水力編@奥只見 教師ツアー

エコ×エネ体験ツアー水力編@奥只見 教師ツアー 2022年ツアーレポート

先生方のためのエコ×エネ体験プロジェクト 水力編@オンライン

2022年 ツアーレポート 構成図

  1. 実施概要
  2. ポイント
  3. プログラム
    • 水力発電所(岐阜県・御母衣発電所)のVR見学
    • 森の体験プログラム
    • ドクターと学ぶ「科学の実験教室」ライブ
    • 社員が語る「電力会社ここだけの話」
    • 最近のエネルギー情勢とJ-POWERの取り組み
    • 参加者セッション
  4. 参加者の声
先生方のためのエコ×エネ体験プロジェクト2022

J-POWER(電源開発)グループは長年にわたり、エネルギーと環境の共生を目指した社会貢献活動「エコ×エネ体験プロジェクト」に取り組んでいます。  2018年から始まった「先生方のためのエコ×エネ体験プロジェクト」は、エネルギーと環境のつながりに関心を持っていただくことに加え、「持続可能な開発のための教育(ESD)」やSDGsを授業の中で実践する際のヒントを見つけていただくことを目的としています。  2022年度は、昨年に引き続きオンラインでの開催となりました。

実施概要

  • 日程:2022年8月8日(月)13:00~17:00
  • 参加者数:小学校・中学校・高等学校 教師27名
  • 場所:オンラインにて開催

ポイント

  • 御母衣発電所のVR動画で、水力発電所の細部までリアルに見学!
  • 奥只見ダムとのライブ中継や、ブナの森の映像、ドクターの電気実験を通じて自然と電気の繋がりを実感!
  • J-POWER社員が自身の体験を語り、皆様の質問に答える「ここだけの話」
  • さまざまな地方や校種の先生方と一緒に行うセッションで、授業づくりのヒントを得る!

実施概要

13:00主催者挨拶・オリエンテーション

夏休みということもあり、学校からご参加いただいた先生も多い様子でした。まだ堅い表情の先生方に、アイスブレイクとしてみなさんのおうちのコンセントの数をお尋ねしました。果たして、いままで意識したことがあったでしょうか?今日は皆さん一緒にコンセントの向こう側を学びます。

主催者挨拶・オリエンテーション

13:30水力発電所(御母衣)バーチャル見学

最初のプログラムは、岐阜県の御母衣ダムの見学です。 ここからはキープ協会の“おのの”と一緒に、発電所を見学します。まずは全員で「1、2、みぼろー!」のかけ声で、岐阜県までひとっ飛び。
御母衣電力・佐々木所長の案内による360度動画では、日本最大級の「ロックフィルダム」や水力発電所の仕組み、荘川桜のエピソードの紹介がありました。
なお、この動画は、見ている人自身がマウスを操作して360度をグルグルと見ることができます。授業でお使いいただけるように先生方にプレゼントしました。

水力発電所(御母衣)バーチャル見学
水力発電所(御母衣)バーチャル見学

13:40白川郷映像体験「電気のない昔の暮らしを知ろう」

発電所を見学した後は、電気のなかった時代のエネルギーについて考えました。御母衣ダムの下流にある白川郷では、かつては薪や植物からとった油など、森から集めたエネルギーで暮らしていたそうです。昔は、エネルギーを「使う人」と「つくる人」が一緒だったという解説に、先生達が頷く様子が見えました。

白川郷映像体験「電気のない昔の暮らしを知ろう」

14:00奥只見ダムからのライブ中継

岐阜県の御母衣ダムと白川郷をバーチャル見学した後は、新潟県と福島県の県境にある奥只見に移動します。オンラインならではの大移動です。

標高約700m、森に囲まれた地にある奥只見ダムは、コンクリートの重さだけで水を支える「重力式コンクリートダム」です。ダムの前から、奥只見観光の佐藤さんと中継をつなぎ現地の様子を聞きました。
加えて、冬の奥只見の様子を映像でご紹介。3月末時点では3mの雪が残っていました。この雪が豊富な水の源になっていることがお分かりいただけたと思います。

