自由市場で勝ち抜くための高効率ガス火力発電所
アメリカ合衆国 Vol.2
ジャクソン火力発電所

Global J-POWER ―世界とともに―

ジャクソン火力発電所
アメリカ合衆国Vol.2

価格競争力のある最新鋭ガス火力

煙突の右に見えるのは排熱回収ボイラー。ガスタービンを回した排ガスの熱を使って水蒸気をつくる。
建設現場に搬入される蒸気タービン(右)と発電機(左)。

2022年5月4日、米国イリノイ州シカゴ郊外で、J-POWERの米国市場における累計12件目となるジャクソン火力発電所が商業運転を開始した。同プロジェクトは、19年6月に着工。コロナ禍で工事が困難な中にもかかわらず、概ね当初の計画通り、順調な進捗で建設を完了した。このプロジェクトを担当したJ-POWER USAエンジニアリング担当副社長(当時)の田嶋陵さんに話を聞いた(現在は帰国し、エネルギー計画部戦略室室長代理)。

「ジャクソン火力発電所は、最新鋭のガスコンバインドサイクル発電(ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式)を導入した、発電効率がよく、CO2排出量の少ない発電所です。電力の大需要地であるシカゴ都市圏(米国第3の都市)に立地しているため、高い稼働率が期待できます」

こうした特徴に加え、ジャクソン火力発電所の立地にはユニークな点がある。それは既設のエルウッド火力発電所(J-POWERが07年から運営参画)の隣地に建設されたこと。エルウッドも同じガス火力であるため、ガスパイプラインの共有や人員の融通、研修など、様々なコラボレーションが想定される。

「当初パイプラインは、別途引く予定でしたが、エルウッドの更新工事も同時期に重なったため、同じパイプラインを共有しました。3つのガス供給元からパイプラインを引いており、3つの中から随時競争力のあるものを選ぶことができます」

自由化が進んだ米国の電力市場では、日々電力価格が変動するため、そうした厳しい市場で「高い価格競争力の維持を目指している」と田嶋さんは語る。

さらに、発電所の運転・保守をエルウッドと同じ専門会社NAESへ委託したところ、J-POWERをよく知るエリアマネジャーから、これまでの良好な関係性をもとに、現地のスタッフ募集やチームづくりへの力強い協力を得ることができた。

2台の発電プラントが並ぶジャクソン火力発電所。
整然とモニターが並ぶコントロールルーム。

スタッフとの信頼関係を構築する努力

順調に進行したように見えるプロジェクトだが、実際には多くのトラブルや困難があったそうだ。

「新しく採用した米国人スタッフと仕事の進め方で意見が合わず最初は対立もしました。しかし、お互いに納得がいくまで話し合ったことで信頼関係が構築でき、その後は米国人のカウンターパートなどと対峙する際に間に立ってくれて、プロジェクトを順調に進めるのに一役買ってくれました」

さらに、2台ある変圧器の輸送時に1台が壊れてしまったが、予備を1台注文しておいたことが幸いし、スケジュール通りに工事を進めることができた。

「変圧器は製造に1年半かかるものなので、事前に予備を注文しておいたのは幸運でしたね」

プロジェクトの推進で濃密な5年間を過ごした田嶋さんは、プライベートも充実していたようだ。「息子が加入した野球チームを通じて、各地への遠征やホームパーティーなど、普段のアメリカの人たちと交流したことが貴重な体験になった」と語る。

日本に戻ったこれからは「米国で培った経験を再生可能エネルギーや水素発電などの分野で活かしていきたい」と話してくれた。

左から2番目が田嶋さん。現地でともに働いたスタッフとともに。
J-POWER USA社内でのミーティングの様子。
米国時代の田嶋さん。J-POWER USA社内で。
ガスタービンは日本企業の製品。
ご子息の野球チームとアイオワ州を訪ねた際の写真。映画『フィールド・オブ・ドリームス』のロケ地で撮影。