電力ネットワークの安定に発電と揚水の二刀流で貢献。

POWER PEOPLE

佐久間電力所・新豊根発電所(愛知県北設楽郡豊根村)

通常の水力発電は、ダム貯水池(上池)の水が落下する力で水車を回し、電気を起こす。この水車を余った電気で逆回転させ、下池の水を上池に汲みあげておき、任意のタイミングで再び電気をつくるのが揚水発電。

揚水発電は当初、需要の少ない深夜の電力を使って揚水し、日中の需要増に備えて発電量を増やす役割を期待された。しかし今では、太陽光や風力などの再生可能エネルギー(再エネ)の利用が急拡大する中で、自然条件によって供給量が不安定になる再エネの弱点を補う“蓄電システム”として脚光を浴びている。

「新豊根発電所では、広大で水量も豊富な下池の佐久間貯水池と、小ぶりで水量が少ない上池の新豊根貯水池との間で、有効落差203mを活かした揚水発電を行っています。11分ほどで揚水できるので電力需給のこまめな調整にも適しています」

一帯を管轄する佐久間電力所で、森近真也さんは運用設備の停止業務を担当する。発電機などの設備群は定期点検や補修のために運転を止める必要があり、その停止期間を短くし、即応体制を維持できる作業計画をやり繰りする気遣いの多い仕事だ。

「当発電所は、50Hz圏と60Hz圏の境界に立地し、双方の電気をつくり分けて供給しています。電力ネットワークの安定のため一時も気が抜けません」

昨年、運転開始50年を迎えた新豊根発電所は機能向上を前提にした設備更新などの課題も抱える。

「『佐久間魂』を持ってグループ一体となり、速やかな対応を心がけて設備の信頼度を高めていきます」

取材・文/内田 孝 写真/吉田 敬

新豊根発電所では5台の発電機を使い分けて50Hzと60Hzの両系統へ電力供給を行っている。
水車への流水を油圧制御する入口弁。発電時には左から右へ、揚水時には右から左へと水が送られる。
足下の水車が生み出す力を、上層の発電機に伝える主軸。揚水時はこれを逆回転させる。
発電/治水の両立、50Hz/60Hzの振り分け、発電/揚水の切り替えなど業務範囲は多岐にわたる。
先輩から教わった「発電所に愛情を持つこと」が森近さんの信条だ。

PROFILE

J-POWER中部支店 佐久間電力所
課長代理
森近 真也

※ 取材時