新時代の扉を開ける着物の匠

Venus Talk

染匠 藤井友子

華やかな色彩と繊細な絵柄が美しい京友禅。染匠・藤井友子さんは、その企画から仕上がりまで着物づくりのすべてを統括している。その一方で、京友禅の生地を活かした独自のものづくりにも取り組む。伝統産業への思いとは? 仕事への情熱とは?染匠として奮闘する藤井さんの人生を追う。

多彩な色を使いながらも、上品ではんなりとした京友禅。花鳥風月や典雅な模様がちりばめられた優美な着物は、江戸の昔から女性の心をとらえて離さない。
そんな京友禅を手掛ける家業を継ぎ、染匠として活躍しているのが藤井友子さん。
「布地に直接絵を描くように模様を描いて染め出す“手描き”の技法は、京友禅の特長の一つです。振袖のおよそ90%がインクジェットプリンターで布を染めるプリント生産の時代ですが、うちでは伝統的な“手描き”を続けています」
皇室の方々も着用する高級な着物を手掛ける父(藤井寛氏)や多くの職人の仕事を間近に見て育った、一人っ子の藤井さん。好きも嫌いもなく、この道に入ったのは自然のなりゆきだった。
「着物の業界は男社会です。職人さんは圧倒的に男性が多いし、長男が家業を継ぐのも当たり前です。でも、私は女性だからわりに自由でいられたし、新しいことにも挑戦できるのだと思います」
ターニングポイントになったのは、ビジネススクール。着物人口が減り、業界が低迷し始めた時期、視野を広げるべく通い始めた。
「従来の慣習はこのままでよいのか、世の中の流れはどうなっているのか、業界の内側からは分かりづらいのが悩みでした。スクールでは、ものづくりに携わる人々と交流でき、刺激になりました」
日常のおしゃれ着として楽しめる小紋や付け下げなどの着物をメインとした「tomihiro」ブランドの立ち上げ、バッグや名刺入れなどの制作、さらに洗える布地のプロデュース……。「ドアがあったらまず開けるタイプ」という、好奇心旺盛な藤井さん。伝統を受け継ぎつつ、新たな挑戦を続けている。

取材・文/ひだい ますみ 写真/竹見 脩吾

京友禅の生地で制作したバッグ。海外へのお土産として選ばれることも多い。
まろやかな色合いとやさしい手触りが印象的な小物入れ。気軽に手にできる和雑貨は、若い世代にも好評。
京友禅では、それぞれの工程を専門の職人が担当。藤井さんの会社では、専属の職人とともに世界観を共有して、着物づくりを行っている。

PROFILE

染匠 藤井友子

ふじい ともこ
京都府生まれ。富宏染工株式会社取締役。同志社大学大学院ビジネス研究科卒業。ビジネススクール在学中に「RITOFU」ブランドを設立。きもの制作のほか、「源氏物語千年紀匠の技継承事業」、「JAXAのきぼう利用プロジェクト『宇宙とつながる京都』研究会」への参加など、多方面で活躍。英国フィナンシャルタイムズ紙やスイス国営テレビなどで紹介されるなど、海外からも注目されている。