殿ヶ谷戸庭園の鹿おどし(東京都国分寺市)

「音のソノリティ」を詠む

はつなつの水音近く寄りながらすずしくひらく鹿の聴覚

歌人 小島 なお

ちろりりりりりり、がろっ。柔らかい水音の連なりを軽やかな硬い音が区切る。
東京都国分寺市。国分寺崖線(通称ハケ)と呼ばれる段丘崖と豊富な湧き水を活かしてつくられた殿ヶ谷戸庭園。その一角に竹筒でつくられた鹿おどしのすずしい音がひびく。江戸時代、田畑を荒らす鹿や猪を追い払う農具として考案されたことから「鹿おどし」の名が付いた。威嚇のための音に対して、人々が風流を感じるようになり、次第に全国の庭園に広まっていった。
国分寺崖線からしみ出す湧き水は、古くは「次郎弁天の清水」と信仰され、縄文人もその水を飲んだと言われているそう。現在は、東京の名湧水57選にも選ばれている。
人よりもはるかに長い時間を流れている水。縄文人が手に掬った感触、鹿や猪の耳が聞いた音を遠く想像する。

※ 「音のソノリティ」第832回放映(殿ヶ谷戸庭園の鹿おどし)を観て詠んでいただいたものです。J-POWERグループは東京都内に本店を構えるほか、送電線などを運営しています。

殿ヶ谷戸庭園は、三菱財閥岩崎家の元別邸、現在は東京都立の庭園になっている。 写真:山梨将典/アフロ

PROFILE

こじま なお

東京都出身。NHK Eテレ「NHK短歌」選者。2004年、角川短歌賞受賞。2007年、第一歌集『乱反射』により現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞受賞。2020年4月、第三歌集『展開図』刊行。居合道三段。

音のソノリティ 世界でたった一つの音

J-POWERは、首都圏などで放送中のミニ枠テレビ番組「音のソノリティ~世界でたった一つの音~」を提供しています。「ソノリティ」とは、フランス語の音楽用語で「鳴り響き」の意味。日本の自然風景から、その場所でしか聞くことのできない音を紹介しています。

日本テレビ系列 毎週日曜日 20 :54 ~ など /BS日テレ 毎週水曜日 20 : 54 ~ (再放送)