はんぎりの音(新潟県佐渡市)
小島 なお
「音のソノリティ」を詠む
200年時間の渦を漕ぎながらかきまぜながらゆくたらい舟
歌人 小島 なお
カオ、カオ、ギイ。カオ、カオ、ギイ。木のやわらかく軋む音が入り江を渡る。
新潟県佐渡市宿根木(しゅくねぎ)。たらい舟が磯をゆっくりと漕いでゆく。大樽を半分に切って作ったことから「はんぎり」と呼ばれる。
およそ200年前の地震で海面が隆起し、周辺の地形が複雑化。ワカメ、アワビ、サザエなどの貝類や海藻類が豊富な磯場となった。狭く入りくんだ岩礁(がんしょう)が多い海岸をゆくのに小回りのきくたらい舟が考案されたという。
たらい舟は、杉や竹などの水に強い素材でつくられていて、杉は濡れると膨張してしっかりと密着し水漏れしない。現在でも水中メガネ片手にサザエを採る磯ねぎ漁に利用されている一方で、観光客用のたらい舟も人気だ。
櫂を左右に漕ぐゆったりとした音のリズムが凪いだ海に心地よく聞こえる。
※「音のソノリティ」第945回放映(はんぎりの音)を観て詠んでいただいたものです。J-POWERグループは、新潟県で奥只見ダム・発電所や奥清津発電所、奥清津第二発電所などを運営しています。

写真:バドインターナショナル/アフロ

PROFILE
こじま なお
東京都出身。NHK Eテレ「NHK短歌」選者。2004年、角川短歌賞受賞。2007年、第一歌集『乱反射』により現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞受賞。2020年4月、第三歌集『展開図』刊行。居合道三段。
音のソノリティ 世界でたった一つの音
J-POWER は、首都圏などで放送中のミニ枠テレビ番組「音のソノリティ~世界でたった一つの音~」を提供しています。「ソノリティ」とは、フランス語の音楽用語で「鳴り響き」の意味。日本の自然風景から、その場所でしか聞くことのできない音を紹介しています。
日本テレビ系列 毎週日曜日 20 :54 ~ など /BS日テレ 毎週水曜日 22 : 27 ~ (再放送)