水素社会実現への試みに挑戦できる喜びを感じています。

POWER PEOPLE

GENESIS 松島計画

「最優先プロジェクトとして、火力技術室の全員で取り組んでいます」

そう語るのはJ-POWER入社13年目の高栁宜孝(たかやなぎのぶたか)さん。最優先プロジェクトというのは、長崎県西海市にある松島火力発電所2号機(出力50万kW)に、新たに石炭ガス化設備を付加する「GENESIS 松島計画」だ。

「当社は、2002年度から北九州の若松研究所で、『EAGLEプロジェクト』として酸素吹石炭ガス化技術の研究を続けてきました。石炭をガス化して高効率発電を行うだけでなく、CO2の分離・回収技術と組み合わせて、カーボンニュートラルの切り札とされるCO2フリー水素の製造も実現できる技術です」

J-POWERは、中国電力株式会社と共同で大崎クールジェンプロジェクト(※)を立ち上げ、16年度から広島県大崎上島町にて同技術の実証実験を行ってきた。GENESIS 松島計画は、その成果を初めて商用化するものだ。

「既存の石炭火力発電所に、石炭ガス化設備を新たに組み合わせ、発電効率や出力調整能力といった既存発電所の価値を向上させる『アップサイクル』を行う構想です。将来的なCO2フリー水素発電へと繋がる新技術を付加するもので、そこに至るまでのトランジション技術として、非常に有用であると思っています」

本計画は24年に着工、26年度運転開始を目指している。

「J-POWERは、2050年のカーボンニュートラルと水素社会実現を目指す『J-POWER "BLUE MISSION 2050"』を掲げていますが、その第一歩を標すことができる喜びを感じています」

※ 本プロジェクトは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業です。

取材・文/豊岡 昭彦 写真/斎藤 泉

松島火力発電所は、日本初の海外炭専焼発電所。1981年運転開始。最大出力50万kW×2基。石炭は主にオーストラリア、インドネシアなどから輸入している。
J-POWER若松研究所にある石炭ガス化の実験炉。
松島火力発電所の軽油移送設備。ガス化炉やガスタービンに軽油を送る設備が増設される。
広島県大崎クールジェンにあるCO2分離・回収装置。
火力技術室で打ち合わせをする高栁さん。既存のボイラ関係設備の改造検討などを担当している。

PROFILE

J-POWER
火力エネルギー部火力技術室
高栁 宜孝