環境負荷の少ない高効率なガス火力発電所を建設

海外コンサルティングヒストリー

ケラマサン火力発電所拡張事業
インドネシア共和国

完成したケラマサン火力発電所

環境に優しい高効率発電所の建設

インドネシア国は、1万7,000以上もの島からなる世界最大の群島国家だ。人口は世界4位の2億7,000万人を超える。経済成長率は、年平均5%を超えていたため、首都のあるジャワ島だけでなく、今回紹介するスマトラ島でも電力需要は常に逼迫した状況だった。
J-POWERはこれまで同国で34件のコンサルティング事業を行ってきたが、今回は日本の円借款事業として参加したケラマサン火力発電所拡張事業について紹介する。
同プロジェクトは、同国最大の島であるスマトラ島にある人口150万人(当時)のパレンバン市郊外に、自国産の天然ガスを利用した高効率の火力発電所を建設する案件。同プロジェクトに電気機械担当のコンサルタントとして参加したJ-POWER国際営業部技術室の目黒光一さんにお話を聞いた。
「この案件は、既存の発電所の隣地に高効率のコンバインドサイクル発電設備(4万kW×2)を増設するものでした。同エリアに電力を安定供給するとともに、高効率発電技術の導入による環境負荷軽減の効果もあるものです」
日本からは電力会社としてJ-POWERと中部電力株式会社が参加。J-POWERは4人の技術者を派遣した。工事は2008~13年の約6年間。当初は、ジャワ島にある首都ジャカルタの事務所で基本設計の作成、入札図書の作成、工事発注などの業務を行い、工事が始まってからは事務所をパレンバンに移し、工事や試運転の立ち会いを含む施工監理業務を行った。
目黒さんにとって感慨深かったのは、インドネシアは目黒さんの祖父が第2次世界大戦中に陸軍の部隊として参加し、奇跡的に生きて帰還したということを聞いていた国であったことだ。
「日本に対する反発もあるかと不安だったのですが、現地の方は思った以上に気さくな人が多く、とても親日的でした」

工事現場の隣地に立つ古いケラマサン火力発電所の建屋。プロジェクトは、この発電所の増設工事という位置づけ。
変圧器の据え付け工事の様子。
発電所に冷却水を引き込むための取水口の川周辺。
2012年8月頃の土木工事の様子。

完成は遅れるも無事故が最大の誇り

実際の業務は、同国政府からの要望もあり、技術移転を目的としてローカル企業のスタッフと2人1組のチームを組んだ。
「カウンターパートは優秀な方で、私が日本に帰国している間も仕事をこなしてくれ、仕事は比較的順調でした。ただ、途上国ではよくあることですが、工事の準備段階ではスケジュールが遅れていました。決定権者が不明確なことと、建築部材が高騰し、入札を何度もくり返したことが原因です」
さらに、世界最大のイスラム教国家であるため、ラマダンの時期に入ると、多くの業務がストップしてしまったという。
「何よりよかったのは、安全第一で工事を進めた結果、重大事故が1件もなかったことです」
完成すると、現地の人々がとても喜んでくれたことも印象的だった。経済成長著しい同国に電力安定供給で貢献できたに違いない。

クライアントであるインドネシア電力公社との打ち合わせ。
蒸気タービン据え付け工事。蒸気タービンとガスタービンは日本製。コンバインドサイクル発電は、ガスタービンの運転時に発生する排気ガスを回収し、その熱で蒸気を生成、その蒸気によって蒸気タービンを運転させるもの。
現地のスタッフと。中央が目黒さん。スタッフとは主に英語でコミュニケーションを取った。
新設された変電設備。