奥只見ダムからのライブ中継
奥只見ダムからのライブ中継

14:10森の体験プログラム

ここからはいよいよ森に入っていきます。奥只見の銀山平ブナ林を、キープ協会“ぱりんこ”の案内でバーチャル散策を行いました。
森にはたくさんの木があります。ここではあらかじめ皆さんにご用意いただいた葉っぱを、ご自身でよく観察していただき「葉っぱじゃんけん」を行いました。

森の体験プログラム

森の中ではブナの木が曲がっています。豪雪地帯では雪の重さで幹が曲がってしまいます。

森の体験プログラム

14:30ドクターと学ぶ「科学の実験教室」~水力発電の仕組み、森と電気のつながり~

森(エコ)を体験した後は、エネルギー(エネ)との繋がりを、ドクターこと高倉環境研究所の髙倉さんの実験ライブで解説しました。実験の助手はJ-POWER“やまゆき”こと山本がつとめました。

最初に、紙で作った「森の土」と「グラウンドの土」のモデルを使い、土壌を比較する実験を行いました。森は土の中にいる生き物の力によって土の形が変わるため、保水力が高く、空気を通しやすいことがわかりました。

ドクターと学ぶ「科学の実験教室」~水力発電の仕組み、森と電気のつながり~

続いて、森に見立てたペットボトルに土を入れ、そこに雨を降らせると、雨は地面にしみこんだ後、地下水となってゆっくりと流れていきました。森の土は水を吸収する量が多く、下に流れ出る水量は少ないことがわかります。

こういった森の地下水は私たちの生活用水だけでなく、水力発電にも利用されています。森の機能を保つことが、エネルギーにも深く関係しているのです。

ドクターと学ぶ「科学の実験教室」~水力発電の仕組み、森と電気のつながり~

続いては、水力発電の実験です。
ペットボトルを“ダム”に、コイルと磁石、回転する水車の入った装置を“発電機”に見立てたモデルを使います。高い位置から水を流すと、水車のプロペラとともに磁石が回って電気が起きました。

電気は必要な時に、必要な量を作る必要がありますが、ダムは水がなくなると発電することができません。水力発電にとっては水が命。電力会社では、必要な時に発電できるよう、森を守り、ダムの管理を行っています。

実験を通じ、森や土、土壌生物などによる「自然の力」と、「人間の力(=ダム)」が合わさって水力発電となること、つまりエコとエネのどちらも大切だということをお分かりいただけたと思います。

ドクターと学ぶ「科学の実験教室」~水力発電の仕組み、森と電気のつながり~
ドクターと学ぶ「科学の実験教室」~水力発電の仕組み、森と電気のつながり~

15:00御母衣水力開発と荘川桜物語

休憩を挟んで、後半のスタートです。先ほどバーチャル見学を行った岐阜県・御母衣発電所の佐々木所長と中継をつなぎました。 御母衣計画の建設公示がされたのは1952年(S27年)。戦後復興・高度成長で急増する電力需要の増加に対応した水力発電計画でした。しかし、家屋や田畑、寺やお墓等が水没する計画であることを知った住民の多くは、建設計画に反対しました。J-POWERでは長い年月をかけて対話を続け、「幸福の覚書」を提示し、両者が歩み寄る形でダム建設に至りました。当時の様子を、写真を交えながらご紹介しました。

御母衣水力開発と荘川桜物語

ダム建設時に水底に沈む予定だった樹齢400年超の2本の桜は、高台に移植されました。「荘川桜」と呼ばれ、現在でもJ-POWERと地域住民の皆さんで、維持管理を行っており、J-POWERの地域共生の原点となっています。

