スリリングな環境で成し遂げたアンデス山脈の水力発電計画

海外コンサルティングヒストリー

ユンカン水力発電プロジェクト
ペルー共和国

ウアジャマーヨ取水ダム

アンデス山中の水力発電所建設

J-POWERは、その経験と知見を活かし、海外の発展途上国などで数多くのコンサルティング事業を展開してきた。今回は、ペルー共和国でこれまで行った14件のコンサルティング事業のうち、代表的案件である「ユンカン水力発電プロジェクト」について紹介する。
同プロジェクトは、同国の首都リマ市の北東約220kmの地点に建設された水力発電所で、アマゾン川の支流ウアチョン川とパウカルタンボ川の水を利用し、出力13万kWの発電を行うもので、日本の円借款により建設された。
同プロジェクトを2002年6月~2005年8月の3年2カ月間担当したJ-POWER国際営業部の赤池広康部長代理に話を聞いた。
「首都リマから建設現場への移動は、車で7時間かかりました。標高4,800mのアンデス山脈の峠を越えたり、アマゾン川流域の未舗装の道を走るので、この移動が一番大変でした。年に何度も転落事故が起こるような場所です。また、建設が始まる少し前までは極左ゲリラの支配地域だったので、ペルー軍と警察に護衛してもらいながらの移動でした」
と、赤池さんはその大変さを語る。
赤池さんの仕事は主に取水ダムと水路トンネルの施工監理で、一時は山奥のキャンプに単身留まって、20人ほどのペルー人技術者と共同生活をしながら建設作業を進めた。スタッフには英語を話せる人がほとんどいなかったため、サバイバルのために現地の公用語であるスペイン語を覚え、コミュニケーションを図った。
「大変でしたが、そのおかげで、現場の親方たちとも直接意思疎通ができるようになり、仕事の効率が上がりました」
赤池さんは、帰国後に有志を集めてスペイン語の勉強会をつくり、現在まで15年以上も活動を続けているという。

総延長20kmの導水路トンネルの工事。2台のトンネルボーリングマシーンで掘削する計画だったが、アンデスの複雑な地質に対応できず、途中で故障。爆薬を用いた掘削工法に切り替え貫通させた。
休暇を利用して、有名なインカの遺跡マチュピチュも訪問。

楽しみは日本食とダンス

現地での楽しみは、月に2回の休暇に首都リマに下り、日本食レストランに行くことや、インカの遺跡を観光すること。そのほか、現場のキャンプでは、誰かの誕生日や来客時など、宴会が開かれ、食後には必ずダンスが始まった。
「現場での仕事や生活は大変でしたが、このダンスは楽しかったです。ペルーではダンスが上手い人がモテるので、子どもの頃からダンスを練習しており、現地の人は皆上手。自分は上手ではありませんが、この現場で自分は踊ることが好きだということに気づかされました」
赤池さんが施工監理に尽力したユンカン水力発電所は、2005年の運転開始から現在まで約15年間、安定して発電、運用されてきた。
「安定した電力供給により、同国の経済成長にいくぶんかは貢献できたのではないかと思います。また、このプロジェクトにより、自分も土木技術者として成長させてもらえました」
と赤池さんは語る。

現地スタッフと。英語の話せる人はほとんどいないため、片言のスペイン語で意思疎通。努力が実を結び、意気投合した。
地元の子どもたちが毎日遊びに来るので、一緒にバレーボールを楽しんだ。
地下に設置された3基の発電機。
完成した取水ダムの前に立つ赤池さん。
※フィジビリティ=実現可能性