日々是鍛錬――中学時代の塾の標語
新川 帆立

Power Of Words 私の好きな言葉

小説家 新川 帆立

宝島社主催の第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した『元彼の遺言状』で作家デビュー。その続編『倒産続きの彼女』と合わせて50万部突破の快進撃で、今、大注目の小説家・新川帆立さん。中学生の頃、通っていた塾で目にした言葉が心の支えだ。
「中学まで過ごした宮崎はのどかなところで、当時の私は刺激が足りなくて退屈だと感じていました。県外の学校に進学したいと思い、毎日、勉強を頑張っていました」
自分の欲しいものを手にいれるためには、地道な努力が必要――。その思いは、小説家となった今も、変わらない。
「何かが欲しい、何かをしたいと、自ら積極的に求めている姿は人として美しく、いいものだと思います」
確かに、社会に出ると、他人の都合や周りとの関係の中でやらなければならないことが多くなり、自分が本当は何をしたいのか、心の欲するものが見えづらくなりがちだ。だからこそ、『元彼の遺言状』の主人公が放つ「欲しいものは何が何でも欲しい、それが人間ってものでしょ」というセリフは、真っ直ぐに読者の心に刺さるのだろう。
ただし、体力の限界を無視するようにがむしゃらに頑張るのは違うと考えている。
「私自身、忙しさのあまり、睡眠時間を削ったり、食事を抜いたりしているうちに、だんだん心がすさんできて、勝手に悩み始めてしまったことがありました。でも、ぐっすり寝たら、気持ちがスッキリ回復。体が元気なら、心もイキイキするし、頭もちゃんと働くのだと実感しました」
最近は、朝の散歩で体と心の調子を整えている新川さん。
作家としての幅を広げ、いつかファンタジー作品を書きたいという夢に向かって、日々鍛錬を続けている。

取材・文/ひだい ますみ 写真/宝島社提供

PROFILE

小説家 新川 帆立

しんかわ・ほたて
1991年生まれ。アメリカ合衆国テキサス州ダラス出身、宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部卒業。元弁護士。プロ雀士の活動経験あり。2020年10月、著書『元彼の遺言状』で宝島社主催の第19回『このミステリーがすごい!』大賞受賞。最新刊は『倒産続きの彼女』(宝島社)。