石炭炭鉱の経営に参画し電力安定供給に貢献
オーストラリア Vol. 2
J-POWERオーストラリア 炭鉱投資

Global J-POWER ―世界とともに―

J-POWER Australia Pty. Ltd.
オーストラリア

ナラブライ炭鉱の夕暮れ。

電力の安定供給のために

クイーンズランド州にあるクレアモント炭鉱。露天掘りで採炭している。
ニューサウスウェールズ州にあるモールス・クリーク炭鉱。
宮尾さんがインターンを行ったナラブライ炭鉱の事務所。

1970年代の2度にわたるオイルショック以降、エネルギー源の多様化が強く求められるなかで、J-POWERは国内初となる海外炭を燃料とする大規模石炭火力発電所の建設に取り組み、1981年に松島火力発電所の運転を開始した。

海外から石炭を安定的に調達するために1981年に設立されたのがJ-POWERのオーストラリア現地法人「J-POWER Australia Pty. Ltd.」(以下、JPA社)だ。以来、JPA社は、合計5カ所(うち1カ所は2012年に終掘、他1カ所は2011年に売却)の炭鉱に投資し、40年以上にわたって日本に石炭を供給してきた。オーストラリアの石炭は、不純物が少なく高カロリーな高品位炭であることが特長で、価格も比較的リーズナブルだ。同国の石炭輸出量は世界2位。その最大の輸出先は日本となっている。

2021年4月から3年間、JPA社に出向し、炭鉱投資管理を担当した宮尾明日香さん(現・土木建築部)にお話を聞いた。

「JPA社は現在、クレアモント、ナラブライ、モールス・クリークの炭鉱権益を保有し、その管理を行っています。クレアモントとモーリス・クリークは地表から掘り進めて石炭層を直接掘る露天掘りという採掘法で、一方、ナラブライはトンネルを掘って石炭層だけを掘る坑内掘りを行っています。露天掘りのほうが簡単なようですが、雨が降ると作業が止まることもあり、どちらの効率がいいかは一概には言えません」

さらに、採掘した石炭を港まで輸送するロジスティックスも重要だ。雨期がある同国では洪水で鉄道が停まってしまうこともある。

「サイクロンや山火事、洪水などへの対策が必要になることもあるため、採炭場所から港までの天気情報を頻繁にチェックしておくことが重要です」

採炭現場のインターンで感じた責任

モールス・クリーク炭鉱を視察する宮尾さん。
シドニーにあるJPA社で。宮尾さんは左から2番目。
インターン中の宮尾さん。

宮尾さんは、約1カ月間、ナラブライ炭鉱でインターンとして働いた経験を持つ。

「私以外は日本人がいない環境でした。石炭の採掘は24時間体制で行われていますが、現場にいると、この目の前の石炭が鉄道で港まで運ばれ、それが日本に行って電気になり、工場や家庭に運ばれるという実感が湧いてきました。そして石炭の供給が止まったら日本の電力の安定供給もできないと、責任も強く感じました」

石炭火力はCO2の排出量が多いと、運転に反対する人も多い。だが、エネルギー資源の約9割を輸入している日本ではまだしばらくは必要だと宮尾さんは語る。

「再生可能エネルギーや水素などの新エネルギーで日本の電力をまかなえるようになるまでには、まだしばらく時間がかかります。その間の橋渡し役として、電力の安定供給や電気料金の安定化のためには、石炭火力を使うことが必要だと思います」

石油や天然ガスの産地が集中する中東エリアの政情不安が続く中で、日本にとってオーストラリア産の石炭の重要性はさらに高まっている。

ナラブライ炭鉱の周囲は牧場が広がっている。
ナラブライ炭鉱の貯炭場。採掘された石炭は、ベルトコンベアで地上に運ばれる。