御母衣水力開発と荘川桜物語

15:30電力会社ここだけの話

続いては、先生方に4つのブレイクアウトルームに分かれていただき、社員とのセッションを行いました。
ルーム1では、御母衣発電所の佐々木所長による水力発電の保守・制御、電力の安定供給に向けた苦労などを中心にお話しました。
ルーム2では、御母衣発電所の頭本所長代理から、ダムの維持管理上の苦労を聞きました。堆砂や流木の対策など先生方から鋭い質問も飛びました。
ルーム3と4では「電力会社で働く社員の思い」として、広報部の猪狩と山本がそれぞれの経験に基づいて、皆様のご質問に答えました。
先生方からは「ダムの発電機には魚が流れてこないのか?」といった質問や、「“電気を作っている人”がいる、ということを忘れていた。子ども達に教えていきたい」といった感想が聞かれました。

16:20最近のエネルギー情勢とJ-POWERの取り組み

本日のプログラムの最後に、最近のエネルギー情勢について様々なデータを用い、J-POWER多比良から説明を行いました。

トピックス①:ご承知の通り、2022年2月から始まったロシアのウクライナ侵攻により、エネルギー資源価格が高騰しています。日本ではLNG、石炭の1割程度をロシアから輸入をしており、安全保障上の課題となっています。

トピックス②:2022年3月には東京・東北電力管内で電力需要の逼迫がありましたが、これは悪天候や、地震、発電所の点検などが重なったことが要因でした。
電力は貯めておけないという特性上、需要と供給のバランスが取れている「同時同量」が原則ですが、太陽光発電の利用拡大や、火力の休廃止等もあり、今後も構造的な課題が存在していることを解説しました。

トピックス③:第6次エネルギー基本計画では、2050年に温室効果ガスゼロ(カーボンニュートラル)を目指しています。日本は2019年で年間10.3億トンの温室効果ガスを排出していますが、そのうち約4割が電力部門からの排出です。課題である、脱炭素電力化と、CCUS(二酸化炭素の回収・貯蔵・利用)の社会実装が必要であり、J-POWERでも様々な取り組みが行っています。

最近のエネルギー情勢とJ-POWERの取り組み
最近のエネルギー情勢とJ-POWERの取り組み

エコ×エネ体験プロジェクトは、「エネルギーと環境の共生」、「持続可能な社会の実現」に向けて、エネルギー・環境問題をはじめとした社会課題に関心を持ち、自分ごととして行動できる人が増えていくことを願って取り組んでいます。ぜひ、先生方と一緒に力を合わせてよりより社会を実現していきたいと考えています。

最近のエネルギー情勢とJ-POWERの取り組み

16:40参加者セッション

最後にもう一度、ブレイクアウトルームに分かれて、本日の感想や、授業で実践したいことを話し合っていただきました。ノートに書いた感想をカメラに向けると、先生方がそれぞれに刺激を受けた様子が伝わってきました。

参加者セッション

17:00閉会・自由交流

最後にもう一度、ブレイクアウトルームに分かれて、本日の感想や、授業で実践したいことを話し合っていただきました。ノートに書いた感想をカメラに向けると、先生方がそれぞれに刺激を受けた様子が伝わってきました。

閉会・自由交流

参加者の声

  • 2カ所の水力発電所を見学して、想像していたよりも大きくて驚きました。
  • 発電所のVR見学は初めてのことだったので、実際に行きたいと思いました。水力発電所と自然の関係や、森の中にあることで、地下水を使っていることも知れました。
  • 現地の様子が直接見られない中、イメージが広がり良かったです。子ども達も実際行けるわけではないので、指導者が現地に行ってよりイメージを伝えられることが大切だと考えています。
  • 発電所の仕事や仕組みを、実際に働いている方から聞くことができたことがよかった。また、意見交流でいろんな人の考えを聞けたのが参考になった。
  • 水力発電所を2箇所紹介していただき、水力開発の歴史も学び、過去、今、未来のエコ・エネルギーについて多面的に学ぶことができました。また全国の多教科・多業種の先生方と交流できたことも貴重な経験でした。
  • 教員としてできることを頑張っていけたらいいな、と前向きにとらえることができた。まだまだ、知識不足の点がありますが、今後に生かしたいと思います。