県袋井市にある3つの寺で遠州三山風鈴まつりが行われる。法多山尊永寺(はったさんそんえいじ)、医王山油山寺(いおうざんゆさんじ)、萬松山可睡斎(ばんしょうざんかすいさい)は、いずれも千年余の歴史を誇る名刹。尊永寺は約1,000個の願掛け風鈴、油山寺は約50個の南部風鈴、可睡斎は約2,000個の江戸風鈴と、それぞれに趣の異なる風鈴を飾り付けて参拝者を出迎えてくれる。

風鈴の由来は、寺院の本堂や仏塔などの四方の軒先に吊るされた厄除け・魔除けの「風鐸(ふうたく)」という鐘にあると言われる。当時、強い風は悪い神を運んでくると考えられていた。

風鈴の透明な響きは、時間や距離を超えてずっと遠くにいる人の祈りを運んでくる。

※「音のソノリティ」第891回放映(遠州三山風鈴まつり)を観て詠んでいただいたものです。J-POWERグループは、静岡県で佐久間ダム・発電所、佐久間周波数変換所などを運営しています。

法多山尊永寺の風鈴まつり。風鈴の起源となった風鐸は青銅製で大きな音がしたが、江戸時代にガラス製の風鈴が登場。涼やかな音が庶民に愛され、夏の風物詩となった。
写真:イメージマート

PROFILE

こじま なお

東京都出身。NHK Eテレ「NHK短歌」選者。2004年、角川短歌賞受賞。2007年、第一歌集『乱反射』により現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞受賞。2020年4月、第三歌集『展開図』刊行。居合道三段。

音のソノリティ 世界でたった一つの音

J-POWER は、首都圏などで放送中のミニ枠テレビ番組「音のソノリティ~世界でたった一つの音~」を提供しています。「ソノリティ」とは、フランス語の音楽用語で「鳴り響き」の意味。日本の自然風景から、その場所でしか聞くことのできない音を紹介しています。

日本テレビ系列 毎週日曜日 20 :54 ~ など /BS日テレ 毎週水曜日 20 : 54 ~ (再放送)