水音は私をしろい舟に乗せ遠い昔へ運んでくれる

歌人　小島 なお

ざあああ。ごごお。しゅうう。あたり一面真っ白い湯気を立ち昇らせながら、あちこちで噴出する蒸気。
秋田県湯沢市。ここは小安峡大噴湯と呼ばれ、渓谷に切り立った岩の亀裂から、蒸気や熱湯が噴き出す世界でも珍しい地形である。遊歩道が整備され、その迫力を間近で体感することができるという。
岩の割れ方や大きさ、蒸気の量、そして噴出の勢い。これらの条件によって様々な音が生まれる。霧状の蒸気が勢いよく噴出する箇所、小さな噴水のように真上に熱湯が湧出する箇所、岩肌を滑り落ちる滝となるほど湯の嵩の多い箇所。そしてそれらの音の背景に聞こえているのは渓を流れる川の水音。
ほとばしり、揺蕩う水のエネルギーは、私たちを原初の時間へ誘ってくれる。

※ 「音のソノリティ」第752回放映（小安峡大噴湯）を観て詠んでいただいたものです。

写真：山口博之／アフロ

秋の小安峡は紅葉の名所でもある。J-POWERは他社と共同で、秋田県湯沢市で山葵沢地熱発電所を運営しています。