うちぬき
小島 なお

「音のソノリティ」を詠む

うちぬきの水のひびきを聴きながら耳もまた春のしろい井泉(せいせん)

歌人 小島 なお

とぷん、ちろちろ、ざざんざ。街のあちらからこちらから聞こえる大小の水音。
愛媛県西条市。この一帯は石鎚山系から流れ出る加茂川の伏流水が集まり、「水の都」と呼ばれるほど地下水の豊富な場所。その地下水を利用した自噴井「うちぬき」が市内のいたるところにあって、水音を響かせているのだ。
もともとは江戸時代に人力で鉄の棒を地面に打ち込み、中に竹を入れ自噴井をつくったのが始まりだという。石に穿った小さな穴から湧くもの、岩の囲いから勢いよく噴き出すもの、パイプ管を通して蛇口の形につくられたものも。街の人はペットボトルに水を汲んだり、夏場には顔を洗ったりする。
「うちぬき」の水、音、存在そのものが西条市ののどかな空気と暮らしにながくながく寄り添っている。

※ 「音のソノリティ」第693回放映(うちぬき)を観て詠んでいただいたものです。

西条市には約3,000本の「うちぬき」が点在すると言われる。
写真:四国フォトサービス/アフロ

J-POWERは、愛媛県で南愛媛風力発電所を運営している。

PROFILE

こじま なお

東京都出身。2004年角川短歌賞受賞。2007年第一歌集「乱反射」により現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞受賞。2011年第二歌集「サリンジャーは死んでしまった」刊行。居合道初段。

音のソノリティ 世界でたった一つの音

J-POWERは、首都圏などで放送中のミニ枠テレビ番組「音のソノリティ~世界でたった一つの音~」を提供しています。「ソノリティ」とは、フランス語の音楽用語で「鳴り響き」の意味。日本の自然風景から、その場所でしか聞くことのできない音を紹介しています。

日本テレビ系列 毎週日曜日 20 :54 ~ など /BS日テレ 毎週水曜日 20 : 54 ~ (再放送)