女子野球発展のために
里 綾実
Venus Talk
女子野球選手 里 綾実
侍ジャパン女子代表として活躍する里 綾実選手。
男子に交じってプレーした小・中学時代、スランプに悩んだ高校時代を経て日本代表に選出され、今も世界の舞台で活躍中だ。
野球への思いとは? 未来に届けたいメッセージとは?
里選手の素顔に迫る。
取材・文/ひだい ますみ
写真/竹見 脩吾
女子野球選手・里 綾実さんが野球を始めたのは、4歳年上の兄の影響だった。負けず嫌いで、年上の男の子たちに挑むのが楽しく、コントロール良く投げたときの満足感もあり、野球に夢中になった。
中学時代は紅一点、男子部員に交じり野球部でプレーしたが、高校進学時にはこのまま野球を続けるか、それとも実業団を目指せるソフトボールに競技を変更するか悩んだという。そんな里さんを励ましたのは母だった。
「母は実業団のバレーボール選手だったので、『好きなことをやらないで後悔してほしくない』と背中を押してくれました」
といっても、選手生活は、順風満帆ではなかった。高校時代には、イップス(投球ができなくなってしまう症状)を経験し、スランプに悩んだ。
「野球は、技術や体力も大切ですが、メンタルの強さも重要です。今でも、試合前は体の調子や動きを確かめ、不安を一つずつ消していきます」
まず、軽いランニングで体全体を動かし、次にボールを握る。特に違和感なし。さらに、キャッチボール、投球練習を通して、冷静に心を整えていく。
「試合では、自分を出し切るだけです。日本代表チームでも、緊張でガチガチになっている若いチームメイトに、ふだんのプレーができるように声をかけています」
選手として、次のワールドカップで4度目のMVPを狙う里さん。女子野球普及のイベントにも注力している。女子野球の未来のために。里さんの熱い挑戦は続く。
PROFILE
女子野球選手 里 綾実
さと・あやみ
1989年、鹿児島県生まれ。小学校3年生から野球を始め、神村学園高校に進学。尚美学園大学3年生時に、女子野球日本代表に選出。2013~2019年、女子プロ野球リーグに所属し、数々のタイトルを受賞。現在、埼玉西武ライオンズ・レディースに所属、侍ジャパン女子代表としてプレーを続けている。2021年、一般社団法人「野球はみんなのスポーツ」を設立し、女子野球の普及に精力的に活動している。