石炭が滞りなく送られてこそ、電気を安定供給できるのです。

POWER PEOPLE

J-POWER 松浦火力発電所(長崎県松浦市)

 

出力200万kWの松浦火力発電所でフル運転をするには、燃料の石炭が1年間で約445万トン必要になる。遠く海外から輸送された石炭を揚炭桟橋で陸揚げし、広大な貯炭場へ移して保管。山積みの石炭は順繰りにボイラーへ送られて電気を起こす。この一連の流れを管理し、発電所を止めないことが燃料担当の職分だ。
「現場は生き物のように毎日変わります。臨機応変に対応し、大勢のスタッフをミスリードせぬよう瞬時に決断することも大事。事務職としては例外的に現場にいる時間が長く、貯炭場だけでなく燃焼後の灰の処理も受け持つので、人には『黒くなったり、白くなったりする仕事』と説明します」
そう語るのは、1995年入社で松浦火力が6番目の任地という里野洋史さん。ここが初任地の若手社員と2人、所内各部署や協力会社などと連携して綿密な燃料計画を立案しつつ、輸送トラブルや自然災害といった不測の事態にも備えを怠らない毎日だ。
「万が一にも燃料切れを起こせば発電所の停止を余儀なくされます。また、石炭を燃やしたあとに出る灰はセメント材などとしてリサイクルしますが、その積み出しが滞っても運転に支障をきたしかねません」
石炭の流れを川上から川下まで見通して、決して滞らせてはならないという緊張感。それが仕事のモチベーションになり、世の中に役立っているというやりがいにもつながる。そんな里野さんが充実感に浸る瞬間とは?
「発電機の出力表示に1号、2号とも『100』と出ている時。フル運転中が職務遂行の何よりの証ですから」

取材・文/内田 孝 写真/斎藤 泉

貯炭場は24時間体制でモニター監視しているが、現場に出向いて五感でチェックすることも重要だ。
揚炭桟橋に回り、石炭船(左側)から急ピッチで進む揚炭作業を巡視する。
石炭船の船倉からアンローダー(青い筒の部分)で石炭を掻き出している。
野積みされた石炭の山に散水機で水をかけるのは、粉じんの飛散を防ぐため。
発電グループの会議。燃料炭の運用が計画通りに進むことが電力安定供給の前提となる。

PROFILE

J-POWER
松浦火力発電所
里野 洋史