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自由競争を勝ち抜くために
ジャクソン火力発電所の挑戦

プロジェクト概要

アメリカ合衆国イリノイ州、大都市シカゴから南西に50分ほど車を走らせたところにジャクソン火力発電所はある。J-POWER USAとしては初めての大型発電所開発プロジェクトとなったジャクソン火力発電所は、コロナ禍での工事ながら概ねスケジュール通りに進行し、2022年5月4日、商業運転を開始した。
最新の高効率ガスコンバインドサイクル(ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式)発電所であるジャクソン火力発電所の発電容量は1200MWを誇り、これはComEd地域(イリノイ州北部)の発電容量の約10%に相当する。また、アメリカ三大都市であるシカゴ都市圏に立地している本発電所には今後高い稼働率が期待されている。

価格競争力のある最新鋭ガス火力発電所の建設

J-POWER USAエンジニアリング担当副社長(当時)としてプロジェクトを担当した田嶋陵(現在は帰国し、エネルギー計画部戦略室室長代理)は、特別な思いで本プロジェクトに参加した。
「ジャクソン火力発電所の開発をする前に、インドネシアでプロジェクト開発の仕事をしていました。しかし建設目前になってプロジェクトが中断し、プロジェクトから離れることになりました。その時の悔しさから、自分がコントロールできることについてはベストを尽くすということ、大きな判断をするためには自分の考えを持って小さな判断と行動を積み重ねていくこと、を自分の行動の基本にすることに決めました。インドネシアでの経験から学んだことは、ジャクソンの開発で十分活かされたと思っています。」

J-POWERの米国市場における累計12件目のプロジェクトとなったジャクソン火力発電所の建設は、グリーン・フィールド案件(=草の生えた何もない土地に0から建設するプロジェクト)だった。
「これまでの自分の経験を活かせる貴重な機会でした。発電所の開発には様々な担務があり、チームの中で責任者を決めて進めるのですが、それぞれの責任者が役割を補完しながらプロジェクトが進んでいくのを実感することがやりがいでした。」

技術の責任者であった田嶋の仕事内容は、発電所の建設着工までと着工後とでは大きく異なる。着工までの期間は、発電所仕様の決定、環境許認可の取得、機器製作者の評価、プロジェクト収益性の評価といった、プロジェクトの骨格となる準備を行った。

2019年6月の着工後は、主に建設の進捗のチェックや、様々な設計変更、トラブルが起きた際の解決方法の決定などを行った。
「特に建設の初期は細かな機器の仕様や設計が決められてくるので、機械・電気・制御・土木・建築等、様々な知識をもとに判断をしていく必要がありました。」

電力の自由化が進んだアメリカの市場では、高い価格競争力を維持することが重要であり、その上でひとつ鍵となるのが高い発電効率である。
「今回ジャクソン火力発電所の建設にあたって導入した最新鋭のガスコンバインドサイクル発電は、発電効率がよく、CO2排出量の少ない発電所となりました。」

コロナ禍にあって順調に進んだように見えるプロジェクトだが、実際は多くの困難やトラブルにも直面したという。
「新しく採用した米国人スタッフと仕事の進め方で意見が合わず最初は対立もしました。しかし、お互いに納得がいくまで話し合ったことで信頼関係が構築でき、その後は米国人のカウンターパートなどと対峙する際に間に立ってくれて、プロジェクトを順調に進めるのに一役買ってくれました。」

本店と現地法人との「調整役」としてプロジェクトを支える

海外の大型発電所プロジェクトに対する出資は、一般的にはパートナーとの共同出資という形を取ることが多いが、ジャクソン火力発電所はJ-POWERが単独で出資したプロジェクトである。

国際業務部プロジェクト管理室の張浩銘は、本店側の米国事業の最前線であり、現地法人と本店間の「調整役」として機能する米国タスクの一員としてプロジェクトに参加した。
2021年に中途入社した張は、建設と運営という2つのステージに関わる財務、会計、プロジェクト管理の業務を担当した。

「建設段階での仕事内容の一例として、工事期間における現地法人の建設費支払スケジュールと合わせた本店から現地法人への送金があります。送金の金額は数百億円という規模であり、本店内においても資金の調達、送金手続きなど多くの事前準備が必要です。そのため、現地法人の担当者と本店財務部の担当者との情報共有や事前のすり合わせが不可欠で、本店側の行事、資金繰りなどを見ながら遅延なく送金を実施します。キャッシュフロー管理やプロジェクトファイナンスに関する知識を基に、逐次変わる工事の状況を正確に把握し、関係者と連携して建設をスケジュール通りに進めることが米国タスクの大きな役割です。」

また、コロナ禍での着任となった張も当初は田嶋と同じようにコミュニケーション面での苦労があったという。
「米国タスクを担当していながら、初めて現地へ訪れたのは入社してから1年半ほど経ったころでした。それまでは全てオンラインでのコミュニケーションだったため、初めは時差の問題だけでなく、現地社員との信頼関係の構築という面でも苦労しました。」

ジャクソン火力発電所が自由市場で勝ち抜くために

さまざまな社員が専門知識やノウハウを活かし、2022年5月4日に商業運転を開始した。
運転を開始後も、発電所を運営していくには多くの困難がある。
例えば米国事業の特徴として、エネルギー市場のルール改正の多さがある。大枠のルールを作ってその後修正を繰り返す傾向の強い米国の市場は、国内の発電事業とは異なるタイプのリスクがある市場といえる。
これまでの海外発電事業では、一般的に一定期間の電力販売契約(PPA)を交わし、安定な収入を確保する形が主流だったが、ジャクソン火力発電所は日々売却価格が変動する市場に電気を卸している。米国では90年代に入ってから電力の自由化が進展し、その後も様々な変化が続いており、電力市場改革先進国と言われる。電力の自由化が始まったばかり日本にとって鑑になるかと思う。現在米国電力市場に起きたことは、10年後の日本にも同じこと起こるかもしれないとよく言われており、米国事業で累積した技術上、運営上のノウハウは今後の国内事業にフィードバックできる可能性を秘めている。
そしてジャクソン火力発電所は一部権益の売却を行い、回収した資金を元に新たなプロジェクトへ投資するビジネスモデルを構築した。今後もこのビジネスモデルを基に、技術や知見を深めた上で、更なる事業拡大を図っていく。

「ジャクソン火力発電所は、投融資の金額も大きく当社の業績に対しても非常にインパクトの大きいプロジェクトです。その分建設時と運営後の資金繰り、リスク管理とプロジェクトのモニタリングは非常に重要で、挑戦的な仕事内容ですが、社会にとっても、当社の経営にとってもスケールの大きい仕事内容なのでやりがいを感じます。」(張)

「ジャクソン火力発電所の操業は、今後電源の脱化石燃料化が進む上で重要な役割を担っています。そういった場面で海外発電事業を発展させていく余地があり、米国で培った経験を再生可能エネルギーや水素発電などの分野で活かしていきたい、そう考えています。」(田嶋)

田嶋 陵

エネルギー計画部戦略室

工学研究科電子工学専攻

1997年卒業

張 浩銘

国際業務部プロジェクト管理室

経営管理研究科

2010年卒業

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