世界初の褐炭水素プロジェクトを最先端技術で支えています。

POWER PEOPLE

J-POWER 豪州褐炭水素プロジェクト
オーストラリア国ビクトリア州ラトロブバレー

実証試験プラントの前に立つ富岡真彦さん。手にしたボトルに褐炭由来の高純度水素が詰めてある。

脱炭素社会への切り札と期待される「CO2フリー水素」。自動車燃料や産業用途、発電などでの利用計画が推し進められる中で、普及の足かせになっているのが水素製造のコスト高と供給・流通体制の未整備だ。
そうした弱点を克服し、水素社会実現への試金石となるのが、今、オーストラリア国南東部ビクトリア州で進行中の「CO2フリー水素サプライチェーン実証試験」である。未利用の褐炭が多く埋蔵されている現地で、世界最先端の「石炭ガス化技術」を用いて水素を製造。それを液化して専用輸送船で日本へ運び、安価で安定供給が可能な水素サプライチェーンを築くための壮大な試みといえる。
「J-POWERはプロジェクトの要である『褐炭ガス化・水素精製』を担っています。石炭に比べて水分や不純物が多い褐炭から、高純度水素を生成して供給する試みは世界初。石炭火力発電の高効率化やCO2排出量削減に成果を上げている当社の“石炭ガス化技術”の蓄積が、水素エネルギー活用の道を拓きつつあるのです」
石炭火力の運転現場勤務から研究所を経て2年前に現地へ赴任した富岡真彦さんは、褐炭水素プロジェクトにうってつけの人財だ。現在の実証試験プラントで技術とノウハウを確立した先には、褐炭の燃焼時に生じるCO2の回収・貯留工程と合わせて、CO2フリーとみなされる「ブルー水素」の製造も見据えている。
「あらゆる課題をクリアし、水素サプライチェーンに実装する商用機の運転開始は2030年が目標。その達成をこの目で見届けたいですね」

取材・文/内田 孝

プラントの心臓部である褐炭ガス化炉。褐炭に酸素と熱を加えて蒸し焼きにし、発生した一酸化炭素ガスと水蒸気を反応させて水素を生成する。
粉砕した褐炭をガス化炉に供給する配管をチェックしている。
純度99.999%以上の水素を安定製造するため、プラント運転中も適切な指示を出す。
ガス生成設備を点検する富岡さん。画面右側には高純度水素の精製設備が見える。
協力会社のオペレーターらと、設定するパラメーターについて議論を重ねる。

PROFILE

J-POWERラトロブバレー社
富岡 真彦