現場をリアルに再現した環境で個人の力量に応じた研修を。

POWER PEOPLE

J-POWER 若松総合事業所 火力研修センター(福岡県北九州市)

 

上の写真は、発電所の司令塔ともいうべき制御室のように見えるが、実はそうではない。これは運転訓練シミュレーターで、研修生が習熟訓練に臨む。手前インストラクター席と逐一応答を交わし、プラントの起動や停止、トラブル対応などの訓練シナリオに沿ってトレーニングを進めるのだ。
J-POWERの石炭火力発電所は計7カ所。各地点に設備仕様や機器構成の異なるプラントが複数あるため、実機を忠実に模したシミュレーターを揃えて、研修生が通常勤務と同じような環境で訓練できるようにしてある。
「技術職員は順次ここで研修を受け、オペレーター資格取得を目指すとともに応用力を身に付けます。運転技能に加えて技術管理、保守管理と内容は広範に及び、設備機器等の技術革新も急であるため、研修生を支える我々も必死の思いで勉強しています」
そう言いながら、インストラクターの冨永謙市さんが広げた年間予定表には、様々な部門・習熟度別の研修計画が約140件。これを可能にしているのは運営スタッフの創意工夫と、他に類例を見ない設備群の充実だ。
一方、別棟の研修室ではJ-POWERグループの火力・原子力技術系新入社員66名がプラント運転などの基礎を勉強中だった。3週間に及ぶ日程修了後、彼らは各部署に配属され、次代を担うエンジニアへと歩み始める。
「私自身、人に教える立場になって自分の未熟さに気づき、学びの大切さを痛感しました。後輩たちから『漠然としかわからなかったことがやっと理解できました』と言われると、頑張り甲斐があったと嬉しくなります」

取材・文/内田 孝 写真/斎藤 泉

火力研修センターのインストラクターは、各発電所での実務経験が豊富で研修担当などを務めた人の中から選抜されるという。
新人研修では、発電所運営に必要な基礎知識・技能や安全衛生面の心構えなどを授ける。
ここで使ったテキストは現場配属後の研修生にも必携の書だ。
訓練の合間にインストラクターらが寸暇を惜しんで打ち合わせ。
運転訓練用シミュレーターのひとつ「磯子1号型」は大型スクリーンを採用したマウスオペレーションが特徴的だ。

PROFILE

J-POWER若松総合事業所
火力研修センター
冨永 謙市