自然と対峙し、電気をつくる仕事は現場仕込みの経験が支えです。

POWER PEOPLE

J-POWER 高知電力所

 
奈半利川水系には上流から順に魚梁瀬ダム、久木ダム、平鍋ダム(写真)がある。

高知県の東南端、室戸岬の付け根あたりで太平洋に注ぐ奈半利川(なはりがわ)。その水系には日本屈指の降雨量と急峻な地形がもたらす豊富な水資源を活かして、3つのダム、3つの水力発電所がつくられている。いずれもJ-POWERが戦後復興期の電力需要増に応えるべく開発したもので、最下流の長山発電所は今年、運転開始60周年を迎える。
水利に恵まれた当地は一方で、よく知られた台風の通過地点でもあり、気象条件次第で刻々変化する河川の流量やダム貯水量を把握し、迅速な判断と柔軟な発電運用、ダム操作が求められる。
「昨今は局地的豪雨などの発生頻度も高まって、天気予報を注視しながら推移を見守ることがよくあります。貯水池の水位上昇につれてダム放流も視野に入れねばならなくなると、スタッフの緊張もピークに達します」
永沼諒也さんが勤務する高知電力所はこの水系のダムと発電所の運用や保守管理を一手に受け持つ。水力土木職としてキャリア7年目の永沼さんは、広範な管轄エリアを回って知見を広めながら、こうした火急の事態では、現場を熟知するスタッフの「経験」が物を言うと感じている。
「上流域の雨雲の位置を把握し、雨量予測によるダムの水位変動を見極め、下流域への影響がないかなど、瞬時に判断がつくのは長年現場に立った経験と責任感があればこそ。我々J-POWERとグループ会社が一体で業務にあたる中、所属先の如何にかかわらず、 先輩の背中を追いながら、自らの経験を重ねていきたいと考えています」

取材・文/内田 孝 写真/斎藤 泉

平鍋ダムで洪水吐ゲートの巻き上げ機をチェック。巨大なゲートを操作してダム湖の水位を制御する。
万一停電しても各設備が稼働できるよう、非常電源は二重に備えている。
奈半利川に面して立つ長山発電所。上流の平鍋ダムから水圧鉄管で送られてきた水で発電する。
永沼諒也さん。ダムの土砂管理業務も担当し、流域の河川環境の改善にも取り組んでいる。

PROFILE

J-POWER 西日本支店 高知電力所 永沼 諒也(ながぬまりょうや)