『水の一滴は血の一滴』を胸に刻み、高効率取水システムに挑んでいます。

POWER PEOPLE

J-POWER 水力発電部水力土木室

2018年11月、高効率取水システムの運用を開始した檜枝岐(ひのえまた)渓流取水設備(福島県南会津郡)。

純国産のCO2フリーエネルギーであり、また電源多様化が進むなかで調整役としても優位性が注目される水力発電。半面、大規模開発に適した地点は国内にほぼ残っていないため、現有の設備をいかにして最適化し、効率よく運用していくかが水力の切実な課題となっている。主要発電設備を更新して発電量自体を増強するリパワリング、河川維持流量や取水設備からの落差利用など未利用水力資源の最大活用のほかに、取水システムの効率を高めて、水量を増やし、総発電量を増やす試みにも挑んでいる。
「水力発電所の水源は、周辺の上流域に渓流取水設備を設けて、別水系からもダム湖に取水する場合があります。中には10以上の取水設備を持つ発電所もあり、他流域も含めて集めた水を認可取水量の上限内で、余さず無駄なく使い切るための監視・運用システムのICT(情報通信技術)化を推進しています」
入社9年目、水力一筋に現場と本社などで揉まれてきた西峰寛行さんは、いまや高効率取水システムのエキスパート。携帯電波も届かず、冬季は足を踏み入れられない地点にあるダムや設備をつなぎ、自動制御を可能にするネットワークづくりは困難を極める分、やりがいもあるという。
そんな西峰さんは、水力発電の長い歴史の中で語り継がれた「水の一滴は血の一滴」を胸に刻む。
「いま眼前にあるものは先人たちの血と汗の結晶。それを忘れず、同時にICTなども活用し、省ける手間は極力省き、人は考えることに注力できるようにしたいと考えています」

取材・文/内田 孝

檜枝岐渓流取水設備を上空から撮影。ここで取水した河川水を流域変更により下流域にある大津岐発電所など5発電所に供給する。
制御用動力ケーブルの敷設状況。
高効率取水システムの「司令塔」ともいえる自動制御装置。下の操作盤で制御設定を変更することもできる。
自動制御装置の異常や故障を検出し、対応が必要であれば通知する装置。

PROFILE

J-POWER水力発電部水力土木室
西峰 寛行