水力大国ラオスの再開発工事に学ぶ

Global J-POWER Spot

“東南アジアのバッテリー”ラオス

PROFILE

甲木 守 Mamoru Katsuki

J-POWER 国際営業部技術室 ラオス駐在

電力で外貨を稼ぐラオス

ナムグムダムはコンクリート重力ダム。ダム堤体を削孔(穴あけ)して取水口を新設する。

ラオス国(ラオス人民民主共和国)は、東アジアを代表する大河、メコン川やその支流を有する、水資源の豊富な国だ。その包蔵水力を利用して発電を行い、その全発電量の6割以上(2015年は、全発電量165億kWhのうち、約65.7%を輸出)を隣国のタイなどに輸出して外貨を獲得、“東南アジアのバッテリー”とも呼ばれる水力発電大国だ。
現在J-POWERが日本工営、ラオスのコンサルタント企業と手掛けるナムグム第1水力発電所の拡張プロジェクトは、JICA(独立行政法人国際協力機構)の円借款事業として実施されている。同発電所は、ラオス国初の水力発電所として、1971年に日本など海外からの資金と技術援助により1~5号機が建設され、発電する電力の15万5,000kWのほぼ全量を首都圏に供給している。このプロジェクトは、同発電所に新規の取水口と発電機を増設し、発電量を4万kW増やす再開発工事だ。

工場の検査をしたスタッフと記念撮影。スタッフ間の会話は英語が基本。信頼関係を築くには「飲みニケーションも大事だ」と甲木さんは言う。
工場での検査に立ち会う甲木さん(右から3番目)。
新設する取水口の上流側に仮締切をつくる様子。

地域との融和も欠かさない

同プロジェクトにはJ-POWERの社員が2人派遣されているが、その1人、土木工事の施工監理コンサルタント(OJT研修生)である国際営業部技術室の甲木 守(かつきまもる)さんは、次のように語る。
「プロジェクト関係者との連絡などは、基本的にはすべて英語になるので、確実な情報を受発信するために適確な英語の必要性を強く感じています。また、関係者の国籍はラオス、ベトナム、フィリピンと多岐にわたり、技術的な知識や経験、感覚、感性も異なるため、情報共有や合意形成には苦労することもあります」
仕事に邁進する一方で、関係者や地域コミュニティーに溶け込む努力も行っている甲木さん。
「ラオスの人は結束が強いですが、外国人にはとてもフレンドリー。特に日本人に対してはよいイメージを持つ人が多いと思います。日本からODAを通じて多大な援助が行われていることを多くの方が認識しており、感謝と畏敬の念を持つ方が多いと感じます。地域のお祭りや新年のお祝い、関係者の結婚式などのパーティにもたくさんご招待いただきました。信頼関係の構築には、お酒を通じたコミュニケーションが欠かせないのは万国共通だと思います」
ラオス料理は辛いものが多いが、甲木さんは「焼肉やフー(米粉の麺)など、日本人の口に合うものも多いし、ビールもおいしい」と、その生活を楽しんでいる様子。
本プロジェクトは20年11月に運開予定。
「こちらで学んだ知見や経験を日本でも活かしたいと思います。また、水力発電所建設の土木技術も継承していきたいですね」

ヴィエンチャンにある戦没者慰霊の凱旋門アヌサーワリー・パトゥーサイ。
米の麺フーはラオス定番の食事。日本でベトナム料理として知られるフォーと同じもの。
ヴィエンチャン郊外にある「ワットシェンクワン寺院」(ブッダパーク)は、仏教やヒンズーの仏像が立ち並ぶ公園。