タイ国工業団地内のガス発電所をタイトなスケジュールでリプレース
タイ王国 Vol.4
ラヨンEGCOコジェネレーション発電所

Global J-POWER ―世界とともに―

EGCO Cogeneration Power Plant
タイ王国 Vol.4

工業団地内にあるガス火力発電所

発電所の全景。
工事用の電気を受電する前に開かれたミーティングの様子。
タイ語で「イチカワ」と表示したヘルメット。シールで手づくり。
新設のガスタービンに初点火する様子。

ラヨンEGCOコジェネレーション発電所は、J-POWERがタイ国で出資しているSPP(小規模発電事業者:Small Power Producer)の1つだ。同国最大の民間発電事業者であるEGCO社と共同で運営しているが、2024年1月27日で既存設備の電力供給契約(PPA)が満了を迎えることから、これに合わせて発電設備を新設する工事が行われている。J-POWERの現地法人で、このリプレース(更新)工事を担当する市川憲章さんにお話を聞いた。

「ラヨンEGCOコジェネレーション発電所は、首都バンコクの東南約200kmにあるラヨン工業団地内にあるガス火力発電所です。ガスと蒸気の2つのタービンで発電するガスコンバインドサイクルを採用し、工業団地を中心とした周辺企業に電力と水蒸気を提供し、残りの電力をタイ電力公社(EGAT)に販売しています」

新設の発電所は、同じ敷地内に建設、採水設備や管理事務所などは既存の設備を活用しつつ、ガスタービン1基と水蒸気タービン1基を新設する。新設発電所の出力は7.4万kWで、EGATに3万kW、周辺企業に4.4万kWを、さらに工業団地内のアパレル工場には蒸気も供給する。

市川さんは2021年10月にタイ国に赴任、工事開始から管理業務に従事している。

「工事の進捗状況を正確に把握し、工程管理することが主な仕事です。現場でのミーティングがすべてタイ語で行われるため、ミーティング前後に英語の通じる担当者との打ち合わせが欠かせません」

工事現場に日本人は市川さん一人。あとはほとんどがタイ人のため、市川さんはまず自分を知ってもらうため、タイ語で「イチカワ」という文字のシールをつくり、ヘルメットに貼り付けた。これにより発電所を歩いていると声を掛けられることが増え、食事やスポーツ活動に誘われることもあるという。

「信頼関係が仕事に好循環を与えると思います」

一日の遅れも許されない運転開始

新設のガスタービン。右から吸気し、ガスタービンを回し、発生した熱で蒸気をつくり蒸気タービンを回す。左のタワーは廃熱回収ボイラーと煙突。
EGCO社の社員との交流会。バンコク郊外のゴルフ場で。市川さんは右端。
バンコクから発電所までのロードサイドでドリアンを初めて食べた市川さん。

今回の工事で最も困難と思われるのが、既存設備と新規設備との運転切り替え。既存設備の運転停止は、EGATとの契約で決まっているため、新設がうまく稼働しないからといって、延長することはできない。この綱渡りのような状況に気を揉む市川さんだが、タイの人たちは焦る様子がないという。

個人差はあるものの、タイの人特有の「マイペンライ(大丈夫、気にしないで)」精神で、比較的のんびりした対応になることがあるためだ。

「うまくいかないことがあると急いで原因を究明しないといけないと思い、焦ることもありますが、『マイペンライ』精神に救われることもあります」

取材した2023年10月には、設備はほぼ完成。ガスタービンの火入れも無事終了し、これから試運転が始まる。単身赴任中でホテル住まいの市川さん。週末は家族とオンライン電話で話すので、思ったほど淋しくはないと語る。

「運転開始直後はトラブルが起きやすいので、保守管理を徹底し、安定的な運転に努めたいと思います」

J-POWER Generation社の社員旅行。プーケットの空港で。