三瀧寺の秋(広島県広島市)
小島 なお
「音のソノリティ」を詠む
瀧のなかに秋の無限が落ちてゆく 水はいま目と耳をひらいて
歌人 小島 なお
だだだ、ざらざらざら、どーどー。さわさわ、ちちちち。滝を流れ落ちる水が境内で小川となり、濁音から軽やかな音へ変化してゆく。
広島県広島市。中心部にほど近い山の中腹にある三瀧寺(みたきでら)。その名の通り境内には3つの滝が流れている。梵音之瀧(ぼんおんのたき)、駒ヶ瀧(こまがたき)、幽明之瀧(ゆうめいのたき)。滝ごとに高さや水量が違うため、水音もすこしずつ違う。やがて小川になるまでの水の響きの変化に耳を澄ます。
平安時代に空海(弘法大師)によって創建されたという三瀧寺。境内にある多宝塔は原爆犠牲者の霊を弔うため、1951年に和歌山県広八幡神社から移築されたもの。県の重要文化財に指定されている。また、滝の水は毎夏に開催される平和記念式典の献水として使用される。
同寺院は秋には紅葉の名所としても知られる。目も耳も秋のただなかに遊ばせたい。
※ 「音のソノリティ」第857回放映を観て詠んでいただいたものです。J-POWERグループは、広島県竹原市で竹原火力発電所を運営しているほか、同県大崎上島で中国電力株式会社と共同で大崎クールジェンプロジェクト(NEDO助成事業)を進めています。
原爆の爆心地から約3kmにある三瀧寺だが、山の谷部分に位置しているため、被害が少なく、救護所として使用された。
写真:kohei Ito / PIXTA
PROFILE
こじま なお
東京都出身。NHK Eテレ「NHK短歌」選者。2004年、角川短歌賞受賞。2007年、第一歌集『乱反射』により現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞受賞。2020年4月、第三歌集『展開図』刊行。居合道三段。
音のソノリティ 世界でたった一つの音
J-POWER は、首都圏などで放送中のミニ枠テレビ番組「音のソノリティ~世界でたった一つの音~」を提供しています。「ソノリティ」とは、フランス語の音楽用語で「鳴り響き」の意味。日本の自然風景から、その場所でしか聞くことのできない音を紹介しています。
日本テレビ系列 毎週日曜日 20 :54 ~ など /BS日テレ 毎週水曜日 20 : 54 ~ (再放送)