ヤブサメ(青森県むつ市)
小島 なお

「音のソノリティ」を詠む

ヤブサメのからだの内に降る雨が森を濡らせり その声は雨

歌人 小島 なお

シリリリリリリリ、シリリリリリリリ。
生い茂る草木の奥から、鈴虫に似た鳴き声が聞こえてくる。
青森県むつ市。この地には毎年夏になると繁殖のためヤブサメが渡ってくる。スズメ目ウグイス科のヤブサメは体長約11cm、羽毛は褐色で短い尾羽を持つ。とても小さくいつも林や藪の中を動き回っているので、しっかり姿を見るのは難しい。鈴を震わせたような独特の鳴き声が「藪に降る雨」と喩えられ、「藪雨」の名前が付けられたとの説も。
その細く高いさえずりの周波数は野鳥の中で最も高音の8~10kHzともいわれ、人間の聴力だと場合によっては聞き取りづらく感じられるほどだという。
夏を迎えた森に今年もまた眼に見えない声の雨が降りそそぐ。

※ 「音のソノリティ」第328回放映(ヤブサメ)を観て詠んでいただいたものです。

ヤブサメは東南アジアや台湾で越冬し、夏に日本列島に戻ってくる。J-POWERは、青森県で大間原子力発電所の建設や、風力発電所の運営、北海道と結ぶ送電線など多くの事業を手がけています。

PROFILE

こじまなお

東京都出身。2004年角川短歌賞受賞。2007年第一歌集『乱反射』により現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞受賞。2011年、第二歌集『サリンジャーは死んでしまった』刊行。居合道初段。

音のソノリティ
世界でたった一つの音

J-POWERは、首都圏などで放送中のミニ枠テレビ番組「音のソノリティ~世界でたった一つの音~」を提供しています。「ソノリティ」とは、フランス語の音楽用語で「鳴り響き」の意味。日本の自然風景から、その場所でしか聞くことのできない音を紹介しています。

日本テレビ系列 毎週日曜日20:54~など/BS日テレ 毎週水曜日20:54~(再放送)