高野山の六角経蔵(和歌山県高野町)
小島 なお

「音のソノリティ」を詠む

六角の一面ごとのこの世界回せば出会うわたしとわたし

歌人 小島 なお

ごろごろごろ。きるる、きるる。蔵の大輪が軋みながら重々しく回転する。

和歌山県高野町。空海(弘法大師)が開いた仏教の聖地・高野山。境内の片隅に、古めかしくも美しい経蔵(きょうぞう)が建っている。経蔵とは経典を納めるための蔵のこと。蔵の形が六角柱であることから六角経蔵と呼ばれている。

平安時代、鳥羽法皇の后であった美福門院が法皇の菩提を弔(とむら)うため、浄写された一切経を納めるのに建てたのが六角経蔵の始まりという。火災により幾たびもの再建を繰り返し、現存の経蔵は1934年(昭和9年)に建てられた。

経蔵の基壇のあたりに押すための把手が付いていて、経蔵全体を回すことができる。時計回りに一周すると納められたお経を一度読んだ時と同じ徳を得ると言われているそう。

ひと回りした後に見える世界は果たして。

※「音のソノリティ」第877回放映(高野山の六角経蔵)を観て詠んでいただいたものです。J-POWERグループは、和歌山県で十津川第二発電所・二津野ダム、七色発電所・七色ダムなどを運営しています。

現在の六角経蔵は鉄筋コンクリート造りで、高さは約19.7m。大人の男性でも1人で回すには結構な力が必要だ。
写真:アフロ

PROFILE

こじま なお

東京都出身。NHK Eテレ「NHK短歌」選者。2004年、角川短歌賞受賞。2007年、第一歌集『乱反射』により現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞受賞。2020年4月、第三歌集『展開図』刊行。居合道三段。

音のソノリティ 世界でたった一つの音

J-POWER は、首都圏などで放送中のミニ枠テレビ番組「音のソノリティ~世界でたった一つの音~」を提供しています。「ソノリティ」とは、フランス語の音楽用語で「鳴り響き」の意味。日本の自然風景から、その場所でしか聞くことのできない音を紹介しています。

日本テレビ系列 毎週日曜日 20 :54 ~ など /BS日テレ 毎週水曜日 20 : 54 ~ (再放送)