ベトナム国の経済成長を支えた石炭火力発電所建設

海外コンサルティングヒストリー

ギソン1火力発電所計画
ベトナム社会主義共和国

ギソン1火力発電所

ベトナム国でのODAプロジェクト

J-POWERは、ベトナム国で1993年以降、水力発電や石炭火力発電など合わせて、これまでに全27件のコンサルティング事業を展開してきたが、今回はその中から「ギソン1火力発電所計画」について紹介する。
ギソン1火力発電所は、同国の首都ハノイ市から南西に約350kmに位置するタインホア省ギソン地区に計画された。ベトナム国は、1995年7月の米国との国交正常化以来、経済成長が加速、それに伴い、逼迫した電力問題を解消するため計画されたのが本プロジェクト。J-POWERはベトナム電力公社(EVN)からの依頼で、2001年に建設計画を立案、実施可能性調査などを行い、07年に日越円借款実施案件(ODA)として調印、08年にEVNとの間で技術的コンサルタント契約を締結した。
本件に08年から関わった山田一之さん(現インドネシアBPI出向中)に話を聞いた。
「ギソン地区には石油化学のコンビナートもあり、工業団地も造成される予定だったので、そのインフラ整備という意味もありました」
同発電所は、同国北部で産出する無煙炭を燃料とする、総出力60万kW(30万kW×2基)の発電所。無煙炭は、通常20%を超える石炭の揮発分が数%しかなく、技術的に燃焼が非常に難しい石炭だが、J-POWERは以前、同国の別案件での良好な実績があったことから、EVNの信頼が厚かった。

ギソン1火力発電所の揚炭バース。アンローダー(揚炭機)で運搬船から石炭を降ろす。
貯炭場にはカマボコのような屋根がある。

2年間の単身赴任も有意義に

J-POWERからは10人が数週間ごとに日本とベトナムを行き来する出張ベースで、業務に当たった。山田さんはプロジェクトマネジャー代理として、主に施工監理や運転支援などの業務を行った。コミュニケーションも良好で、工事工程も順調に進んでいたが、土木工事がほぼ完了し、機械電気工事が最盛期となった段階で品質管理・安全管理上での問題が多発、その対応に苦慮した。さらに試運転段階で、無煙炭を使用する上での問題の解決に時間を要したという。特に今回のコンサルティング契約(アドバイザー契約)では、直接現場に指示できず、契約当事者であるEVNを通じての作業にもどかしさはあったようだ。
これら安全の問題およびプロジェクトの状況に伴い、13年7月から15年7月までの約2年間、山田さんは単身現地に駐在することになった。
「ベトナムの人たちは親日的で、レストランで1人で食事をしていても、『一緒に食べましょう』と誘われたり、家に遊びに行くほど仲良くなった人もいます」
多くの友人ができ、2年があっという間だったと山田さんは語る。
その後ベトナムは、ASEANの中堅国として目覚ましい経済発展を遂げているが、その一助となったことは間違いない。

試運転時の打ち合わせ風景。無煙炭ゆえの問題が多発した。山田さんは写真右。
日本製のタービン、発電機。
土木工事終了時の集合写真。前列右が山田さん。
建設中の発電所建屋。
発電所の食堂で。「ベトナム料理は日本人にも食べやすい」と山田さん。
フランス統治時代の教会。ニンビン省にあるファッジエム大聖堂。
大小3000の奇岩群で有名なハロン湾。写真は中でも有名な闘鶏島。