国内外に温泉文化を情報発信
山崎 まゆみ

Venus Talk

温泉エッセイスト  山崎 まゆみ

日本の温泉文化は、世界に誇る素晴らしい財産。
山崎まゆみさんは、日本各地の温泉をはじめ、世界33か国の温泉を取材し、そう確信した。
山崎さんが絶賛する「温泉文化」とは? 残すべき伝統とは?
長年、温泉文化を追究してきた山崎さんの思いに迫る。

取材・文/ひだい ますみ
写真/吉田 敬



温泉エッセイストの山崎まゆみさん。25年以上にわたり、国内外の温泉取材を続けている。

講演や取材でよく聞かれる「おすすめの温泉は?」という問いには、肌や体質、その時のメンタルなど、自分自身にジャストフィットする「マイ温泉」が一番と答えているが、印象的な温泉としては、福島県奥会津の金山町の温泉を挙げる。

「この地域は炭酸泉の宝庫。お湯はぬるめですが、炭酸ガスの効果でとても温まります」

海外の温泉なら、ハプスブルク家の保養地だったバート・イシュル(オーストリア)。ハプスブルク家最後の皇妃エリザベートが美しさを磨いたという温泉である。

現在、山崎さんは大学で観光温泉学を教える一方、日本の温泉文化をユネスコの無形文化遺産に登録する活動にも注力している。最速で2028年の登録を目指し、署名活動を進めている。

「日本では、お湯でリラックスするだけでなく、温泉街の観光や旅館でのおもてなし、温泉饅頭といったお土産など、ユニークな付加価値があります。このような文化的な昇華は、世界に類を見ません。こうした日本オリジナルの温泉文化を世界に向けて情報発信していきたいと思います」

蒸気熱を利用した調理法の地獄蒸しで有名な鉄輪(かんなわ)温泉(大分県)など、大地の恵みを活用する日本。山崎さんは、SDGsを意識した活動はもちろん、次世代を担う子どもたちにも何かアプローチできないかと考えている。

例えば、共同浴場で地域の大人が子どもたちに社会のマナーや生きる術を教え、子どもたちを見守る文化。そんな「浴育」の視点も含め、温泉文化を盛り立てる山崎さんの今後の活動に期待したい。

近著では、その温泉でしか味わえない湯や食などを紹介。旅の友にベストな一冊。
「学生は皆、真面目に学んでいます。日本の温泉文化を知り、これからの観光の現場で活躍してほしいと願っています」と山崎さん。
障がい者だった妹(故人)を温泉に連れて行きたかったという思いから、ユニバーサルデザインの温泉を積極的に紹介。松之山温泉「ひなの宿ちとせ」(新潟県)は、全館畳敷きで床暖房。利用しやすいユニバーサルデザインの客室がある。
パプアニューギニア・ラバウルの温泉。現地の人々に見守られながら(!?)入浴。温泉入浴は日本から伝わったといわれる。

PROFILE

温泉エッセイスト  山崎 まゆみ

やまざき・まゆみ
1970年、新潟県生まれ。大学卒業後、2年半のOL生活を経験、その後フリーライターへ転身。精力的に国内外の温泉取材をこなす。2008年、国土交通省・VISIT JAPAN大使に。観光庁や地方自治体の観光政策会議に有識者として多数歴任。バリアフリー温泉を積極的に紹介するなどの活動にも注力。跡見学園女子大学兼任講師(観光温泉学・観光取材学)。主な著書に『宿帳が語る昭和100年温泉で素顔を見せたあの人』 、『温泉ごはん 旅はおいしい!』、『行ってみようよ!親孝行温泉』など多数。