日本の奥深い庭園文化を正しく世界に伝えたい!
村雨 辰剛

GLOBAL EYE 日本の魅力

平安時代に流行した浄土庭園、鎌倉~室町時代に禅宗の影響を受けてつくられた枯山水、江戸時代に大名がさかんに築いた回遊式庭園……。日本庭園は時代によって、あるいは地域によって様々だが、いずれも西洋の庭園とはまったく違う思想と様式でつくられている。その根底に息づく日本特有の美意識と文化は、19世紀のパリ万博で注目の的となって以来、多くの欧米人を惹きつけてきた。
スウェーデンに生まれ、現在、日本で庭師として活躍する村雨辰剛さんも、日本庭園に魅了された一人である。中学生の頃、日本史に興味を持ったことをきっかけに日本語を勉強。来日後、何か伝統的な仕事に就きたいと模索していたとき、縁あって庭師に弟子入りしたのだった。
「日本庭園には深い美意識があるのを感じます。常に新しいもの、きれいなものを追い求める西洋とは違い、時がもたらす変化に価値を置いている点がすばらしいと思います」
人の手が入っていることを感じさせないほど見事に自然と調和している点も粋の極致であり、日本らしさであると村雨さんは絶賛する。
「親方について庭園づくりを学んでいく中で、茶道や華道などをはじめ、日本文化を深く知る必要があると実感しました。例えば、茶室には露地と呼ばれる庭が欠かせませんし、樹木の剪定のために、華道を通じてバランス感覚を磨くことが求められます。日本文化はやはり奥が深い」
不退転の決意で来日して13年目、村雨さんの心はもうすっかり日本人だ。
「日本の文化は、世界に誇るべきすばらしい文化です。私たち日本人は、その魅力をもっと世界へ伝えるべきです。それも、表面的にではなく、本質を正しく伝えなければなりません。そのために何をすべきか。まずは受け継がれてきた伝統に目を向け、学ぶことが大切だと思います」
日本文化とつながっていたいから、庭師の仕事は一生続けていきたいという村雨さん。そんな若者の奮闘を思いながら日本庭園を眺めれば、古くて新しい何かが見えてくるに違いない。

取材・文/ひだい ますみ 写真/竹見 脩吾

「ヨーロッパでは廃れた徒弟制度が日本に残っているのも、魅力的。喜び勇んで職人の世界に飛び込んだ」という村雨さん。師匠の教えを胸に刻みながら、5年後、10年後の樹格を考えて木の剪定を行っている。

PROFILE

庭師
村雨辰剛(むらさめたつまさ)

1988年、スウェーデン生まれ。中学時代、世界史の一環として日本史を学び、日本独自の美意識に感銘を受ける。19歳で日本に移住。23歳で見習い庭師となり、26歳で日本国籍を取得し、村雨辰剛に改名。現在、造園業の傍ら、2018年NHK「みんなで筋肉体操」に出演するなど、タレントとしても活動中。