落語に乗せて「幸せの言葉」を届ける
田代 沙織

Venus Talk

なぞかけクイーン・アマチュア落語家 田代沙織

○○とかけまして、○○と解きます。その心は…?
大喜利などでおなじみの「なぞかけ」による巧みな言葉遊びと落語仕立てのあたたかな笑いで聴衆を包む「なぞかけクイーン」の田代沙織さん。
その豊かな発想の源は? 落語アイドル時代とは?
独自に話芸の道を歩む田代さんの素顔を追う。

高座では、お客さんの反応を感じながら、声の調子や強弱、テンポをつかむ。それを何度も繰り返して、少しずつ自分のネタにしていく。

落語ができるアイドル「らくドル」としてデビューし、現在「なぞかけクイーン」として活躍の幅を広げている田代沙織さん。異分野の言葉をつなぐ驚異の発想力と、持ち前の華やかな話芸が人気だ。
「落語家である父、桂歌春の影響で、幼い頃から落語は身近にありました。寝かしつけは絵本ではなく父の落語でしたし、父の稽古も、『生活音』の一部でしたから」
アマチュア落語家としてデビューしたのは学生時代。お客さんが笑ってくれたことがうれしく、その快感がやみつきになったという。プロの落語家ではないため、寄席への出演はないが、父の落語会の前座を務めたり、余一会(よいちかい)(注:各寄席で、31日にのみ(1月31日、3月31日、5月31日など)行われる特別公演。この日は、アマチュア落語家も出演できる)は高座に上がったりしている。
「子どもや女の人が登場する『桃太郎』や『たらちね』などのネタは、私もやりやすいですし、お客さんにも喜んでもらえます。しぐさや目線など、女性ならではの表現ができたらいいなと思います」
そのほか、神奈川県警の「振り込め詐欺撲滅大使」として、落語を通じて注意を呼び掛けるなど活動の幅を広げている。
「落語なら、経済や財テクなどの話題もおもしろくわかりやすくできると思うので、今、FP(ファイナンシャル・プランナー)の勉強もしています」
田代さんの好奇心は、留まるところを知らない。時事ネタのチェックはもちろん、旅行中に耳にしたバスガイドさんのトークも参考に、様々な言葉や言い回しを蓄えて「なぞかけ」の技を磨いている。
「J-POWERさんとかけまして、落語と解きます。その心は、日本の“でんとう”が光るでしょう」
「なるほど!」と唸らせる軽妙洒脱な言葉遊び。落語の素養が息づいている「なぞかけクイーン」の、今後の飛躍が楽しみである。

取材・文/ひだい ますみ 写真/竹見 脩吾

落語に欠かせないアイテムである扇子。箸や釣り竿として演技に使うほか、大喜利用の答えやヒントをこっそりメモすることも。
5月31日(金)に開催される浅草演芸ホールの余一会に出演予定。舞台袖や楽屋などに置かれる「ネタ帳」には、出演者名や演目、出演順などが記録される。

PROFILE

なぞかけクイーン・アマチュア落語家 田代沙織

たしろ さおり
1984年、東京都生まれ。落語家桂歌春の娘として、幼い頃から落語に親しみながら育つ。学生落語選手権に出場し、アマチュア落語家デビュー。その後、世界初の落語のできるアイドル「らくドル」、タレントとして活動。テレビやラジオでも活躍中。