猫ちぐら作り(新潟県関川村)
小島 なお

「音のソノリティ」を詠む

さらさらとお米の夢を見てた藁いまゆわゆわと猫と眠れる

歌人 小島 なお

ニギリニギリ、シュッ。ニギリニギリ、シュッシュッ。束ねた藁をねじりながら柔らかい外縁のカーブに沿わせていく。

猫の寝床、猫ちぐらは新潟県関川村に古くから伝わる民芸品。一つひとつ手づくりで、約1週間かけてできあがる。昔から農家では幼児を入れるちぐら(藁製ゆりかご)をつくっており、それを模して猫ちぐらがつくられるようになったのだという。しなやかさのあるコシヒカリの稲藁(いなわら)を使うことで、夏は涼しく冬は暖かく、狭い場所を好む猫に快適な仕上がりになる。

かつて実りの重みを秋風の中に支えていた稲藁。さらさらとうつくしいお米は、豊かな繁栄の夢だったはずだ。収穫されて役目を終えた藁は今、人の手によって猫ちぐらとなった。秋風にそよぐ夢の余韻と、柔らかい猫の眠りの安らぎの中で。

※「音のソノリティ」第1024回放映「猫ちぐら作り」を観て詠んでいただいたものです。J-POWERグループは、新潟県で奥只見ダム・発電所、奥清津発電所、奥清津第二発電所などを運営しています。

関川村では、猫好きの豪農のために使用人が猫ちぐらをつくったのが始まりとされている。

PROFILE

こじま なお

東京都出身。2004年、角川短歌賞受賞。2007年、第一歌集『乱反射』により現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞受賞。2020年4月、第三歌集『展開図』刊行。居合道三段。

音のソノリティ 世界でたった一つの音

J-POWER は、首都圏などで放送中のミニ枠テレビ番組「音のソノリティ~世界でたった一つの音~」を提供しています。「ソノリティ」とは、フランス語の音楽用語で「鳴り響き」の意味。日本の自然風景から、その場所でしか聞くことのできない音を紹介しています。

日本テレビ系列 毎週日曜日 20 :54 ~ など /BS日テレ 毎週水曜日 22 : 27 ~ (再放送)