チーム一丸の“風車愛”が支える 北国の再生可能エネルギー開発。

POWER PEOPLE

せたな大里ウインドファーム
北海道久遠郡せたな町

牧場や牧草地などが連なる海岸丘陵の総延長約6kmにわたって風車を配置。

北海道を人の横顔とすると襟首に位置する、せたな町。古来、冷たく湿った強風「やませ」に悩まされてきたが、それをエネルギー資源と捉え直し、2004年に町自ら日本初の洋上風車2基を築いてからは一転、風力発電の里として名を馳せる。
翌05年に、瀬棚港に面してJパワーグループの「瀬棚臨海風力発電所(6基、出力1万2000kW)」が完成。その北側、海沿いの広大な丘陵地に「せたな大里ウインドファーム(16基、出力5万kW)」の建設工事が進む。19年10月には、再生可能エネルギーの普及を目指す「全国風サミットinせたな」が当地で開催された。
「真新しいウインドファームを約70名のサミット参加者にご覧いただきました。風力発電に関わりを持つ方々だけに皆さん興味津々でしたが、私としてはもう一歩踏み込んで、豊かな自然に溶け込んだ風車たちを大好きになってほしくて、敷地内の絶景ポイントまで逐一ご案内しました」
熱っぽくそう語る鷲尾朝昭さんは風力発電所の開発設計の経験を活かし現地で指揮を執る。Jパワー傘下の事業会社や発電機メーカー、施工業者などのスタッフを束ねながら、完成後の維持・管理・メンテナンスを見越して「保守のためになる気づきと提案」を自らに課していると言う。
「机上の計算に頼らず、現場をくまなく歩いて知見を得るうちに私自身、風車のある美しい景色の虜になりました。各々の専門領域で力を発揮するスタッフたちにも共通の〈風車愛〉があって、いいものをつくろうというチームの一体感を育んでいます」

取材・文/内田 孝 写真/斎藤 泉

ヘルメットには「私は安全を最優先します!」の書き込み。
風車の根元の鉄筋コンクリート基礎は幅16m。ここに高さ約80mのタワーを建て、上端のナセルに直径108mの3枚翼ロータを取り付ける。
国内最大級の風力発電機(3,200kW)16基の設置工事も仕上げ段階。運開後の使い勝手などにも配慮。
現場は風車愛に満ちたスタッフの一体感で課題を乗り越えている。

PROFILE

J-POWER 再生可能エネルギー本部 風力事業部 鷲尾 朝昭