スリランカ国最大規模の水力発電所を建設
海外コンサルティングヒストリー
アッパーコトマレ水力発電計画
スリランカ民主社会主義共和国
辺鄙(へんぴ)な場所に6年間の長期駐在
“インド洋の真珠”とも言われるスリランカ国は、セイロン紅茶の産地としても有名な島国。だが、日本人には、第2次大戦後のサンフランシスコ講和会議において、後のジャヤワルダナ大統領(当時蔵相)がセイロン代表として、「憎悪は憎悪によって止むことなく、愛によって止む」という仏陀の言葉を引用し、日本の分割統治や過酷な賠償に反対してくれたことを記憶に留めなければいけない……、そう語るのが今回話を聞いたJ-POWER国際営業部技術室担当部長 庵理文(いおりまさふみ)さんだ。
庵さんは2009年から15年まで、現地に駐在し、日本の政府開発援助で同国最後の大型水力発電事業と言われるアッパーコトマレ水力発電所の建設に従事した。このプロジェクトは、同国最大都市コロンボから東に約140km、車で4時間の場所にあるマハヴェリ河支流コトマレ川に15万kWの流れ込み式水力発電所を建設するもの。
庵さんが赴任した当時は、まだ内戦が続いていてテロによる爆発音を聞いたこともあったというが、建設現場は山間部にあり、周囲には茶畑のほかには何もないような平穏な場所だった。J-POWERからは常時10人程度が派遣されていたが、発電機などの電気機械担当は庵さんだけだったため、仕事は忙しかったという。
「海外での水力建設工事は、新しい技術にも触れられるし、やりがいもあって仕事自体は楽しかった。ただ、電気機械担当の場合、世界各国(日本、ヨーロッパ、東南アジア等々)で製造される機器の工場立ち会い試験等のために出張が多く、現場を留守にしてローカルのエンジニアに現場の施工管理を任せざるを得ない状況だったのが大変であった」
クライアントであるセイロン電力庁のカウンターパートが優秀な人で、仕事はやりやすく、家族づきあいもあり、公私にわたって非常に親しくなったという。
約7.5%の電力を賄い、安定供給に貢献
「住居は、雨漏りしたり、虫が出たりするようなところ。また、周囲に商店もない場所で、買い物をするのにも車で2時間以上かかるような場所だったので、妻と2人で監禁生活を送っているような感じでした」
月に2回はコロンボまで片道4時間かけて買い出しに行ったが、休日には国内の観光地を回る余裕もあった。
「スリランカは風光明媚な場所が多く、休日にはビーチリゾートなどに遠出しました」
発電所は、12年には運転開始。その後、水車の異常振動の対応で3年間駐在が続いたが、運転には支障がないことをしっかりと確認することができた。同発電所は現在も順調に稼働しており、設備出力としてスリランカ国の約7.5%の電力を賄い、同国の電力安定供給に貢献している。