ペットボトルに新たな価値を
本間 ますみ

Venus Talk

ペットボトルアーティスト 本間 ますみ

原材料は、使用されたペットボトル。
独自の手法で動植物などを精密につくり上げ、壮大なジオラマ作品などを制作するペットボトルアーティストの本間ますみさん。
一目見た瞬間、感動を覚えずにはいられない「ペットボトル ソフィストケイティド アート」とは。

取材・文/ひだい ますみ
写真/竹見 脩吾



1970年代に登場し、今や身近な存在となったペットボトル。それだけを材料とし、接着剤や塗料などは使用せずにオリジナルのアート作品を制作しているのが、本間ますみさんだ。

「ペットボトルは再生資源ですが、ポイ捨ても多いのが現状です。それを防ぐには、ペットボトルの価値を上げるべきだと考えました」

ペットボトルが見る人を感動させる「アート」として再生されれば、「ポイ捨てはやめよう」という心が自然に芽生えるのではないか。

本間さんは、水族館や博物館の設計に関わった経験をはじめ、生態系や地質学、ビオトープなどの知識もフル活用して、ペットボトルによる壮大なジオラマをつくり上げた。これが、「ペットボトルソフィストケイティド アート」だ。

「毎回、展示地域の気候や風土、植生などを調べて、これが初お披露目ですというものを加えています」

沖縄県では、ヘゴヤシやヤンバルクイナを加え、山形県では、夏の風物詩・トビウオを登場させた。その精密、かつ実物大の風景には、誰もが目を奪われる。

今年、ふるさとの新潟県佐渡島にアトリエを移す本間さん。今後、作品を展示したり、ワークショップを行ったりする個人美術館を作ろうと考えている。

作品を残し、次代へとバトンを渡す。本間さんの活動は佐渡の人々にも良き刺激となり、ふるさとの未来につながっていくに違いない。

山形県での展示に合わせて制作したトビウオ。生のトビウオから形態を写し取ってモデリングする。
ホテル雅叙園東京「和の明かり×百段階段2023」の展示。作品自体には色がないが、ライトアップによって幻想的な表現になる。
生の魚やはく製などにビニールを貼って形をトレースして、立体の展開図をつくり、それをペットボトルに写す。
はんだごてで400℃の熱を加える。ペットボトルを熱によって溶着し成形する方法は、本間さんが独自に考案したもの。

PROFILE

ペットボトルアーティスト 本間 ますみ

ほんま・ますみ
新潟県生まれ。1992年、女子美術大学絵画科卒業・同研究科2年修了。2006年、ペットボトル ソフィストケイティド アート制作を開始。池袋サンシャイン水族館にてコラボ展が話題を呼び、テレビ、新聞など各メディアに取り上げられた。個展、東北復興支援作品など地道な創作活動に取り組む一方、ホテル・駅等、大型商業施設、アミューズメント施設各所などでは大型作品を多数出品。2012年、日本ホビー大賞 奨励賞受賞。