カンボジア国への政府開発援助 小水力建設で貢献

海外コンサルティングヒストリー

ラタナキリ州小水力発電所建設・改修計画
カンボジア王国

オチュム第1ダム・発電所

地方都市での発電所建設

カンボジア国は、1991年の内戦終結以降、順調な経済成長を続けているが、電力系統が整備されておらず、小規模ディーゼルで発電している場合がほとんど。首都周辺での電化率は80%を超えるが、地方での電化率は10%台に留まっている。今回は同国への政府開発援助(ODA)の無償資金協力事業で小規模水力発電所を建設・改修した事例を紹介する。
発電所を建設したのは、ベトナム、ラオスと国境を接する同国北東部のラタナキリ州。農業を主要産業とする人口約15万人の州で、当時の電化率は16%程度、州全体の電力供給量の約80%はベトナムからの輸入だった。
本案件に参加したJ-POWER国際営業部技術室の土屋栄二さんに話を聞いた。
「初めて当地を訪れた2008年頃は道路事情が悪く、プノンペンから州都バンルンまで2日がかり、特にバンルン近郊は1車線の未舗装でドライバーも嫌がるほどの悪路でした」
プロジェクトは既存の二つのダムを利用し、一つの発電所を新規で建設、もう一つは老朽化した発電機器類を一括更新するもの。
「オチュム第1ダムには発電設備がなかったので、取水口、水圧鉄管、発電所を新設。一方、下流の既設オチュム第2発電所は、定格960kWに対して水車等の老朽化により820kWの出力しか出ない状況だったため、水車、発電機、制御盤などの機器をすべて更新しました」

オチュム第1発電所での水車据付作業(新設265kW×1台)。

生活も施工監理もすべて順調

プロジェクトは13年4月にスタート。J-POWERはバンルン市内のホテルに宿泊し、一室を事務所とし、そこから現場まで通ったという。
「カンボジア国は、かつてほかの業務経験があったことや現地にも来訪歴があり知見はありましたが、今までは首都滞在がメインであったために地方での生活面に不安はありました。ホテルにレストランがなく、食事はすべて外食でしたが、幸運にもイタリアンが食べられ、英語も通じ米ドルが利用できたのも幸運でした」
カンボジアの人たちとの関係はどうだったのだろうか。
「カンボジア国は仏教国で、人柄ものんびりしているし仕事や生活面においても居心地が良い国でした。中でもクライアントであるカンボジア電力公社は非常に協力的で多方面にわたりサポートを得ました。ただ運転開始に向かって後半は休みなし、プノンペンへの往復1,000㎞の車移動が一般道で苦労しました」
二つの発電所は15年3月には完成し、その後は保守管理等の業務を実施してプロジェクトは同年11月に完了した。
「カンボジアは気候も良く、また新たなプロジェクトがあればぜひ参加したい国です。これらの発電所の完成によって同国の電力の安定供給に少なからず貢献し、経済・社会および両国の友好の発展に寄与できたと思っています」

オチュム第2発電所の水車発電機はすべて更新した(設備更新480kW×2台)。
日本の無償援助により建設されたと記されたオチュム第2発電所の記念碑。
オチュム第1ダムの取水塔前で関係者に状況を説明する土屋さん。
オチュム第1ダムに新設した取水塔。
バンルン市内の様子。州都といっても空が広い。
起工式にはカンボジア政府高官や日本大使館の関係者も参加した。
カンボジア電力公社との打ち合わせ風景。写真右前が土屋さん。