辛子蓮根作り(熊本県熊本市)
小島 なお
「音のソノリティ」を詠む
蓮根の穴をふさいであたたかし黄色の点るからし蓮根
歌人 小島 なお
ちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷ。たぷたぷたぷ。蓮根の穴が埋まってゆくにつれて重みのある音へ微妙に変化するのがわかる。
熊本県熊本市、「森からし蓮根」は辛子蓮根発祥の店である。奥から聞えてくるのは、和辛子粉を混ぜた麦みそを、茹でた蓮根の穴に一本一本手作業で詰めてゆく音だ。
辛子蓮根の歴史は江戸時代まで遡る。1632年(寛永9年)、先祖の平五郎が病弱だった熊本藩初代藩主細川忠利に栄養食として献上したのが起源とされている。明治以降は熊本の郷土料理として庶民にも親しまれている。
夏場は1日3,000本を製造しており、年末の繁忙期には1日中フル稼働で1万本に達することもあるそう。
熟練の手つきによって奏でられるリズミカルな音は長く続く伝統の音である。
※ 「音のソノリティ」第797回放映(辛子蓮根作り)を観て詠んでいただいたものです。
江戸時代、辛子蓮根は門外不出で、お殿様しか食べられない食品だった。
写真:かくた みほ
J-POWERグループは熊本県で、阿蘇にしはらウィンドファーム・阿蘇おぐにウィンドファーム(風力発電所)を運営しています。
PROFILE
こじま なお
東京都出身。NHK Eテレ「NHK短歌」選者。2004年、角川短歌賞受賞。2007年、第一歌集『乱反射』により現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞受賞。2020年4月、第三歌集『展開図』刊行。居合道二段。
音のソノリティ 世界でたった一つの音
J-POWERは、首都圏などで放送中のミニ枠テレビ番組「音のソノリティ~世界でたった一つの音~」を提供しています。「ソノリティ」とは、フランス語の音楽用語で「鳴り響き」の意味。日本の自然風景から、その場所でしか聞くことのできない音を紹介しています。
日本テレビ系列 毎週日曜日 20 :54 ~ など /BS日テレ 毎週水曜日 20 : 54 ~ (再放送)